パソコンMAMORIO Inside 置き忘れたらスマホに警告
電車の網棚に社用パソコンを置き忘れてしまった――。テレワークで起こりがちな重大トラブルを事前に防げるパソコン「MAMORIO PC」が2021年1月にNECから発売された。
MAMORIO PCはスマートタグ「MAMORIO」の機能をソフトウエア的に内蔵しており、持ち去りや置き忘れがあればスマホがすぐにアラートを発する、これまでにない画期的なパソコンだ。万が一、パソコンを紛失してしまった際は、他のユーザーの位置情報などを利用して追跡が可能。さらに、MAMORIOは提携した鉄道会社の駅や商業施設の遺失物センターに同社のタグを検知する専用アンテナを設置しているため、そこにMAMORIO PCが届けられればユーザーにメールで通知が届く仕組みだ。
15年末にサービスを開始したMAMORIOのユーザー数や登録されたタグの数は、毎年30%増のペースで右上がりに増加。順調にシェアを獲得しているように思えるが、MAMORIO(東京・千代田) 代表取締役の増木大己氏は「当初の想定通りには増えていない」と語る。
これまでのMAMORIOは物理的なタグの販売が中心だったため、流通チャネルの影響を大きく受けていた。同社はスタートアップのため、大手メーカーのように販路を急速に広げることは難しい。「一部のアーリーアダプターが使っている『知る人ぞ知る』ツール止まりで成長に限界が見えてきた」(増木氏)と言う。
スマホが無料で「MAMORIO Inside」に
こうした状況を変える切り札が、MAMORIO PCのような「MAMORIO Inside」ブランドだ。あらゆる商品にMAMORIOの紛失防止機能を付加することを目的としたIoT(モノのインターネット)のブランドで、増木氏は「大事なものにMAMORIOを取り付けるのではなく、最初からMAMORIOが入っている商品を増やしていきたい」と語る。パソコンだけでなく、ソニーのスマートウオッチ「wena wrist」などMAMORIO Insideに対応した商品は今後も増える見込みだ。
手持ちのスマホを「MAMORIO Inside」のようにできる無料サービスも19年6月に開始している。MAMORIOの専用アプリに追加された「お忘れスマホ自動通知サービス」は、スマホに紛失防止機能を付加できる機能。MAMORIOのタグを購入しなくても、専用アプリをインストールすれば誰でも自動通知サービスを使えるようになる。「無料のサービスでまずは多くの人にMAMORIOの機能を知ってもらうことが狙い」(増木氏)だ。
MAMORIOのライバルとなるスマートタグは、今のところ「Tile」(Tile)くらいで、まだ数が少ない。しかし、21年にはアップルからスマートタグ機能を持った「AirTag」が登場すると一部で予想されている。増木氏は「もしアップルが参入すれば、スマートタグ市場そのものが活性化され、我々にとっては大きなチャンスになる」と期待する。
MAMORIOもカードタイプのタグを発売する。さらにアウトドアなどでも使える防水化オプションも検討するなど、一段の普及に向けて選択肢や用途の拡充を進めている。
(日経トレンディ 佐々木淳之、写真 高嶋一成)
[日経クロストレンド 2021年4月1日の記事を再構成]
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