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中学校でeスポーツ大会 ロートが教育に関わる理由

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NIKKEI STYLE

ロート製薬が教育分野で新しい試みを始めている。大阪市立の新巽中学校(大阪市生野区)と組み、ゲームの対戦競技「eスポーツ」の大会を2月に開いた。80人近い生徒らが学校の中でゲームで対戦し、オンライン配信するという斬新な試みだ。プレゼンテーションの時間には、ゲームは本当に悪なのだろうかと生徒が堂々と問題提起した。しかし、なぜ学校現場でゲームを? そもそも製薬企業のロート製薬が教育やeスポーツの分野で活動を? 次々と浮かぶ疑問を解くため、大会を主導したロート製薬CEO付兼未来社会デザイン室長の荒木健史さん(以下、敬称略)と新巽中学校の山本昌平先生に話を聞いた。

――ロート製薬はeスポーツを広げるというミッションを掲げているのですか。

荒木 2018年7月に経済産業省からロートに転職してきました。僕が室長を務めている未来社会デザイン室は会長直下の組織でして、30年後の社会のあり方を考えることがミッションです。会社としても僕個人としても、一人一人の個性が尊重される社会づくりを目指しています。eスポーツは、そうした社会づくりに向けての一つの入り口なんです。eスポーツが教育に及ぼす効果があるのではないかと仮説を立て、新巽中学校の山本昌平先生とともに、eスポーツの大会を通じて検証してみました。

――しかし、中学校でeスポーツ大会を実施するとは、なかなか攻めていますよね。ゲームに対しては親や教育現場にはいろいろな意見がありそうです。実現するのは大変だったのではないですか。

荒木 そうですね。いろいろな方から理解を得るのが、非常に大変ではありました(笑)。幸いにも、一緒にやらせていただいた山本先生のご理解や問題意識が深く、校内の先生たちと協同してくれました。ただ、実は新巽中学校で開催する前の2020年10月に、大阪市生野区とロート製薬、プロゲーマーを擁し、ゲーム開発支援を手がけるデジタルハーツさん、スポーツ用品などを扱うスポーツタカハシ(大阪市)さんと組んで小中学生向けの「生野っこチャレンジ」というeスポーツ大会を開いていたんです。

――なるほど、ある程度地ならしができていたわけですね。そもそも、生野っこチャレンジはどのような経緯で開催されたのですか。

荒木 新型コロナウイルス感染症拡大による最初の緊急事態宣言のときに、子どもたちが学校に通えなくなりましたよね。自宅でゲームをする時間が増えた子も多かったのですが、意外に色々なスキルが得られたという話を保護者や子どもたちから聞きました。では、それを披露する場としてeスポーツ大会を開催しましょうというお話を、大阪市生野区の区長さんにしたところ、意気投合したという訳です。

――実際に生野っこチャレンジを開催してみて反応はいかがでしたか。

荒木 参加してくれた子の親御さんのアンケートはポジティブな反応が多かったです。例えば、仮想世界でブロックを積み重ねるゲーム「マインクラフト」をやっている子の中には空間認知能力がすごく高い子がいたり、ほかにも、学齢や地域を越えたコミュニケーションが生まれたり、オンラインでやるeスポーツだからこそのメリットがよく見えました。今後、発達障害の子や、不登校の子、引きこもりの子が活躍できる場になっていくのではないかと感じました。

――参加者はどういう人たちですか。

荒木 北は北海道から南は香川県まで、全国から小中学生が参加してくれました。全く知らない子たち同士でチームを組んでもらいました。大阪市教育委員会や経産省、他の小中学校の先生方も観覧していただきました。

――大会を通じて、eスポーツの教育的な効果が見えてきたという感じでしょうか。

荒木 そうですね、例えばここ数年、「プログラミング教育」という言葉自体は知られるようになってきましたが、では実際どうすれば子どもたちが習得できるのかといえば、まだ手探りの部分がありますよね。GIGAスクール構想や、STEM教育が言われる中にあって、子どもたちのデジタルリテラシーを高めるためには、ゲームを入り口にするのもいいのではないかと思えてきました。

ゲームは本当に悪なのか?

――そういう背景があって、新巽中学校での大会につながるわけですね。

荒木 はい。今度は主催者は大人ではなく生徒です。新巽中学校の総合的な学習の時間を活用して実施することになりました。「脱獄ごっこ」という、いわゆる「泥棒」と「警察」の二手に分かれて鬼ごっこをする「どろけい」の要素があるスマートフォンゲームで対戦してもらいました。それだけではなく、生徒自身が「ゲームは本当に悪なのか」「ゲームを学習に役立てることはできるのか」というテーマを設定して、プレゼンテーションもしてもらいました。

――わたしもオンラインで当日の大会の様子を見ましたが、「ゲームは本当に悪なのか」を問いかける生徒3人のプレゼンテーションはなかなか見事でした。依存症などゲームのリスクを論じつつも、教育効果の高さをアピールするという展開でしたね。

荒木 ありがとうございます。僕らは本当にあくまで伴走者でして、特に、山本先生が授業の中で生徒と協同いただきつつ、2年生の78人とオンラインでコミュニケーションも取りながら、約4カ月で生徒は大会をつくりあげました。生徒にとっては、ポスターをつくって広報をしたり、コンセプトづくりやチームマネジメントなど、ゲームにとどまらない、かつ授業だけでは実現できない幅広い学びがあったかと思います。

