『FACTFULNESS』とも似た読書体験

ほかにも移動の章では、乗員に対する車両の重量比から「車はどんどん重くなっている」という変化を捉え、現代の車や車の進化を考える。食の章では、可食部の肉1単位あたりの飼料要求率から牛・豚・鶏のシェア変遷を考えたり、フランス人のワイン消費量がピーク時から70%も下回っている事実を元に食習慣の変化に考察を加えたりする。携帯電話と車、どっちが環境に悪いのか。こんなトピックも製造過程のエネルギー量を試算し、全生産数の総重量、機器の寿命、使用の際にかかるエネルギーコスト、必要なネットワークの電力なども加えながら考えていく。

知的な遊びとしても面白いし、世界の今とこれからを考えるヒントが71本のエッセーそれぞれに詰まっている。データを基に世界を正しく見る習慣を説いた大ベストセラー『FACTFULNESS』とも似た読書体験が楽しめる。「初速の出足が鈍い新刊が多い中では、読者の反応がいい」と同書店でビジネス書を担当する川原敏治さんは話す。

投資の入門書が上位に

それでは、先週のベスト5を見ていこう。

(1)史上最強の内定獲得術武藤孝幸著(秀和システム)
(2)教養としての「地政学」入門出口治明著(日経BP)
(3)起業の天才!大西康之著(東洋経済新報社)
(4)今さら聞けない投資の超基本泉美智子著(朝日新聞出版)
(5)Numbers Don't Lieバーツラフ・シュミル著(NHK出版)

(八重洲ブックセンター本店、2021年4月4~10日)

1位は、大学生向けの就活塾を経営する企業の社長が明かす内定獲得メソッドの本。2位は3月に同書店を訪れたときに「出口治明氏が地政学入門 歴史から示す日本の立ち位置」の記事で紹介した本、3位は2月に同書店を訪れたときに「ベゾス氏と同じ未来を見た リクルート江副氏の光と闇」の記事で紹介した本で、いずれもこの書店では息の長い売れ筋になってきた。

4位は《株・投資信託・iDeCo・NISAがわかる》と副題がついており、投資のイロハを伝授する内容。投資の入門書はこのところジャンル全体が売り上げを伸ばしているという。今回紹介した『Numbers Don't Lie』は5位だった。

(水柿武志)

Numbers Don't Lie: 世界のリアルは「数字」でつかめ!

著者 : バーツラフ・シュミル
出版 : NHK出版
価格 : 2,200 円(税込み)