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超高温ガスのまま地表へ 43万年前の隕石の空中爆発

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ナショナルジオグラフィック日本版

今から43万年前、太陽系内をさまよっていた直径100メートルほどの小惑星が、地球にぶつかるコースに入った。その先には、人のいない氷の大地、南極大陸が広がっていた。

北半球にマンモスがいて、ヨーロッパで初期のネアンデルタール人が広がりつつあった時代のこと。地球の厚い大気に猛スピードで突入した隕石(いんせき)は、低空で爆発、破片は気化して地表の氷に襲いかかった。

このタイプの空中爆発は、地面にクレーターをうがつことはないため、その痕跡を見つけたり、どれほどの頻度で起きるかを知るのは困難だ。

今回、英ケント大学の惑星科学者マティアス・ファン・ギネケン氏らの研究チームは、南極で見つかった微粒子を詳しく調べることで、何十万年も前の空中爆発事件を解明、2021年3月31日付で科学誌「Science Advances」に論文を発表した。「大きな隕石の落下はきわめて珍しいので、最近の研究では隕石の空中爆発の方が大きな脅威でないかと考えられています」と同氏は語る。

たとえば2013年には、ロシアのチェリャビンスクで隕石の空中爆発が起きている。10メートルほどの大きさの隕石が空中で爆発、衝撃でガラスが割れるなどして1600人以上が負傷した。この隕石がもっと大きく、43万年前に南極に落下した隕石と同じ程度の大きさだったら、町は破壊されていただろう。爆発の威力は、1908年にロシアのツングースカ上空で爆発した隕石の4倍、広島に落とされた原子爆弾の数千倍にもなるはずだ。

チェリャビンスク規模の隕石爆発は、予期せぬタイミングで起こることが多い。地球で最高の望遠鏡をもってしても、小さな小惑星を見つけるのは難しいからだ。ファン・ギネケン氏は、「私たちは今回、地質記録からこうした爆発について知る方法を編み出しました。隕石衝突の歴史を再評価するのに役立ちます」と言う。

氷に閉じ込められた証拠

2018年2月、ファン・ギネケン氏は流星塵(りゅうせいじん)を探すために、ベルギーの南極隕石調査団の一員として南極大陸を訪れた。チームは二十数カ所を調査したが、多くの発見があったのは、そのうちの1カ所、セール・ロンダーネ山地と南極高原が接する位置にある岩山だった。80万年以上前に氷河が削り取った平らな山頂は、流星塵を完璧な状態で保存していた。

「南極では、山の上に宇宙以外からものが落ちてくることはめったにありません。非常に清浄で、人間の活動がないのはもちろん、植物も生えていないからです」とファン・ギネケン氏は言う。「だから、宇宙から降ってきたすべての物質が、非常に長い間保存されているのです」

ファン・ギネケン氏らは山頂で5キログラム以上の堆積物を採取して研究室に持ち帰り、その中から17粒のスフェルール(爆発の最中に溶けて再び固まった隕石の球形の微粒子)を選んで詳細に分析した。ファン・ギネケン氏は、この黒い粒子が地球外からきたものであることはすぐにわかったが、何かがおかしいとも感じた。一般的な流星塵とは違い、複数の球状粒子がくっついているものがあったからだ。

スフェルールの酸素同位体比を調べたところ、既知の隕石とは異なる点が明らかになった。空中爆発によってできたものとしては珍しく、このスフェルールは南極の氷にじかに接触して形成されたようなのだ。

今回のスフェルールは、ファン・ギネケン氏が以前調べた流星塵によく似ていた。その流星塵は南極にある日本のドームふじ基地やフランスとイタリアのコンコルディア基地で採取された巨大な氷床コアに含まれていたもので、氷床コア中の位置(表面から2.5キロ下)から約43万年前のものと推定された。

サンプルどうしの共通点から、これらの粒子はすべて同じ爆発現象によって形成されたと考えられた。また、南極大陸にはクレーターがないことや、スフェルールが大陸の広い範囲に散在していることから、それは巨大な空中爆発だったと推定された。

「氷にキス」するタッチダウン爆発

しかし、奇妙な酸素同位体比などもあり、これらの知見からスフェルールの物語を再構成するのは容易ではなかった。通常、空中爆発で溶融した隕石からできたスフェルールは、冷え固まってから地球表面に落ちてくる。そこで、米惑星科学研究所のナタリア・アルテミエワ氏は、コンピューター・シミュレーションを用いて、より複雑なタイプの空中爆発について検証してみた。

「爆発の煙が地表に到達するためにはもう少し大きな天体が必要でした。クレーターができるほど大きくはなく、氷にキスをする程度というのが理想です」と、アルテミエワ氏は言う。「何度か試した結果、それらしいシナリオを1つ見つけました」

そのシナリオでは、爆発した隕石の破片が気化し、超高温のガスの煙となって下向きに噴射され、地表に叩きつけられる。下向きの煙を伴わないチェリャビンスクのような空中爆発と、クレーターを形成する通常の隕石落下の中間的な爆発だ。

研究チームはこれを「タッチダウン」事象と呼んでいる。この衝突は、米ニューメキシコ大学の物理学者マーク・ボスロー氏がモデル化した別の爆発現象と非常によく似ている。東サハラの砂漠に3000万年前のものと推定されるガラス片が散在しているが、ボスロー氏は、これらが隕石の爆発によって生成したのではないかと考えている。

今回の論文についてボスロー氏は、しっかりしたシミュレーションであり、先史時代の南極大陸の上空でタッチダウン空中爆発が起きても不思議はないと言う。地球のまわりには、直径90~150メートルほどと、タッチダウン事象を起こすのに適したサイズの小惑星が数多く存在している。

「考えてみると、とても恐ろしいことです」とファン・ギネケン氏は言う。

ほかの可能性

オーストリア、ウィーン大学のクリスチャン・ケーベール氏は、研究チームの解釈は妥当であるとしながらも、少々懐疑的である。一つは、スフェルールの年代の推定が非常に難しい点。研究チームは今回のスフェルールがほかの場所で採取されたものとよく似ていると主張しているが、ケーベール氏はその関連性が確実ではないと指摘する。この点はファン・ギネケン氏も認めている。

ケーベール氏は、今回のスフェルールがもっと古い衝突イベントの痕跡である可能性があると指摘する。そうだとすれば、クレーターがなくてもさして意外ではない。氷床の移動によって衝突の痕跡が消えてしまったと考えられるからだ。

同氏は、タッチダウン事象が頻繁に起こるものなら、その存在を示す証拠が地質記録中に多数見つかるはずだが、現時点では発見されていないと指摘する。また、スフェルールの酸素同位体比が氷との混合を示唆しているという解釈にも疑問を呈する。今回のスフェルールはこれまでに知られていない珍しいタイプの隕石の破片だった可能性があるからだ。一方のファン・ギネケン氏は、その可能性は低いと考えている。

「データ自体は良いものですし、測定にも問題はなく、解釈も無理なものではありませんが、論文が主張するほど可能性を絞り込めるようなデータではないと思います」とケーベール氏は言う。「興味深い物語ではありますが、もっと多くの可能性があります」

空中爆発の発生頻度を解明するため、科学者たちは空に目を向け、頭上で爆発する可能性のある物体を詳細に調べている。現時点では宇宙から飛来する隕石を回避する方法はないものの、米航空宇宙局(NASA)が今年打ち上げを予定しているDARTミッションでは、小惑星に宇宙機を衝突させて軌道を変えることで地球を守る実験を行う。

(文 NADIA DRAKE、訳 三枝小夜子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年4月3日付]

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