N
健康・医療
日経ヘルス&メディカル

医師が体験 新型コロナワクチン、どちらの腕に打つ?

2021/4/17

日経ヘルス&メディカル

写真はイメージ=PIXTA
写真はイメージ=PIXTA
日経メディカル

呼吸器内科医として新型コロナウイルス感染症診療にも携わる倉原優氏が、日々の診療や、患者さん・他の医療スタッフとのやりとりを通して感じたことをつづるコラムから、ご自身のワクチン接種の体験についてまとめていただきました。

◇   ◇   ◇

私は既にファイザー社の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンを2回接種しました。1回目の接種は利き腕でない方、左腕に打ちました。

接種したその日の夜から筋肉痛のような鈍痛がありましたが、頭痛や倦怠(けんたい)感はありませんでした。職員の中には頭痛や倦怠感がひどくて仕事ができなかった人もチラホラいましたが、臨床試験で報告された以上の副反応はなかったように思います。アナフィラキシーについては、当初、過熱気味に報道されましたが、当院の職員接種ではアドレナリン[注1]を要した人はいませんでした。ただ、動悸(どうき)や息切れなど、アドレナリンを投与するまでには至らないものの、少し強めの副反応を経験した職員もおり、2回目の接種を見送ったケースもありました。

さて、「COVID-19ワクチンに関する提言(第2版)」[注2]によれば、COVID-19ワクチンは「利き腕ではない方」に接種することが推奨されています。とはいえ、利き腕に接種することが禁忌とされているわけでもありません。

COVID-19 ワクチンに関する提言(第2版)より

 接種する腕は、接種部位の疼痛(とうつう)に備えて、利き手ではない側に接種することが望まれます。ファイザーの臨床試験のプロトコールでは、接種は利き手ではない腕に接種することになっていましたので、2回目の接種も1回目と同側が望ましいと考えられます。ただし、1回目の接種部位に著明な局所反応を認めた場合、2回目は反対側に接種することも可能と思われます。

[注1]アナフィラキシーショックがあった場合の救急処置には、一般的にアドレナリン製剤が用いられる。

[注2]https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/guidelines/2102_covid_vaccine_2.pdf

しかし、問題がありました。私は、毎日側臥位(そくがい)で就寝するのですが、左側臥位が得手(えて)なのです。あれ、左腕を下にすると、イタイぞ。

──もんもんもんもんもん。ハッ、しまった! 鈍痛で眠れない!

ようやく寝付いたと思ったら、夜中にも寝返りを打つたびに鈍痛があって、結局あまり眠れない一夜となってしまいました。よし、2回目の接種は右腕にしよう。日中の痛みよりも、睡眠の方が大事だ。

1回目の接種による腕の痛みは翌日午前が最も強く、2日後にはかなり軽減していました。肩関節を外転するときに鈍い痛みを感じるのですが、日常ではあまり利き腕でない手を外転させる作業は多くなく、そこまで困りませんでした。強いて挙げるなら、シャンプーをするときは腕が結構痛みました。

2回目の接種を右腕にしてみたら…

入眠を重要視して、2回目の接種は右腕を選びました。今の時代、パソコンは両手を使いますし、私は料理ができないし(妻に依存)、利き腕を日中使うことはあまり多くないはずだ、という1回目の接種を反面教師にした考えからです。

──しかし、いざ右腕に打ってみると、想定より利き腕を使う場面が多いことに気付きました。本当に、何気ない動作なのですが、飲食、靴下の脱ぎ着、入浴、トイレ、スマホ操作……など、挙げるとキリがありません。2回目の接種も1回目とほぼ同じレベルの鈍痛があったのですが、子どもと一緒に算数の勉強をしているとき、ペンを握って字を書くだけで痛みを感じました。

「しまった、結構痛いシーンが多いなぁ」。そう思いながら日中を過ごすことになりました。

とはいえ、夜は比較的スムーズに入眠できました。ただ、人間とは結構大きく寝返りを打っている生き物だということが分かりました。知らないうちに右側臥位になっていて、結局、夜に1回目が覚めてしまうというありさまでした。

以上のことから、

・非利き腕に接種すると、そちらを下にして寝る場合、入眠のハードルになる

・利き腕に接種すると、日常生活で痛みを感じる場面が想定より多い

と言えます。同僚のナースもだいたい同じ意見だったので、これから接種する方は参考にしてください。

なお、小さな子どもがいる家では、「だっこー」と言いながら子どもがガバッと飛びついてくることがあり、激痛で悶絶(もんぜつ)するかもしれませんので、注意してくださいね。

まとめ

COVID-19ワクチンを接種する腕は、「利き腕ではない方」と一律に解釈するよりも、「自分が生活する上でどういう場面で困るだろうか」という点を考慮したほうがよいと思いました。就寝時の体位はみなさん軽視しがちなので、一度、シミュレーションしてみてください。

[日経メディカル2021年4月5日付記事を再構成]※情報は掲載当時のものです。

倉原優さん
国立病院機構近畿中央呼吸器センター呼吸器内科。2006年滋賀医大卒。洛和会音羽病院を経て08年から現職。08年から始めた自身のブログ「呼吸器内科医」をベースにした書籍『「寄り道」呼吸器診療-呼吸器科医が悩む疑問とエビデンス-』を、2013年に刊行した。
注目記事