
「神田屋」のドリンクは100~300円が中心、料理も同じ価格帯だ。安く済ませようと思えば、点棒1本のメニュー・ドリンクを選べば、10杯(品)楽しめるし、少し奮発して、高級スコッチのハイボールにすれば、3本を使えば済む。ありそうでなかった仕組みだ。
ただし、このセンベロセット、1号店の神田駅前店、2号店の中野北口店はあるが、3号店の新宿3丁目末広通り店、池袋西口店を含め、それ以降の店舗は常時採用していない。キャッチも神田店は「立呑み」だが、座り席中心の新宿や池袋は「大衆スタンド」となっている。まだ試行錯誤の段階なのだろう。
「センベロセット」は店にとっては、面白いやり方だ。最初に1100円が確定し、それ以外のつまみやドリンクはプラスアルファとなる。現金を皿やかごに入れる老舗酒場によくある仕組みに比べて、遊び心と安心感があり、客にとってうれしい試みだ。
もっと変態なのが、料理だ。極め付きは「活どじょう唐揚げ」だろう。店内に水槽を置き、そこから、10匹ほどをすくって、衣をつけてカラッと揚げる。これがなかなかうまい。泥臭さは全く感じない。スタッフに聞くと、安来節で有名な島根県安来市で養殖したものという。
ドジョウ料理店は多くあるが、そのほとんどは成魚を鍋にした「どじょう鍋」をウリにする店だ。しかし、さっくりして、しかも骨を感じない幼魚を軽く揚げたドジョウを出すのは珍しいだろう。これはなかなかのアイデアと思う。しかも319円。これは頼むしかない。メニューブックでも大きく掲載されている。
「青唐辛子の卵炒め」(319円)もなかなかだ。鉄製の容器に青トウガラシを細かく切ったものと卵液を入れて、コンロで軽く火を通すだけ。3分ほどで出てくる。結構みんな注文している。これも他店にはない料理のうえに、業界人目線からすると、原価率が低い圧倒的な利益商品。どう見ても、原価は50円くらいのはずで、この一皿で200円以上の利益を稼いでいるんじゃないかなと思う。でも、クヤシイことに実においしい。客にとっても利益大なのだ。
「いかタルタル」(319円)などのサイドメニューも侮れない。ギョーザも3個、6個、12個から選べ、シソ巻きやチーズなどのバリエーションもある。これも3個ならセンベロセットの1品。酒飲みゴコロをよく分かっている。

「豚ハラミ」(209円)などの肉料理も、串に刺さず、小型の鉄板で火を入れて提供している。これは「天狗」の初期に大ヒットした「サイコロステーキ」のアレンジだろう。小さな店に見えながら、「天狗」50年のノウハウが詰まっている。