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世界の「お札の顔」物語 異なる肖像を描いた国の事情

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ナショナルジオグラフィック日本版

貨幣のデザインは、国のアイデンティティーを如実に表すシンボルだ。国家のアイデンティティーが変われば、その国の硬貨と紙幣のデザインも変わる。そしてデザインが変わるときに、議論が巻き起こることもある。

例えば米国では以前から、奴隷制廃止を訴えたハリエット・タブマンを、元大統領のアンドリュー・ジャクソンに代えて20ドル紙幣の顔にするという計画があった。米財務省は、2020年の女性参政権100周年に合わせてこのデザインの紙幣を発行したいと考えていたが、当時のドナルド・トランプ大統領がこれについて「ポリティカル・コレクトネス(政治的な正しさ)のためでしかない」と批判したことで、計画は棚上げされた。そしてバイデン政権に変わり、保留されたデザイン変更計画を再開することが発表されている。

世界の国々では、自国の紙幣に誰を描くのか、それはどのようなプロセスで決定されているのか。そして、その紙幣はどんな過去を伝えているのだろうか? ここでは、各国の紙幣とその誕生にまつわるストーリーを紹介してみたい。

米国

1866年、米財務省が新たな5セント紙幣を発行すると、論争が巻き起こった。そこには、現在の造幣局に当たる組織の初代局長スペンサー・クラークの肖像が描かれていた。クラークはその数年前、一部の議員から、不正行為と「はなはだしい不道徳」を糾弾されたことがあり(議会の委員会はこの告発を却下している)、あまり評判が良くなかった。

世論の反発を受け、米議会は1866年4月7日、「生きている人間の肖像または似顔絵」を同国の貨幣に掲載することを禁ずる法律を可決した。米国の法律は現在も、生きている人間の肖像を使用することを禁じており、たとえそれが過去の大統領の記念硬貨であろうとも、本人の死後2年が経過しなければ発行できないことになっている。

米国では貨幣の顔に、主に歴代大統領や建国の父たちが選ばれている。ジョージ・ワシントン、トーマス・ジェファーソン、エイブラハム・リンカーン、アレクサンダー・ハミルトン、ユリシーズ・S・グラント、ベンジャミン・フランクリンなどの肖像が描かれた。

ボスニア・ヘルツェゴビナ

ボスニア・ヘルツェゴビナの紙幣には、同国の著名作家たちの肖像が描かれている。だが、これは文学への称賛というよりも、対立回避を目的としたものというのが実際のところだ。1995年のデイトン合意により、ボスニアでは長年の内戦に終止符が打たれ、スルプスカ共和国とボスニア・ヘルツェゴビナ連邦という2つの主体からなる1つの国家が誕生した。

同様に、この新しい国家では単一の通貨「兌換(だかん)マルク」を発行しつつ、両サイドの文化的アイデンティティーを反映させるために、各紙幣はどれも2つの種類が作られることになった。ただし当初の案は、紙幣に求められる統一感がなかったために却下された。中でも物議をかもしたデザインが、セルビア人の英雄ガブリロ・プリンツィプをモチーフにしたものだった。プリンツィプは、オーストリア・ハンガリー帝国のフランツ・フェルディナント大公を暗殺して、第1次世界大戦を勃発させたことで知られる人物だ。

紙幣のデザインをめぐる議論が長引いたため、1997年に開業した中央銀行は、やむを得ず紙幣の代わりにクーポン券を発行しなければならなかったほどだ。最終的には、作家の肖像を採用することで両サイドが合意し、さらに5マルク紙幣にはどちらも小説家のメシャ・セリモビッチを選ぶという共通点も生まれた。この紙幣はその後廃止となったが、2002年には、ノーベル賞作家のイボ・アンドリッチを採用した新しい200マルク紙幣が発行されている。

