スーツとまでは言わないが、ビジネスでしっかりきちんと感をまといたいとき、選ばれてきたのがジャケットだった。だが今、ジャケットはその「きちんと感」というキャラクターはそのままに、今の時代にあった「リラックス感」をまとうための、身近で手軽なツールのひとつへと進化しつつある。
ジャケットを描写する単語に「かっちり」だけではなく「ふんわり」「さらっと」などが加わったように、ジャケットでは快適さが当たり前に。そしてそれとともに、相性のいいインナーやボトムス、さらには靴の幅も広がってきた。スタイルも、着ていく場所やシーンもより自由度が増したジャケットにおいて今大人が狙うべき着こなしを考察する。
オンライン会議で”テーラード過ぎない“ゆるさを出せる!
「シャツ屋のジャケット」万能論
軽いジャケットがお望みならシャツブランドのものを狙うのも手。近年は進化が著しく、仕事に休日に幅広く使える。
■GIANNETTO(ジャンネット)=上の写真左
シャツジャケットの模範解答的一着
細腹をも省くミニマル設計でとことん軽さを追求した一着。ナローラペルやゆとりを持たせたシルエットにより、モダンな着こなしが楽しめる。シャツのフロント部分に刺繍(ししゅう)される太陽マークをラペルピンにアレンジしているのも面白い。コットン100%。4万5000円(ビームス ハウス 丸の内)
■BAGUTTA(バグッタ)=上の写真中
ブランドを主張するエッジの効いたデザイン
程よくモードテイストを感じさせる攻めたデザインのシャツを得意とするバグッタ。ジャケット作りにもその持ち味は存分に発揮され、今作もラペルのカーブが非常に大胆。ステッチ部分のパッカリングもこなれた雰囲気だ。生地はストレッチの効いたコットン。5万8000円(トレメッツォ)
■ANTICA CAMICERIA LOMBARDI(アンティカ カミチェリア ロンバルディ)=上の写真右
サルトリアムード漂う究極のシャツジャケ
1860年創業のナポリ最古のカミチェリア、ロンバルディ。美しい手縫いシャツは世界最高峰の品質と称されるが、ジャケットもナポリの職人技を駆使したことで抜群の軽さと品格を両立してくれる。こちらはネップ感あるコットン生地を使用し、味わいも豊か。26万円(日本橋三越本店)
シャツ屋のジャケットのPoint1 袖付け、仕様はシャツの作り
芯地はもちろん、袖付けにおいても肩パッドや垂れ綿などを省いたシャツライクな仕様。袖ボタンを割愛したものも多く、袖まくりも容易。
シャツ屋のジャケットのPoint2 薄生地1枚でもしっかりな風合い
芯材を潔く省いた代わりに表生地を内側に大きく見返したモデルが多いのも特徴。ゆえに薄生地でもきちんとした面構えに。
肌着を作ってきた感性で今求められる軽さを追求
名門シャツメーカーには近年トータルブランド化を推し進めるところも多い。春夏にふさわしい軽快な一着が欲しいのなら、こうしたところの作るジャケットを狙うのも一興だ。シャツという肌着を長年仕立ててきただけに、一般的なテーラードとは別次元の軽さや着やすさをかなえたモデルが多いからだ。
ここで紹介した3着はその好例。「バグッタ」「ジャンネット」は副資材をまったく入れないまさしくシャツライクな仕立てで、きちんとした面構えと裏腹に、カーディガンやパーカといった軽い羽織り物をまとう感覚で着用できる。一方「ロンバルディ」は随所を職人が手縫いで仕立てた本格派。マニカカミーチャと言われるナポリ伝統の袖付けにより柔らかな着用感で、見た目にも寛いだ雰囲気を演出できる。ジャケットの選択肢を広げる上でもぜひ注目を。