カリフォルニア産シャルドネ お手ごろオススメの6本
冷えた白ワインが恋しい季節になった。そこで真っ先に頭に浮かぶのが「白ワインの女王」の異名を持つシャルドネ。世界的にも人気が高く、日本でもたくさんの種類が売られている。このほど東京都内で開かれたカリフォルニアワインの小売店・レストラン関係者向け試飲会で試飲した中から、お手ごろ価格で、かつ印象に残ったシャルドネを今回は何本かご紹介しよう。
シャルドネはフランスのブルゴーニュ地方が「本家」。だが、栽培しやすいことから、今や世界中で造られており、米カリフォルニア州も主要産地の1つだ。カリフォルニアのシャルドネを一躍、世界的に有名にしたのが、1976年のいわゆる「パリスの審判」である。
カリフォルニアワインとフランスワイン、どちらがおいしいか、フランスのワイン界の大御所が集まって、ブラインドテイスティングで順位付けしたところ、カリフォルニアの「シャトー・モンテレーナ1973」が白ワイン部門でブルゴーニュ勢を抑え1位に輝き、世界を驚かせた。赤ワイン部門も1位はカリフォルニアワインだった。
太陽が燦々(さんさん)と降り注ぐカリフォルニアは、ブドウが完熟しやすい。シャルドネの場合はパイナップルやマンゴーなどトロピカルフルーツに似た香りを帯びる。完熟したブドウは糖分が上がり、アルコール度数も高く、フルボディータイプが多い。
一方で、夏の気温がセ氏40度を超えるような内陸部で大量生産されたシャルドネは、暑さでブドウ中の酸が過度に減ったり、アルコール度数が高すぎたりして、味わいにバランスを欠くものが目立つ。
今回ご紹介するシャルドネは、味わいのバランスに優れ、かつ1本2000円台で買えるものを中心に選んだ。
◆「シャトー・スーヴェラン シャルドネ2017」(2200円)
スーヴェランは、シャトー・モンテレーナ1973の醸造を担ったマイク・ガーギッチ氏が在籍したこともある、歴史あるナパバレーのワイナリー。このシャルドネはフレッシュでフルーティーなタイプだが、ほのかな樽(たる)のニュアンスがボディーに厚みを与えている。コストパフォーマンスに優れたワインだ。
◆「モンテヴィーナ シャルドネ オミラ・ヒルズ カリフォルニア2017」(2640円)
このワインもどちらかといえばフレッシュでフルーティーなタイプ。よく熟した果実の甘酸っぱさをイメージさせる、飲み心地のよいワインだ。飲んだ時に感じるスパイシーなニュアンスが、味わいに立体感をもたらしている。
◆「バラードレーン シャルドネ2018」(2420円)
トロピカルフルーツというよりは、リンゴや柑橘(かんきつ)系果物の香りを連想させる味わいで、清涼感がある。ワイナリーのあるセントラルコーストは、沖合を流れる寒流の影響でカリフォルニアのワイン産地の中では比較的涼しく、シャルドネの栽培に向いているといわれている。
◆「リバティ・スクール シャルドネ2018」(2970円)
これもセントラルコーストのシャルドネだが、こちらのほうが樽熟成由来と見られるキャラメルやバニラビーンズなどの香りがよりはっきりとし、複雑で重厚なタイプ。飲みごたえがある。
◆「オールド・ソウル シャルドネ2018」(3080円)
バターやバニラビーンズ、ココナツミルクといった樽や乳酸発酵に由来する甘い香り満載の、カリフォルニアらしいフルボディーのシャルドネ。甘い香りは強すぎると全体のバランスを崩すが、このワインは酸味や果実味も十分なため、バランスよく、余韻もすっきりしている。
◆「ナーリー・ヘッド1924 スコッチ・バレル シャルドネ2018」(2530円、4月下旬入荷予定)
スコッチウイスキーの樽で熟成させた変わり種のフルボディー。米国ではウイスキーの樽で熟成させたワインがひそかなブームで、日本でも人気に火がつきそう。飲むとスコッチの風味が感じられ、口当たりがとてもまろやか。ナッツなどをつまみながら静かに味わいたいワインだ。
一般に、おいしいと言われる白ワインの条件は、まず、飲んだ時に爽快感や清涼感を与えてくれるしっかりとした酸味があること。そして、その酸味と釣り合う果実の甘みがあることだ。よく熟した果実の甘酸っぱさを想像すればわかりやすい。シャルドネが人気なのも、酸味と甘みのバランスに優れているからに他ならない。
だが、人気の理由はそれだけではない。シャルドネは「特徴のないのが特徴」とも言われる。否定的な意味ではなく、万人受けする風味の特徴を的確にとらえた表現だ。
白ワイン用のブドウ品種の中には、ソーヴィニヨンブランやヴィオニエ、マスカット系など個性的な香りを発散する「アロマティック品種」と呼ばれるものがある。アロマティック品種も世界的に人気だが、香りが個性的な分、苦手な人も多い。
香りが立ち過ぎると食事と合わせにくいという難点もある。その点、シャルドネは香りが比較的穏やかなので、嫌いという人は少なく、食事との相性もいい。
人気の理由は、もう一つ。これも香りが穏やかなことと関係するが、樽との相性がよいことだ。白ワインは、発酵が終わった後に樽に入れて一定期間熟成させる。そうすることで、ワインが少しずつ空気に触れて酸化反応を起こし、ナッツや薫製のような香りをまといやすい。
樽の底に沈んだ澱(おり)と反応し、焼き菓子のような風味を帯びることもある。新樽を使えば、バニラやココナツのような風味も加わり、ワインは複雑で重厚な味わいになり、余韻も長い。香りが穏やかなシャルドネは、こうした樽の香りを生かしやすい。
そのためシャルドネには、樽をあまり使わず、果実の風味を前面に押し出したフレッシュでフルーティーなものから、樽の利点を生かした複雑で重厚なタイプまで、多様なスタイルがあり、飲み手の好みに合わせることができる。その日の気分や料理によって、タイプを変えてみるのもおもしろい。
(ライター 猪瀬聖)
※価格はいずれも希望小売価格で税込み
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。
関連企業・業界