2021/4/26

キャリアと生活の将来展望を持つことがカギに

コロナ禍によって、先行き不透明感が助長されたことは確かです。しかし、コロナ感染症が収束して霧が晴れても、人生100年時代と言われるようにその先の人生はまだ長く続きます。特に女性は世界的に見ても平均寿命が長く、そのため老後への不安を強く抱えているのではないでしょうか。調査結果においても、女性は男性よりも「老後への不安」がはるかに大きいことが示されました。人生のパートナーがいたとしても、「最後はおひとりさま」という思いがどこかにあるのかもしれません。

幸福度・人生満足度を高めるためには、将来のキャリアと生活に見通しが持てることが重要なカギになります。何の仕事をして、どんな風に働いていきたいのか。フリーランスのように雇われない働き方が向いているのか。それとも、組織に属して働く方がいいのか。そうだとしたら、どのような職場がいいのか。いつまで働くのか。いくら稼げば、老後は安心できるのか。そのためには、将来どの程度の年金がもらえるのか、老後資金をどう作っていくかなど、老後のマネープランも併せて考える必要があるでしょう。

こうした答えを導き出すには、自己理解を深めることが大切になります。「自分らしい働き方がしたい」という前に、自分が何を望んでいるのか、どういうスタイルが心地よいと感じるのか、様々な角度から自分を観察して見つめ直してみることは、欠かせないプロセスといえるでしょう。

そのうえで働き方についても、たとえば「週4日制の正社員」「在宅勤務ができること」「フレックスタイム制で働く時間を選べること」「パラレルキャリア」「フリーランス」など、様々な選択肢を検討してみることです。以前と比べ、働き方は多様化しており、自分に合った働き方でキャリア形成ができる時代になりつつあります。

また働き方の違いで、加入する社会保険も変化し、さらに年金などにも波及していきます。私は働き方の相談を受けるとき、必ず社会保険の問題とセットでアドバイスするようにしています。それは「今」だけでなく、「将来」へのつながりも大切だからです。

自律的なキャリア意識を持つ

ますます変化が激しくなる今後の社会においては、新たな知識やスキルを得るために学び続ける姿勢も大事になってくるでしょう。自律的なキャリア意識を持っている人は、自らのスキルを高めようと習得に熱心で、キャリア支援・キャリアサービスを積極的に利用する傾向があります。

民間のサービスを利用する方法もありますが、たとえばハローワークでは、キャリアコンサルティング、職業訓練のアドバイスなど、就職から職場定着まで一貫した支援を提供しています。そうした公的なサービスを活用する手もあるでしょう。キャリア形成を支援するために、教育訓練受講に支払った費用の一部が支給される教育訓練給付制度(一般、特定一般、専門実践の3種類)もあります。これは雇用保険の被保険者(であったこと)など、一定の要件はありますが、活用されている方は大勢います。

コロナ禍以降は、オンラインによる学習講座なども一気に広まりを見せています。その気になれば、いつでもどこでも学べる機会が広がりました。リカレント教育(学び直し)という言葉が近年は浸透しつつありますが、義務教育と違って、自分が関心のあることやキャリアにつながることを好きに学べるわけですから、楽しむ気持ちでやってみたらいいと思います。

自己理解を深め、将来のキャリアに対して、少しでも見通しが持てるようになると、未来が明るく感じられるようになります。ただし、予定通りにいかないのが人生。細かく未来を描きすぎると、その通りにいかないことで、かえってストレスがたまってしまうこともあります。未知なる可能性を残しつつ、ある程度の将来展望を描くことが、幸福度を高めながら働き続けるささやかな秘訣と言えるかもしれません。

佐佐木由美子
人事労務コンサルタント・社会保険労務士。米国企業日本法人を退職後、社会保険労務士事務所などに勤務。2005年3月、グレース・パートナーズ社労士事務所を開業、その後グレース・パートナーズ株式会社を設立し代表に就任。人事労務・社会保険面から経営を支援し、親身なコンサルティングで多くのクライアントから支持を得ている。また、出産後も女性が働き続けられる雇用環境の整備をはじめ、女性の雇用問題に積極的に取り組んでいる。著書に「採用と雇用するときの労務管理と社会保険の手続きがまるごとわかる本」(ソーテック社)。新聞・雑誌などメディアで活躍。