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四川料理を極めたシェフ 本場の味でカジュアルに挑戦

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NIKKEI STYLE

東京・麻布十番に本店を構える四川の名店「老四川 飄香(ピャオシャン)」のオーナーシェフ井桁良樹さんは、昨年11月、これまで手掛けてきた店とは異なるスタイルの店を懇意の飲食会社と共に始めることとなった。丸の内に開業した商業ビル、丸の内テラスにオープンした「ジャンピングパンダ」である。「飄香」の味を受け継ぐ店としては、初のカジュアルスタイルの店で、同シェフは料理を監修している。井桁シェフの味が手ごろな価格で楽しめるとあって、週3で通う熱心なファンもいるそう。同シェフのプロデュースの狙いと思いを探った。

「2001年、中国・四川省を初めて訪れて以来、20年ほど通っていますが、現地の店はものすごいスピードで変わっている。町並みだけでなく料理も変わっているんです」と井桁シェフは話す。昔ながらの料理がメニューにある店がなくなってきているといい、寂しさを覚える一方で、次々に登場する新しい店の圧倒されるような勢いも感じてきた。そこで「ジャンピングパンダ」では四川の「今」を反映したメニューを出すようにしたという。

30品ほど並ぶメニューでもシェフが特に薦めたいというのが、「冷吃牛肉(リャンチーニューロー)」「羊肉串(ヤンローチュアン)」「江津肉片(ジャンジンローピェン)」の3品。「冷吃牛肉」は、4種類のトウガラシを使った激辛牛モモ肉の前菜。「羊肉串」は、肉が隠れるほどたっぷりスパイスパウダーをのせた串料理で、「江津肉片」はトウガラシのピクルスを使った酢豚だ。

これらの料理の価格は680~1300円と手ごろだが、手間のかけかたは井桁シェフ監修の店ならでは。調味料も手作りする。厨房は13年間、井桁シェフの下で腕を磨いてきた加藤佳祐さんが、料理長として取り仕切る。

もともとは温かい料理だったが冷たい方がおいしいと「冷たく食べる牛肉」という意味の料理名が付くようになった冷吃牛肉には、一見ビーフジャーキーのような干し肉にも見える細切り肉が使われている。ところがこの肉、口に入れるとふっくらと軟らかい。ルースイと呼ばれる香辛料の煮汁でブロック肉を1時間ほど煮込んでから、細切りにして揚げているからだ。

真っ赤でいかにも辛そうだが、辛さよりも肉をかむほどに染み出るうまみの方が印象的。この一皿だけで、酒が何杯も進みそうだ。

一方、「羊肉串」はもち米の粉の衣で覆った肉を高温の油に入れ揚げた料理。中は軟らかい状態を保つよう気を付けながら、3度ほど油にジュッと入れ外側をせんべいのようにパリッと揚げるのだという。肉にかかったスパイスパウダーはトウガラシ、クミンなどを合わせたもの。同じスパイスを使った料理に、大きめにゴロっと切った皮つきのジャガイモを使ったポテトフライもあり、これも人気メニューだ。

さらに「江津肉片」は、ミニトマトが入った酢豚。トマト入り酢豚は、加藤さんが青ザンショウの産地である四川省の江津を訪れた際、現地で出合った料理だという。

「四川省の江津では串切りのトマトを使っていましたが、井桁シェフがミニトマトの方がかわいいでしょうって」(加藤さん)と、「ジャンピングパンダ」ならではの料理が登場することに。豚肉は衣に米粉を薄く付け高温で一気に揚げているため、サクサクと意外なほど軽い食感。青ザンショウや、塩水に漬け乳酸発酵させたトウガラシのピクルスを使っていて、しっかりとしたうまみのある酸味が感じられる。酢豚であることを忘れるぐらいさっぱりしているので、1人で一皿ぺろりといけそうだ。実際、若い女性の1人客がこの酢豚をオーダーしたこともあるとか。

井桁シェフはもともと、「ジャンピングパンダ」で煮込み料理に力を入れたかったといい、3月からは加藤さんの発案で「酸菜魚(スワンツァイユイ)」がメニューに加わった。旬の白身魚とカラシ菜のピクルスを煮込んだ塩味ベースの料理だ。取材時にはプリっとした食感のタラを用いており、これがカラシ菜の酸味にとても合う。一緒に煮込まれている春キャベツの甘みもさらに味わいを引き立て、夜にはまだ肌寒さが残るこの季節に心地よく体を温めてくれる。四川料理といえばトウガラシを使った激辛料理をイメージしがちだが、四川省には自貢(ズゴン)という塩の産地がある。塩味ベースも同省料理の特徴なのだ。

