2021/4/21

「手工芸品質」 デジタルでのアピール模索

――新作発表の場は2020年に続き、バーゼルワールドやSIHHといった大規模展示会ではなく、「Watches&Wonders」などのデジタルが主流となりました。

「昨年はW&Wの発表のためにデジタル対応する準備期間が4週間しかありませんでした。でも今年は4カ月と余裕がありました。もはやデジタルへの取り組みは必然です。コロナ下で我々は、変えること、変えないことを議論しました。製造の仕方は変えない。つまり、熟練したスキルを必要とする時計づくりは変えません。ですが、ディストリビューション(流通)の部分は対応していかなければなりません。Eコマースへの取り組みも、イエス。手作り時計というところは維持しながら、それ以外はフレキシブルに取り組んでいきたいです」

――今後、デジタル施策はどう進めていきますか。

「デジタル化でもランゲ独自の路線を確立するつもりです。日本では電話で対話しながらオーダーできるシステムがスタートしましたが、販売員と顧客が対話して販売するチャネルとしてとてもいいものだと思います。次はEコマースのレベルに進みます。デジタルになったからといって我々の伝統が変わるわけではありません。ただ、メッセージ力という課題は残りますね。我々は生産本数が年5000~6000本と少ないこともあり、普段から実物を手に取って品質を実感してもらう価値を大事にしています。我々のコレクション名の1つにも冠している、ドイツ語でいうところの『ハンドヴェルクスクンスト=手工芸の匠(たくみ)』をどうやってデジタルで伝えていくのかが難しいところです」

【トリプルスプリット】
04年にダブルスプリットを発表し、計測時間を60秒から30分まで拡大可能にし、18年に計測タイムを最長12時間まで積算し比較できるスプリットセコンド・クロノグラフ「トリプルスプリット」を発表。新作はそのバリエーション。複雑で立体的に絡み合う部品の美しさは圧巻。
トリプルスプリット ケース:43.2mm、ピンクゴールド トリプルラトラパント プレシジョン・ジャンピング・クロノグラフ&ラトラパント・ミニッツカウンター搭載フライバック・クロノグラフ タキメータースケール 3気圧防水 シースルーバック 駆動装置:キャリバーL132.1 パワーリザーブ:55時間 価格:2024万円(予価、限定100本、2021年5月以降発売)

――デジタルであっても、顧客とのエモーショナルな接点をつくることはできるでしょうか。

「まさに今、それを学んでいるところです。私たちのような時計ブランドは、顧客に実際に持っていただいて美しさや重さを感じてもらう、手首で体験してもらう部分が大きいのです。こうした感動の瞬間は人対人でしか伝わらないものです」

――高級時計市場の競争が激化しています。この先、コロナの影響も読み切れません。こうした中で、ランゲのようなブランドが成長し続けるための要件は何ですか。

「それについては長い間協議をしてきました。答えは、今までの時計づくりを変えない、ということです。開発と製作の両面で伝統を守っていきます。シリコンのようなハイテク素材を使わず、ランゲの伝統的な部品を手で作り続けます。コレクターは手で作るものを愛する方たちですから。でも、顧客とのコミュニケーションや販売手法については常にアップデートし、モダンでフレキシブルな最新の方法を取り入れていきたいと思います」

(聞き手はMen's Fashion編集長 松本和佳)


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