A.ランゲ&ゾーネの時計の美学はどこにあるのか。そんな問いに対して、最高経営責任者(CEO)のヴィルヘルム・シュミット氏は即座にこう答えた。「控えめで分かりやすいこと」であると。研ぎ澄まされた機能美を端正にまとめる独自のデザイン哲学で存在感を放つドイツの名門が、このほど新作「ランゲ1・パーペチュアルカレンダー」「トリプルスプリット」「リトル・ランゲ1・ムーンフェイズ」をお披露目した。創意工夫を凝らした複雑機構には、伝統に裏打ちされた職人魂が込められている。シュミットCEOに、ドイツならではのもの作りの姿勢と今後の戦略を聞いた。
時刻と日付、一目でわかるのが大事
――複雑な機構を裏側に忍ばせながら、文字盤はすっきり。時刻の表示も、「アウトサイズデイト」という大型日付表示も視認性抜群です。デザインで優先させていることは何ですか。
「A.ランゲ&ゾーネにとって大事なのは、ダイヤル(文字盤)がアンダーステートメント(控えめ)であるということです。ダイヤルには情報のヒエラルキーがあります。腕時計にとってもっとも大事な情報は時刻。見てすぐに時刻がわからない時計はありえません。2つめに大事なのは日付。だからメガネをかけないと読み取れないような小さい日付ではなく、アウトサイズデイトを採用しているのです。文字盤は明確で控えめであること、そして、技術的な特徴があるということを大切にしています」

「裏側は、ムーブメントの美しさを追求しています。見えないところの部品一つ一つまで磨き込み、美しい装飾を施します。持つ人が自分だけで楽しめる部分を大切にする、それがドイツ的といえるかもしれません。そして、どれだけ機構が複雑であっても、時計は毎日手に着けて使うものです。壊れにくさや防水性も確保し、『美しい』と同時に『長く使える』ということを重視しています。これもドイツらしいといえるでしょう」

2017年から開発に取り組んだ新ムーブメント「キャリバーL021.3」を搭載。ランゲ1に永久カレンダーが搭載されるのはランゲ1・トゥールビヨン・パーペチュアルカレンダーに続き2度目で「時計技術者、設計士、時計師のチームが知見を結集した」(商品開発ディレクターのアントニー・デ・ハス氏)。創意工夫して生まれたのがダイヤル外周の月次リングで、月の終わりにぴたり30度回転する。このカレンダー機構は一度正しく調整すると、2100年まで毎月末には正確に翌月に切り替わるように設計されている。オフセンターデザインの時分ダイヤル、スモールセコンド表示と昼夜表示を兼ねたムーンフェイズ表示。ランゲ独特の大型日付表示であるアウトサイズデイトと曜日表示。さまざまな機能が見事なバランスで収まる。


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