中国生産になって品質もアップ

上海ギガファクトリーでの生産となり、外装、内装ともに品質向上を果たした

さらに侮れないのが、これまた極端に情報公開が少ないディテールのクオリティーアップだ。全長×全幅×全高は4694×1849×1443ミリメートルでまったく変わらない。だがボディーパネル同士の段差の精度は確実に上がったし、塗装の質も上がった。かつては塗膜の中にホコリが混じっていたこともあったが今回はない。それは乗りこんでも同じ。ドアを閉める時のバシュっという音や手応えは良くなったし、内装樹脂の質感、精度も高い。標準で人工皮革を張ったシートの座り心地もいい。

実は今回の価格改定やクオリティーアップは、モデル3の生産工場の変更によるものだ。かつて日本仕様は北米カリフォルニアのフリーモント工場で作られていた。しかし20年に中国のテスラ100%出資の上海ギガファクトリーが本格稼働し、そこで生産されたクルマが今春から日本に入り始めている。その結果、輸送コストや人件費の低減はもちろん、中国産リチウムイオンバッテリーのコスト低減が効き、価格が下がったのだ。同時に上海ギガファクトリーはモデル3や新型モデルYの生産に特化されているため、大幅なクオリティーアップもできたという。

日本やドイツブランド車でここまで生産地、生産工場で価格や性能が変わるという話は聞いたことがない。もちろん中国で作られている日本ブランド車は日本生産より安いはずだが、それが日本に送られてくることはなかった。

クルマの価値観を覆すテスラ

テスラはいろんな意味で“オキテ破り”なのだ。前述した情報告知の件もそうだし、価格低減の幅もそう。アップデートによる性能アップのレベルも既存自動車の比ではなく、モデル3に87万1000円でオプション装着できる「完全自動運転 対応機能」は将来的にかなりの運転支援を提供するはず。ただし、その機能は住んでいる国によっても相当違ってくるだろうが。さらにいうと日本に直営店は4つしかない。このため基本修理は、メカニックが出向くモバイルサービスや、認定ショップで行う。

テスラ車の脅威は、デザインや驚異的な加速以上に、その独特な“商品に対する価値観”にある。確かにタイヤが4つ付いたクルマだが、なんとも電化製品的であり、スマホっぽい。クルマとは似て非なる商品なのだ。そこに不満を覚える人もいるかもしれないが、逆に喜ぶ人もいる。この価値観の転換こそが、テスラの真骨頂ではないだろうか。

小沢コージ
自動車からスクーターから時計まで斬るバラエティー自動車ジャーナリスト。連載は「ベストカー」「時計Begin」「MonoMax」「夕刊フジ」「週刊プレイボーイ」など。主な著書に「クルマ界のすごい12人」(新潮新書)「車の運転が怖い人のためのドライブ上達読本」(宝島社)。愛車はロールス・ロイス・コーニッシュクーペ、シティ・カブリオレなど。

(編集協力 出雲井亨)