実は井桁シェフ、現代の四川料理の勢いを肌で感じる一方で、50歳を超えてから伝統四川料理を伝える流派である「松雲門派(ソンユンモンハ)」に弟子入りしている。2018年のことだ。「最近はトウガラシやサンショウをたくさん用いるなど、見た目からインパクトがあるような料理が増えてきたが、そうした料理では繊細な食材の味を生かせないのではないか」と考え、改めて伝統の技を極めたいと思ったのだ。調味料も素材から自家製で作るのではなく、既製のものを安易に使う風潮にも疑問を感じていた。

四川省には「百菜百味(バイツァイバイウェイ)」、つまり100の料理には100の味があるという格言があり、一つの素材を100通りに料理することが求められる。24の味付けと56の調理法が確立されていて、その組み合わせで変化に富んだ料理を生み出すことができるのだ。

日本人がよく知るマーボー豆腐の「麻辣(マーラー)」味は、その中の一つの味付けにすぎないというわけ。中には、果物のライチを思わせるようなさわやかな甘酸っぱさのある味付けもあるという。「昔の四川には、トウガラシの香りを感じる料理はあっても、激辛料理はほとんどなかったんです」と井桁シェフは話す。これだけ奥深い料理が発達したのは、2000年近い歴史を持つ中国有数の古都である省都・成都では、家庭料理だけでなく宮廷料理が育まれてきたからだ。

井桁シェフが松雲門派に魅了されたのは、同流派の店で食事をした際、それまで本でしか見たことがなかった料理が出てきたのがきっかけ。「最初に感銘を受けたのは、ナマコと豚のレバーを合わせ、豚のキクアブラ(小腸の周りの脂)と一緒に何時間もかけゆっくり炊いた料理でした。レバーはちょっと口に入れただけで、ほどけてなくなるようでしたね」。

早速、弟子入りしたいと何度も手紙を書くなどしてアプローチ。しかし、日本では四川の名料理人として知られていた井桁シェフも弟子入りはすんなりとはいかず、断られ続けた。それでもあきらめず、これは直接談判だと、現地でアパートを借り、同流派の店を食べ歩いたという。

熱意が通じ晴れて同流派に入門が許されたときには、「伝承式」が開かれテレビ局など多くの報道陣が取材にくるほどだったそうだ。同流派の継承者は日本人としては2人目。井桁シェフは今、「老四川 飄香 麻布十番本店」で松雲門派の料理を伝えるコースも提供している。

それほどまでに四川料理に入れ込む井桁シェフが、最初に魅了された同省の料理は最も身近な中華料理の一つ、回鍋肉(ホイコーロー)。高校1年生のとき、アルバイトをしていた中華料理店のまかないで食べたこの料理に、「めちゃめちゃご飯に合う」と衝撃を受けたことが、四川料理のシェフを目指すきっかけとなった。

ただし、当時食べた回鍋肉は甜麺醤(テンメンジャン)を使った甘味噌炒めのような料理。実は四川の回鍋肉では、ほとんど甜麺醤は使われず、味付けはほぼソラ豆とトウガラシを発酵させて作る豆板醤(トウバンジャン)なのだという。使用する肉は皮つきの豚モモ肉。たっぷりとした脂身があるが、一度ゆでてから用いるのでしつこさはない。

「老四川 飄香 麻布十番本店」で提供する回鍋肉も、皮つき肉が入手できる際はこれを使用している。合わせる野菜には決まりはないが、現地では葉ニンニクのみを使用することが多く、井桁シェフはこれにタマネギを加える。野菜の甘みが料理を引き立てるからだ。甜麺醤の回鍋肉はご飯のおかずというイメージだが、発酵したソラ豆の豊かな風味が加わった肉料理は酒との相性も抜群。訪れた中国人客が「本場の回鍋肉のお手本」と絶賛したこともあるといい、同店の名物料理となっている。ちなみに、この回鍋肉は「四川省の人に何が好きかと聞いたら、ほとんどの人はこの料理を挙げると思います」(井桁シェフ)というほど、現地でも人気が高いそうだ。

新しい四川料理の顔を映した「ジャンピングパンダ」に、伝統料理を極める「老四川 飄香 麻布十番本店」。両方の店の料理を味わえば、今まで知らなかった四川料理の世界が目の前に驚くほど開けてくるだろう。

(ライター メレンダ千春)

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