「任せる」から「頼る」マネジメントへリクルートホールディングス執行役員・柏村美生さん

かしわむら・みお 1998年リクルート入社。29歳の時に『ゼクシィ』の中国進出を提案し現場責任者として、中国版ゼクシィ『皆喜』を創刊。帰国後、ホットペッパービューティ事業長、リクルートライフスタイルの執行役員を経て、2019年4月にリクルートマーケティングパートナーズ社長。2020年4月より現職。
かしわむら・みお 1998年リクルート入社。29歳の時に『ゼクシィ』の中国進出を提案し現場責任者として、中国版ゼクシィ『皆喜』を創刊。帰国後、ホットペッパービューティ事業長、リクルートライフスタイルの執行役員を経て、2019年4月にリクルートマーケティングパートナーズ社長。2020年4月より現職。

日本経済新聞社(東京・千代田)と女性向け動画配信のC Channel(Cチャンネル、東京・港)が立ち上げた働く女性を応援するメディア「newme」。金融や政治、教育など各分野のプロフェッショナルをゲストに招き、従来の概念にとらわれない生き方を選ぶために必要な情報を提供していきます。今回はリクルートホールディングス執行役員の柏村美生さんに、中国での挑戦やリーダーシップについて聞きました。

ゼクシィの事業を中国でスタート

――リーダーになるための学びはどこで得ましたか。

「大きな転機になったのは、29歳でゼクシィを中国で出すことにチャレンジしたときです。そのときの経験が私の経営観とかリーダーとしての素地を作ってくれたと思います。リクルートでは、従業員が自分で気付いた社会の課題に対してサービスを提案できる機会があります。私自身、ゼクシィの営業をやっていたときに海外へ持って行きたいと思い、提案してスタートしました。実はリクルートの初めての海外事業なんです」

――実際に中国に行っていかがでしたか。

「振り返るとめちゃめちゃエキサイティングで良い経験なんですけど本当に大変でした。中国へ行った2004年はWTOに加盟する前で、海外の企業が中国で一から雑誌やメディアを作ることなく、現地で取材して本を出す初めての企業がリクルートでした。全部検閲が入りますしルールが非常に厳しい中で本を出すチャレンジで、商習慣が全く違う国で中国のメンバーと仕事をするのは本当に大変な経験でした」

――中国へ行くにあたって迷いはありませんでしたか。

「ありませんでした。上海でカスタマーインタビューをしたときに、日本のゼクシィを中国のカップルに見せると食い入るように読んでいました。それだけ披露宴の情報がないんですよね。中国は情報があるのが当たり前ではまだなくブライダルの雑誌も本当になかった時代で、情報ってすごいんだなというのを感じました。絶対に役に立つし、ブライダルのマーケットもどんどん良いものになるのではないかと迷いはなかったです。結婚していたので旦那には相談して、単身赴任することになりました。最初は3年ぐらいかなと思っていましたが、6年間エキサイティングな毎日を過ごさせていただきました」

「任せる」から「頼る」のマネジメントへ

――文化や言語が違うメンバーとはどのようにチームを作り上げていきましたか。

「マネジメントの観点では本当に全ての失敗をしたと思うんですね。チームが崩壊するようなこともありました。中国に行くまでは自分は人の気持ちがわかる人だと思っていましたし、他人のことがよくわかる良いマネージャーになれると思っていましたが、ことごとくそれが崩れ去ったんですよね。そこですごく学んだことがあって、マネジメントスタイルが『任せる』から『頼る』に中国で大きく変わるんですよね。『任せる』マネジメントはゴールがあったらモニタリングのタイミングを決めてメンバーにお願いしますが、『頼る』マネジメントはゴールとやってはいけないラインを決めてそれ以外は全く要望しません」

「中国で何一つうまくいかない中で、私ひとりでは何にもできないことを痛烈に感じました。メンバーに頼ろうと決めたときに、人って頼られるとすごいパフォーマンスするんだなと。中国のメンバーたちがすごい楽しそうに自分のやり方でゴールにたどり着いていくのを経験して良いなと思いました。たまにメンバーに丸投げですねと言われるんですけど、日本に戻ってからも頼るマネジメントをしています」

――リーダーでありながらどのように頼るのですか。

「私の場合はできないことも多いので、自分たちが登りたい山に向かって自分が得意なことは最大限やりますけど、不得意な分野は得意な子にお願いします。チームでゴールにたどり着くことをすごく大事にしています。全部ができるリーダーはそんなにいないんじゃないかと思っています」

――チームの作り方のコツはありますか。

「居心地のいいチームというよりは、自分と違うものを持っているメンバーと働けているといいなと思っています。得意なことは助けられるが、不得意なことは助けてもらわないといけないので、得意分野が違うメンバーが集まることはすごく大事です。チームがスタートするときは行き違いがあるので、よく話し合っていくというプロセスが必ず入ります。違う感覚で物事を見ることはすごくいいことで、同じものを違う見方で見る仲間がいるというのは心強いことです。でも最初は同じものを違う見方をするので『なんでこういう感じになるんだろう』とお互いにあるので、少しずつ重ねていきます」

――結構時間がかかりませんか。

「やっぱり時間がかかります。だいたい、いま結構大きめな組織を持たせてもらうことが多いので、やっぱりいいチームになったなあと思うには1年くらいかかっちゃっているかもしれないですね。早めたいと思っていますが、まだまだ私の能力不足だと思っています」

反省はしても落ち込まない

――ぶれない軸を持ち続けるのは難しいですか。

「軸がぶれなかったかというとぶれたと思います。結局自分が大切にしたいことが大切にできているのかということを自問自答するようにしています。いろんな大変なことや、がっかりすることも仕事をしていればありますが、本当に自分が大切にしたいことさえできていれば他のことはいいんじゃんと思うことが私の中で暗示みたいにできるようになっていました」

――今でもがっかりすることありますか。

「がっかりしている場合ではないんですけど、人間なのでありますよ。自分たちが志していることに近づけなくてがっかりすることもあれば人との関係でもあります。私は反省するけど落ち込まないと決めているんですよ。今の立場で落ち込むとメンバーからすると迷惑でしかないというのもありますが、よく考えると落ち込んでもよいことが一個もないんですよ。仕事や回りに対してもネガティブで、落ち込んでもよいことないので、がっかりするようなことがあれば反省すべきことを見つけて、あとはそれをいただいて終わりにすると決めています」

――立ち直り方を知っていると強いですよね。

「これは本当にそう思います。立ち直り方は人それぞれで違うと思うんですけど、自分にとって必ずプラスの世界にいる方法を見つけると良いかもしれないですね。20代の時には本当に落ち込むし、結果的に回りにも自分にも良いことが何もありませんでした。なので落ち込まないって決めてからなんとかプラスの世界に常にいるという状態は保っています。向き合うかもう諦めるか。諦めるのも大事なことです」

(この企画は日経とC Channelが共同で展開しています)