――途中で中継の回線が固まるなど、トラブルもありました。

荒木 山本先生とも現場でお話していましたが、あの時、本当に我々は何も口を出さずに生徒に任せたんです。実社会でも回線が固まることってあるじゃないですか。そこで、どう現場で臨機応変に対応するか。これもリスクマネジメントの学びです。

――そうだったんですね。しばらくして復旧して安心しました。

荒木 あのトラブルもいい経験だったと生徒たちは言っていました。見ている方々にはご迷惑をおかけしましたが(笑)。

――まさに、普通の授業だけでは身につかない力ですよね。しかし、先ほどの「ゲームは悪なのか」問題に戻りますけど、ゲーム=悪という考えは社会の中で根強い気がします。

荒木 例えば視力が低下するとか、ゲームを長時間やりすぎて中毒状態になるとか、デメリットが定量化されやすいことが一因だと思っています。そうした問題への対処方法は、今回の取り組みの中でも、プロゲーマーの方に講義していただきました。一方で、メリットは定量化しにくいんですよね。

――メリットとしては、どのようなものが挙げられますか。

荒木 生徒のプレゼンの中でも出てきましたけど、幼いころ、ゲームを通じてひらがなやカタカナを読み書きできるようになったという話がありました。つまり、ゲームが学ぶきっかけになったと。ほかにも、例えば、シューティングゲームなどは、敵の状況、自分や味方の状況など、情報量が非常に多い中で一瞬で判断して実行する情報活用力が養われるという側面があります。

これだけではありません。eスポーツは、性別や障害の有無なども決定的な壁にはなりません。多様性に関する教育にもつながります。仲間と一緒にプレーするにはコミュニケーションやコラボレーションする力が必要です。自分の強みや弱みの理解だけではなく、仲間の弱みや強みを知るきっかけになります。

「教育は究極のヘルスケアじゃないですか?」

――なるほど、確かに今おっしゃったようなメリットは測定しにくいですね。

荒木 ペーパーテストで評価したり、通知表に書いたりもしにくいですよね。つまり、ゲームのデメリットは定量評価されやすく、メリットは評価しにくいという構造があります。逆に言えば、ペーパーテストで測りづらいため、非認知スキルと言われるわけですが。だからこそ、ゲーム(eスポーツ)の学習効果のようなものをきちんと「見える化」することが必要だと強く感じています。今回はパフォーマンスを評価するルーブリックという指標を活用しながら検証しました。山本先生と一緒に、非認知スキルとeスポーツで得られるスキルとのひもづけをしようとしています。

山本 体育大会や文化発表会などの学校行事で活躍する生徒とはまた違う生徒たちが、がぜん、力を発揮していたことが印象深いです。eスポーツは身体的な差を意識することなく取り組めるので、生徒のほうから当然のように男女混合でのチーム編成を提案されたことにも、新鮮な驚きがありました。ゲームを含むあらゆるテクノロジーの可能性に学校現場が向き合い、一方的にゲームは悪だと決めつけることなく、これからも生徒たちと一緒になってその善しあしを考えていければと思っています。

――親御さんたちは、今回の取り組みをどう見ていたのでしょうか

荒木 「生野っこチャレンジ」のアンケートを見ると、ポジティブな感想が多かったですよ。「ゲームばかりでこの子は一体何をしているのだろう」と思っていた親御さんがいたのですが、実は得られるものはたくさんあるんだってわかった、という感想を寄せてくれました。ほかにも、オンラインで人間関係を築くことは今後ますます重要になるのではないか、という意見もありました。

――今後はどのような展開を考えていますか。

山本 パソコンやタブレットなどが学校現場に配られてインフラが整ってきているので、あとはそれを使ってどう実践するかになってきます。他の学校でも総合の学習の中で使えるようにしていってもらったらいいなと思います。

荒木 総合学習用にパッケージ化できるといいですよね。また、eスポーツだけではなく、例えば海洋生物の探究とか、いろいろな分野が考えられます。生徒の興味は多様ですので。

山本 ただ、危惧していることもあります。今回はグーグルから無償提供された端末を活用してeスポーツ大会を実施しましたが、これから行政が学校に配る端末には様々な利用制限がかかっており、ゲームはおろかユーチューブなども十分に見られない場合もあると耳にします。学校現場のニーズに即した授業の実施など、配布される端末の活用自由度が上がると積極的にチャレンジする学校が増えるのではないでしょうか。

――最後にもう一度、お聞きします。なぜロートが教育に関わっているのですか。

荒木 僕が経産省から移ってきて、そのときにできたのが未来社会デザイン室です。ミッションは30年後を考えることです。そうすると、まず考えるべきことはやはり、教育だということになります。日本の人口は減っていく一方。にもかかわらず、児童虐待は深刻だし、子どもの自殺だって深刻。先行きが不透明で悲壮感すら漂っています。だからこそ、一人ひとりの子どもを大事にして、それぞれの個性や才覚をきちんと表現できる手段や場所をつくりたい。それぞれの子たちが「自分らしさ」を発見・探究できることにつなげていけたらと思います。

――荒木さんご自身のお考えはよくわかりました。それでも、なぜロートがこのようなことをやろうとしているのかが、ちょっと謎なのですが。

荒木 「製薬会社が教育の取り組みを実施すること」に高い価値を感じていまして、特に、身体的、精神的、社会的、道徳的な健康は、教育を入り口にするとすごくつながって見えるんです。教育って、究極のヘルスケアだと思いませんか?

(聞き手 桜井陽)

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