単独ライブ延期で漫才に注力

何が起こるか分からない本番一発勝負のなかで優勝できた要因を、本人たちはこう振り返る。

『M-1グランプリ2020』の1本目に披露した「フレンチ」のネタの一場面を2人で再現(写真:中村嘉昭)

野田 ファーストステージで出囃子(でばやし)が流れるなか、せり上がりで正座して出ていったのが決め手だった気がします。最初の正座と挨拶がないままでネタに入ったら、ちょっと弱かったかもしれない。挨拶とか、入りの部分でウケると会場がホームになるんです。

村上 あの正座は完全にノータッチでしたけど、お客さんが笑ってくれてよかったです。

野田 席の数が限られていたので、お客さんの顔がハッキリ見えましたね。立ち位置的に、僕は審査員席は見れなかったんですけど、松本さんの笑い声が聞こえたときはもう、アガった。爆アガり。松本さんになりたくてこの世界に入りましたから。

村上 あは(笑)。いいね~。

野田 あとは、自粛期間が長かったことも『M‐1』と関係していて。3月に『R‐1』で優勝したのに、1番忙しくなるはずの3カ月間は、緊急事態宣言もあって自粛が続いて、6月に予定していた単独ライブも9月に延期になったんです。僕らは単独のときにしかコントを作らないんで、20年の『キングオブコント』にはネタがなくて出られなかった。代わりに、単独のネタを全部漫才にしたんですよ。それで生まれたのが、あの「つり革」のネタです。

村上 6本くらい作ったんだよね。その中の1つ。

野田 できたとき、「あ、これ『M‐1』だな」って。

村上 お互い言い合わないんですけど、『M‐1』向きっていうのが何となくあるんです。ごちゃついてないというか。

野田 そうそう、やってることが単純っていう。

村上 「つり革につかまらない」っていう“あるある”から入るから分かりやすい、とかね。

『M‐1』優勝以降は忙しい日々が続いているが、体調管理や仕事のペース配分には不安を抱えていると明かす。

野田 この忙しさは堪えられないです(笑)。

村上 まずは体を慣れさせないと。

野田 村上はどの仕事もコンスタントにできるんですけど、僕の場合は「ここが勝負どころだ」ってならないと、なかなか動けなくて。こんなに仕事がたくさん来ると、ペース配分ができなくて、どこに力を入れたらいいのか分からない。1本に集中するタイプだから、序盤は苦しむかもしれないです(笑)。いろんなところから声をかけてもらってありがたいんですけど。

野田は『M‐1』優勝直後に「最下位取っても優勝することあるんで、あきらめないでください、みなさん!」と3年前の自分たちへのメッセージとも受け取れるようなコメントを残した。リベンジを成功させ、『R‐1』『M‐1』という2つの大きなタイトルを獲得した今、2人はどこに向かうのか。

野田 『キングオブコント』を狙いますよ。まだ誰も成し遂げていないトリプル優勝を。

村上 野田さんがやると言うならやります。コントをやるのがお互い好きなんで。

野田 『キングオブコント』で優勝したら招待状みたいなのが来ると思うんですよね。

村上 どこから?

野田 魔界。魔界大会から。

村上 「人間の世界ではお前たちはやりすぎた」って? はははは!

野田 大事なのはこの先。正直、不安ですよ。でも『M‐1』優勝者として、せっかくの勢いをここで途切れさせるわけにはいかない。疲れてる場合じゃないですね。

(ライター 遠藤敏文)

[日経エンタテインメント! 2021年3月号の記事を再構成]

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