ニュージーランド

ニュージーランドの紙幣のデザインは、同国が1934年に通貨の発行を開始して以来、「進化を続けるニュージーランドの自己イメージの、意図せぬリトマス試験紙」となってきたと、歴史学者のマシュー・ライト氏は言う。英国領だったニュージーランドの最初の紙幣には、2つに分裂したアイデンティティーを反映して、英国と現地両方のモチーフが用いられていた。最初期の紙幣には、マオリ王タウィアの肖像が描かれていたが、1940年には、ニュージーランドに到達した英国の探検家、キャプテン・ジェームズ・クックのものへと変更された。

ニュージーランドは1947年に独立国家となった。しかし、それから20年以上がたった1967年でも、依然として英国との関係は国内でも強く、同年、エリザベス2世の肖像と、この国固有の植物や鳥がすべての額面の紙幣において採用され、キャプテン・クックは姿を消すことになった。

20世紀末になると、ニュージーランドは多様性のある主権国家としての自覚を強く持ちはじめる。英国からの完全な独立から5年がたった1991年、ニュージーランドは、20ドル紙幣を除くすべての紙幣から女王の肖像をなくし、その代わりに自国の著名人たちを紙幣に描くことにした。婦人参政権運動家のケイト・シェパード、登山家のエドモンド・ヒラリー卿、マオリ族の政治的・文化的リーダーであるアーピラナ・ンガタ卿、ノーベル賞を受賞した物理学者アーネスト・ラザフォードなど、このとき登場した肖像は、今も同国紙幣を飾っている。

南アフリカ

ニュージーランドと同じく、南アフリカの紙幣の変遷にも、植民地時代の歴史に対するこの国の見方が反映されている。1961年、南アフリカでは、英国からの独立後初となる紙幣が発行された。しかし、かつての植民地時代を称賛するかのように、すべての紙幣には、オランダ人探検家で、1652年に後にケープタウンとなる交易所を設立したヤン・ファン・リーベックの肖像が刻まれていた。

この人物は30年間にわたって同国の通貨の顔であり続けた。しかし1992年、南アフリカが人種差別的なアパルトヘイト制度の撤廃に取り組む中、ついにリーベックは、「ビックファイブ」と呼ばれる、同国を象徴する動物たち(サイ、ゾウ、ライオン、アフリカスイギュウ、ヒョウ)に変更された。

20年後、南アフリカは再び大きな変更を行った。2012年に、初の黒人大統領で反アパルトヘイト活動家のネルソン・マンデラを採用した新しい紙幣を発表したのだ。「国の通貨は、その国のアイデンティティーの基本要素」だと、南アフリカ準備銀行総裁のギル・マーカス氏は述べ、新たなデザインについて「南アフリカの国家としての誇りを反映している」と説明した。マンデラは現在も同国の通貨の顔だ。2018年にはさらに、マンデラの生誕100周年を記念して、氏の生涯における様々な場面を描いた記念紙幣シリーズが発行されている。

ドミニカ共和国

ドミニカ共和国の200ペソ紙幣は、独裁者ラファエル・トルヒーヨに対する抵抗運動を組織した3人姉妹に敬意を表したものだ。

1930年に権力を握ったトルヒーヨは、ドミニカ共和国に冷酷な支配を敷いた。自らに歯向かうものは、だれであれ投獄し、拷問し、殺害した。1950年代、ミラバル姉妹(パトリア、ミネルバ、マリア・テレサ)は、この残虐な政権を終わらせるための抵抗運動のリーダーとなった。トルヒーヨは姉妹を繰り返し逮捕・投獄し、最終的には1960年11月25日に暗殺させた。

トルヒーヨ政権はその1年後、彼の暗殺によって終わりを迎えたが、同国政府がミラバル姉妹(「ラス・マリポサス=ちょう=」とも呼ばれる)を国民的英雄として受け入れるまでには、それから数十年を要した。姉妹は1980年代に一時的に25センターボ硬貨に描かれ、2007年には200ペソ紙幣の顔となった。国連は姉妹が殺害された日を「女性に対する暴力撤廃の国際デー」と定めている。

次ページでは、そのドミニカ共和国の紙幣をはじめ、各国の時代を反映した肖像をご覧いただきたい。

(文 AMY MCKEEVER、写真 JANUSZ PIENKOWSK、訳 北村京子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2021年4月18日付の記事を再構成]

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