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レトロなイメージで、もともとあった個性を強調

N-ONEの個性的なデザインを際立たせた広告活動も奏功した。「N-ONEは十分に個性的なデザインなので、外観を変えなくても打ち出し方次第でもっとアピールできると考えた」(矢野氏)。CMなどでは、若い人の取り込みを狙って、レトロ感や懐かしさを強調したイメージを展開した。

近年は若者の間で、レンズ付きフィルムやインスタントカメラ、レコードなどのレトロな製品がたびたびブームになっている。N-ONEは50年以上前の軽乗用車であるN360を原点としており、その世界観はレトロ好きな若者と意外にマッチすると見ているのだ。これらの施策によって、軽トールワゴンの中で埋没しがちだったN-ONEのデザインの良さが改めて見直された可能性は高い。

CMや広告では、N-ONEの個性を強調するレトロな世界観を展開

N-ONEのフルモデルチェンジで「外観を変えない」という思い切った選択ができたのは、N-BOX、N-WGN、N-VANなど、ホンダのNシリーズが「ワンチーム」といえるまとまった開発体制になっていることも関係していそうだ。普通車を主力とするホンダは、その技術を軽自動車に生かすことで、Nシリーズ全体を「プレミアムな軽自動車」にすることを目指している。

このラインアップの中でN-ONEは、N-BOXのような大ヒットとならずとも、「ユニークなデザインのプレミアムな軽乗用車」というポジションを守ることが重視されている。だから、目先の新しさを追わずに「N-ONEらしさ」を維持するという、異色のモデルチェンジができたのだろう。

(ライター 大音安弘、写真提供 ホンダ)

[日経クロストレンド 2021年4月12日の記事を再構成]

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