――国は今までも少子化対策に取り組んできました。コロナの影響を受けて今まで通りの対策で足りるのでしょうか。

「総括的な少子化対策を打たなくてはいけないと考えます。日本の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産むと推計される子どもの人数)は00年代半ばに底を打ち、回復傾向にありました。しかし10年代後半に伸びが止まり、再び減り始めています。コロナ前の19年出生数は86万5千人で、国の推計を上回るペースで少子化が加速しています。そこにコロナ禍が加わり、日本の少子化はさらに深刻な状況に陥るリスクがあります。社会保険制度や経済、地方を維持できるか否か、今が瀬戸際です」

「少子化の要因は数多く、複雑に絡み合っています。未婚化・晩婚化も原因ですし、夫婦がともに正社員のパワーカップルにとっては保育所整備など両立支援が大切です。夫だけの片働きだったり共働きでも夫婦がともに非正規雇用だったりしたら雇用の安定や経済支援が欠かせません。育児不安を抱える専業主婦には孤立防止策が有効でしょう。とにかくどんな家族・雇用形態であろうと、子どもを持ちたいと願う人が理想とする人数の子どもを持てるよう、施策を総動員しなくてはなりません」

「結婚するかしないか、子どもを持つか持たないか、子どもを持つとして何人持つか。これらは個人に決定権があり、国は強要できません。結婚や出産の自由を守りながら、少子化を克服するには、希望する人が1人でも多く結婚できるようにし、子どもがほしいと願う人は希望する子どもの数を持てるようにするしか方法はありません」

「特に重要なのは多子世帯を応援することです。結婚・出産しない選択を尊重するなかで少子化に歯止めを掛けるには、3人以上子どもを持つ人が増えることが重要です。日本では今も3人以上子どもを持ちたいと願っている人が一定数います。その希望がかなわないのは経済的な理由が大きいのです。子育てコストがかさみ、家族の収入だけでは3人、4人と子どもを育てるのは難しい。彼ら彼女らに手厚い経済支援を急ぐべきです」

――その財源はどう確保すればよいのでしょうか?

「経済協力開発機構(OECD)調べでは、日本の家族関係社会支出は国内総生産(GDP)比で1.9%。少子化対策で効果を上げている英国3.4%、フランス2.9%、スウェーデン3.6%に及びません。特に現金給付が劣っており、もっと支出を増やさないと少子化に歯止めは掛けられません。個人的には消費増税が現実的な財源確保策だとみています。あわせて政府予算全般の支出構造を見直し、少子化対策支出を拡充することが求められます」

「先述したとおり、日本の少子化は瀬戸際にあります。いかに危機的状況にあるか、説明を尽くして負担増を理解してもらうしかありません。特に主体的に未婚や子どもを持たない選択をしている人たちの意識改革が欠かせません」

「出産や結婚の自由は個人の重要な権利で。それは尊重しなくてはいけません。一方、子どもを生み育てなくても安心して暮らせるのは国が経済的に豊かで、年金や医療、介護など個人の生活を支える社会保障制度が維持されているからです。今、少子化でその前提が揺らいでいます。増税で負担が増えようとも、子どもが多い世帯により手厚く配分することが、自分たちの自由を守るためでもあると気付いてほしいと思います」

(編集委員 石塚由紀夫)

管理職・ミドル世代の転職なら――「エグゼクティブ転職」

5分でわかる「エグゼクティブ力」
いま、あなたの市場価値は?

>> 診断を受けてみる(無料)

「エグゼクティブ転職」は、日本経済新聞社グループが運営する 次世代リーダーの転職支援サイトです

NIKKEI 日経HR


ビジネス書などの書評を紹介
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら