つらい「眼精疲労」防ぐ 眼球動かす体操を

NIKKEIプラス1

写真はイメージ=PIXTA
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新型コロナウイルス禍で在宅勤務が広がり、長時間連続してパソコンに向かう人も多いだろう。テレワーク生活がもたらす「眼精疲労」で眼科を訪れる人も目立つという。目の疲れの原因や予防法を専門医に聞いた。

ワープロやパソコンの出現で画面を見続けるビジネスパーソンが増えたころ、「テクノストレス眼症」と呼ばれる目の不調が指摘されるようになった。最近はスマートフォンの普及で「スマホ老眼」など目のトラブルを訴える人が若年層でも目立つ。目を休めても疲れがとれず、体全体に影響が出る眼精疲労に悩む人も珍しくない。

梶田眼科(東京・港)の梶田雅義院長は「そもそも人類の目は近くを見るように設計されていない」と説明する。かつては遠くにいる外敵や食物をいち早く発見することが生きるためにも重要だった。一方で現代では近くのものを見る機会が増えた。

私たちがものを見る時、目ではカメラのレンズのように働く水晶体の厚さを毛様体筋という筋肉によって変え、ピントを調節している。遠くを見るときは毛様体筋が緩んで水晶体を薄くし、近くを見るときは収縮して厚くする。画面を見続けると、毛様体筋の緊張状態が続く。仕事を終えた夕方に目のピントが合いにくくなるのは毛様体筋の働きが鈍ってしまうからだ。

一晩寝れば回復するうちはいいが、休めても疲れがとれず、目が乾いたり(ドライアイ)、涙が出たりして、やがて目の奥に痛みを感じるほどの眼精疲労に達してしまうと厄介だ。梶田院長は「放置すると頭痛に加え、首や肩、背中のこりに痛み、吐き気、さらには自律神経失調症や軽度のうつ症状に発展することもある」と警鐘を鳴らす。

早めに眼科などを受診するのが大切だが、日常生活でできる予防策もある。

梶田院長が勧めるのはパソコン作業中でも10分に1回は室内でピントが合うギリギリの距離を1~2秒でいいので見ることだ。どのくらい遠くを見るかは本人の視力によって異なってくるが、遠近の切り替えで毛様体筋を動かすのが大事だという。

眼精疲労治療室を設けている吉祥寺森岡眼科(東京都武蔵野市)の森岡清史院長は予防策として眼球を上下・左右・回転運動させる「目回し体操」を提案している。1日に2回、午前と午後の習慣にすれば、毛様体筋の柔軟性を保つのに役立つという。

蒸しタオルをまぶたにあてて血行をよくする、目の周辺にあるツボを押すといった方法も勧めている。ドライアイでつらい場合には市販の目薬を併用してもいい。ただ「長く使うなら、防腐剤や血管収縮剤の成分が入っていないものがいい」と森岡院長。

梶田院長によると、合わない眼鏡を使い続けるのも眼精疲労の原因になるようだ。遠くがはっきり見えることだけ考えてつくられた眼鏡では、パソコン作業など近くを見るときのピント調節で過度に負担がかかることになる。梶田院長の患者の中には眼鏡を適切なものに交換しただけで、眼精疲労が大きく改善したケースもあるという。複数の眼鏡を日常生活や車の運転、仕事・読書用など場面に合わせて使い分ける手もある。

スマホやパソコンの画面からは波長が短い光で、視界のちらつきや目の疲れにつながるとされる「ブルーライト」が多く出ている。ブルーライトの影響を軽減するレンズを使った眼鏡もある。画面をみる時間が長い人は検討してみるのも一案だ。自分のライフスタイルや働き方に適した眼鏡を選ぶようにしたい。

目の健康を保つには生活習慣も重要。十分な睡眠やバランスのよい食事、作業時の姿勢などにも気を配りたい。

(ライター 大谷新)

[NIKKEI プラス1 2021年4月17日付]

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