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魅惑のセンベロ「変態」酒場 大満足1品100~300円

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NIKKEI STYLE

飲食業界人の中でひそかに話題になっている酒場がある。「神田屋」。いま都内と大宮に7店ある。この店、経営しているのは「テング酒場」などを展開する居酒屋企業テンアライドなのだ。

なぜ話題か?

簡単に言うと「変態」である。変態とは、一般的には否定的な言葉だが、飲食業界人にとって、変態という称号は、「称賛」の意味を持つ。既存の店舗や業態を超えて、新しいアイデアを盛り込んでいる。その発想と実行力を含めて、「変態」と呼ぶ。

「神田屋」には「変態」の称号にふさわしい工夫が満載だ。

1号店は、2018年3月、東京・神田に開店した神田駅前店。神田駅南口から徒歩2分の路面店。隣は「テング酒場」だ。1、2階を利用し、1階は立ち飲み12席前後、2階はテーブルで30席前後。角地にあり、視認性は高いが、決して大きい店ではない。しかし、話題になるだけあり、お客は入っている。

昼からの通し営業をしているため、神田駅前店などの立ち飲み系は、夕方くらいからポロポロと仕事帰りや、ブルーカラーらしきオヤジが入ってくる。神田界隈は競合する立ち飲み店が多いなかで人気だ。

座り席主体の店は、さらに賑わっている。4号店である池袋西口店は、実はテンアライド創業の地。すぐ近くには、激安刺身で有名な居酒屋「魚金」もある。金曜日の15時過ぎ、入りやすい時間帯と思って訪れたら半分以上、席が埋まっている。しかもオヤジではなく、30代と見えるカップルが多いのだ。オープン直後という事情もあるが、びっくりした。同じ時間、「魚金」は、空席が目立っていた。

「魚金」を超える魅力。それには訳がある。

一つは、「センベロセット」(税込み1100円)。1100円でセットを頼むと、単品よりも安い価格設定になっている32種類の料理と酒を1100円以内で自由に選ぶことができる。最初にマージャンの点棒のようなものを10本渡され、値段によって、そこから1~3本ずつ、店が抜いていく仕組みだ。キャッシュ・オン・デリバリーの変形といってもよい。

「神田屋」のドリンクは100~300円が中心、料理も同じ価格帯だ。安く済ませようと思えば、点棒1本のメニュー・ドリンクを選べば、10杯(品)楽しめるし、少し奮発して、高級スコッチのハイボールにすれば、3本を使えば済む。ありそうでなかった仕組みだ。

ただし、このセンベロセット、1号店の神田駅前店、2号店の中野北口店はあるが、3号店の新宿3丁目末広通り店、池袋西口店を含め、それ以降の店舗は常時採用していない。キャッチも神田店は「立呑み」だが、座り席中心の新宿や池袋は「大衆スタンド」となっている。まだ試行錯誤の段階なのだろう。

「センベロセット」は店にとっては、面白いやり方だ。最初に1100円が確定し、それ以外のつまみやドリンクはプラスアルファとなる。現金を皿やかごに入れる老舗酒場によくある仕組みに比べて、遊び心と安心感があり、客にとってうれしい試みだ。

もっと変態なのが、料理だ。極め付きは「活どじょう唐揚げ」だろう。店内に水槽を置き、そこから、10匹ほどをすくって、衣をつけてカラッと揚げる。これがなかなかうまい。泥臭さは全く感じない。スタッフに聞くと、安来節で有名な島根県安来市で養殖したものという。

ドジョウ料理店は多くあるが、そのほとんどは成魚を鍋にした「どじょう鍋」をウリにする店だ。しかし、さっくりして、しかも骨を感じない幼魚を軽く揚げたドジョウを出すのは珍しいだろう。これはなかなかのアイデアと思う。しかも319円。これは頼むしかない。メニューブックでも大きく掲載されている。

「青唐辛子の卵炒め」(319円)もなかなかだ。鉄製の容器に青トウガラシを細かく切ったものと卵液を入れて、コンロで軽く火を通すだけ。3分ほどで出てくる。結構みんな注文している。これも他店にはない料理のうえに、業界人目線からすると、原価率が低い圧倒的な利益商品。どう見ても、原価は50円くらいのはずで、この一皿で200円以上の利益を稼いでいるんじゃないかなと思う。でも、クヤシイことに実においしい。客にとっても利益大なのだ。

「いかタルタル」(319円)などのサイドメニューも侮れない。ギョーザも3個、6個、12個から選べ、シソ巻きやチーズなどのバリエーションもある。これも3個ならセンベロセットの1品。酒飲みゴコロをよく分かっている。

「豚ハラミ」(209円)などの肉料理も、串に刺さず、小型の鉄板で火を入れて提供している。これは「天狗」の初期に大ヒットした「サイコロステーキ」のアレンジだろう。小さな店に見えながら、「天狗」50年のノウハウが詰まっている。

テンアライドは、居酒屋業界のレジェンド企業だ。近年は業績が悪化しているのと、広報に積極的でないので、さほど注目されることが少ないが、居酒屋業界として初めて株式公開している。ワタミの渡邉美樹会長は、「つぼ八」のフランチャイジーとして20代でスタートしたが、将来は一部上場企業を目指していた。その時に言っていたのが「目指すはテンアライド」だった。

専門的な話になるが、テンアライドは居酒屋として早くからCK(セントラルキッチン)活用を実行していた企業の一つ。ギョーザや豆腐、初期のヒット商品の「サイコロステーキ」もCKでカットし、店舗は鉄板で焼くだけで済んだ。そうした現場調理の効率化は、いまサイゼリヤが有名だが、居酒屋業界ではテンアライドが先行していたのである。

もう少し、テンアライド話を許してほしい。創業者の故・飯田保氏は、都内の有力酒販店岡永の生まれ。オヤジさんが強烈な人だったらしく、5人いる男子に「起業せよ」と常々言っていたらしい。長男は岡永を継いだが、「日本名門酒会」という地酒を広げる組織を作り、次男だった保氏は、岡永の取締役をなげ打って、テンアライド創業に突き進む。ちなみに、この兄弟はすごくて、3男が「オーケーストア」の創業者である勧氏、末弟の亮氏は、セコムの創業者だ。起業家一家なのである。

「神田屋」は、そうした息吹を持つ会社の中で生まれた。

正直、ここ数年のテンアライドの業績は良くない。債務超過寸前でもあった。客単価は創業時の「天狗」が約2500円、「テング酒場」が約2000円だが、「神田屋」は、今回その下を狙っている。可処分所得が下がる中で、テンアライドは、より使いやすい低価格路線を実験している。業界的には、値上げや客単価アップという戦略がメジャーになっている中では、王道酒場を自認する「天狗」としては「よりおいしく、より安く」を徹底することに活路を見いだしているのだろう。

競合店は、町のセンベロ酒場。それと養老乃瀧が開発して大成功した「一軒め酒場」だ。逆に言うとチェーンでのライバルは「一軒め酒場」くらいしか見当たらない。「天狗」が得意としたビジネス街立地だけでなく、郊外の駅前立地でも成り立ちそうだ。FC化も視野に入れていることだろう。

客としては、その方向性はうれしい限りだ。さらに業界的になるが、テンアライドは、現在は保氏の子息の永太氏がトップを務める。3代目の健太氏は、すでにテンアライド入りしており、2019年には代表権を持つ専務になった。ただし、まだ30代と若い。「天狗」のブランドを捨てた「神田屋」は、3代目を救うことになるのだろうか。良い店だけに「一軒め酒場」同様、広がってほしい。

(フードリンクニュース編集長 遠山敏之)

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