世界のリアル、数字で読み解く 知的興奮呼ぶ読書体験八重洲ブックセンター本店

1階入り口のメインの平台に5列積み上げて展示する(八重洲ブックセンター本店)
1階入り口のメインの平台に5列積み上げて展示する(八重洲ブックセンター本店)

ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は定点観測している八重洲ブックセンター本店だ。土日を中心に人の流れは回復しつつあったが、12日から東京23区にもまん延防止等重点措置が適用されたこともあり、来店客はまた少し減り始め、都心店舗の苦境は終わりが見えない。そんな中、書店員が注目するのは、今日の世界で知っておいた方がよいことを数字に着目しながらわかりやすく読み解いたカナダの学際研究の大家による知的エッセーだった。

ビル・ゲイツ氏も著者のファンを公言

その本はバーツラフ・シュミル『Numbers Don't Lie』(栗木さつき・熊谷千寿訳、NHK出版)。副題には《世界のリアルは「数字」でつかめ!》とあって、「人々」「国々」「食」「環境」「エネルギー」「移動」「機会」という7つの分野の71のトピックについて、信頼できるデータと数字で語っていく世界を知るための教養エッセーという趣の本だ。

著者のシュミル氏はエネルギー研究の専門家で、『エネルギーの人類史』などの著作がある。専門にとどまらず学際研究の第一人者といわれ、日本政府主導で世界のリーダーが一堂に会し、温暖化問題の解決に向け協議する国際会議「ICEF(アイセフ)」の運営委員会メンバーも務める。マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏も同氏のファンを公言しているほどの知の巨人の一人だ。その著者が米電気電子技術者協会(IEEE)の機関誌に連載したコラムに新たなトピックも書き加えて本書は編集された。

「世界ではいま、本当のところ、なにが起こっているのだろう? それを理解するには、数字を適切な観点から見なければならない」と著者はいう。例えば第1章「世界の人々」の中で、「生活の質をもっともよくあらわす指標」として乳児死亡率を取り上げる。西欧諸国や米国でも1850年代は200~300だったが、1950年になると35~65に下がり、2010年代後半の5年間で見ると、日本やアイスランドは2、米国は6と著しく減ってくる。だが、ソマリアやシエラレオネではいまだ60を超える。こんな数字をあげながら歴史的変遷やそれぞれの国の生活の質の違いを明らかにしていくのだ。

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