心理的危険状態の例としては、何かミッションを実行しなければならない場面で強い緊張状態にあるときや、誰かと言い争いになっていたり、強く叱責を受けたりしているときを想定してみてください。そんな状況に置かれたとき、低下する機能の代表的なものには「感情をコントロールする機能」「意識的な注意や思考をする機能」「不適切な行動を抑制する機能」などがあります。

「失敗しても大丈夫だと思える環境を作ることが大事」と語る工藤校長

大声で怒鳴られ続けている子どもが「お前、話を聞いているのか」などと、さらに叱られている場面を見かけることがありますが、心理的危険状態では思考する部位が機能しなくなるのですから、叱っている大人の声が耳に入ってこないのは当然でしょう。

最近、米グーグルをはじめとして、多くの企業で「心理的安全性」を確保することが創造的な組織を作る上で重要な条件だということが言われていますが、こんな事例からもお分かりいただけるのではないでしょうか。

「メタ認知能力」→トラブルを学びに変える

とはいえ、社会に出ればストレス要因はいくらでもあります。

心理的安全性が大切だからといって、もし学校を完全にストレスフリーにできたとしても、そんなことでは逆にストレス要因を乗り越える力は育ちません。そこで重要になることが、トラブルを経験するなかで、葛藤や失敗といったネガティブな記憶をポジティブな学びに変えていくために必要な能力、それが「メタ認知能力」です。

青砥さんの説明によればメタ認知能力とは、自らを俯瞰(ふかん)的に見て、第三者的な視点に立って自分自身をより良い方向に上書きしていく能力ということですが、この力は本人の課題解決能力や目標達成能力を大幅に底上げするだけではなく、新たな課題に直面したときに子ども自らが心理的安全性をつくりだす能力も高めることになるため、これからの激動の時代を生きるためにますます必要となるスキルだと言えます。

もう一つのメタ認知能力については「三日坊主」という事例を挙げてお話ししたいと思います。

三日坊主はほぼ全員が経験しているはずです。学校で「三日坊主になったことがない人っている」と聞いても、手を挙げる子どもはまずいません。その一方で「三日坊主って恥ずかしいことだと思っている人は?」と聞くと、今度はほぼ全員が手を挙げます。それは「うまくいかなかった原因は自分が頑張らなかったからだ」と失敗体験と精神論をひもづけてしまっているからです。真面目な子は燃え尽き症候群になりやすいと言われますが、その理由はこの延長線上にあります。

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