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スエズ運河座礁で注目 「喜望峰ルート」の恐ろしさ

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ナショナルジオグラフィック日本版

スエズ運河で座礁したコンテナ船は、2021年3月29日にようやく離礁に成功した。しかし、立ち往生していた船の多くはさらなる遅延を避けるため、代替手段を選択した。いくつかの船は、南アフリカの喜望峰を回るルートへ向かい始めた。運河がふさがれていた間の損失額は、1時間当たり4億ドル(約440億円)に上るとみられている。

喜望峰を回るとなると、行き先によっては航海日数が少なくとも10日、航海距離は数千キロも延びる恐れがある。おまけに暴風や暗礁など、昔から喜望峰は船の墓場として恐れられてきた。

「何世紀もの間、喜望峰は海難事故が続発するスポットでした」と、南アフリカのケープタウンにあるアフリカ海洋海中研究所の所長で海運考古学者のブルーノ・ウェルツ氏は語る。「こちらを回るほうがはるかに危険ですから、リスクを計算したうえでの迂回です」

ウェルツ氏や他の研究者らは、アフリカ南部で発生した海難事故について研究を行い、南アフリカ沖でこれまで少なくとも2000の船が難破したと推定している。海岸線1キロにつき、1件発生している計算になる。その多くは、大航海時代にインドやアジアを目指したヨーロッパの船だった。

なかでも最初期の記録は「ソアレスの難破」で、16世紀に南アフリカ沖で初めて難破したポルトガル船の事故だった。その後も、ヨーロッパと東方の植民地を往復していた数百隻の船が、同じ海域で事故に遭っている。1647年には、オランダ船ハーレム号が南アフリカのテーブル湾で難破した。その生存者たちが築いた前哨基地が、今のケープタウンになった。

嵐の岬

喜望峰という名は、その過酷な歴史に端を発すると考えられている。1488年、ポルトガルの航海者バルトロメウ・ディアスが喜望峰を回ってインドへ到達する航路を発見した。伝説と事実が入り交じった記録によると、ポルトガルへ帰還後、当時の国王ジョアン2世に旅の報告をしたとき、ディアスは岬の周囲の状況があまりに厳しかったため、ここを「嵐の岬」と呼んでいた。

だが、実際に船に乗って風にもまれた経験のないジョアン2世は、ディアスの話よりもインドの市場へ到達できるというニュースに喜び、これを「喜望峰」と名付けるよう命じた。

ディアスの呼び名のほうがふさわしいと思った船長は多かったに違いない。統計的にも喜望峰近海は、何もない外洋に比べて船の沈没する確率が高い。北極海でタイタニック号が沈没する前年の1911年、客船ルシタニア号が、ケープタウンの灯台を大陸の最南端と勘違いし、船の舵(かじ)を大きく切りすぎて、陸地に衝突した。その前にも多くの船が陸地を見誤って事故に遭っていたため、後に灯台は南へ移された。

 1942年、米軍の輸送船トーマス・タッカー号が、処女航海で喜望峰の東にあるケープ・ポイント沖で座礁した。その現場は今では、シップレック・トレイル(難破船の歩道)と呼ばれるハイキングコースになっている。1965年、ウイスキーを積んだオランダ船が難破したとき、船長が巧みに船を操縦し、積み荷を守った話は有名である。さらに最近では、1994年にクレーン車を載せたフランスの巨大な荷船が岩に乗り上げてしまったことがある。回収するには大きすぎたため、船は放置されたままになった。

「吠える40度」と呼ばれる厳しい気象

ケープ半島周辺の気象が厳しいのは、南緯40度以南の地球を周回する強風のせいだ。この海域には風を遮る陸塊がほとんどなく、常に強風が吹いていることから、「吠える40度」と呼ばれている。さらに南へ行けば行くほどその強さは増し、南緯50度以南は「狂う50度」、60度以南になると「絶叫する60度」と呼ばれる。

船がどの方角を目指すかによって、風は味方にもなれば敵にもなる。激しい風は東へ向かう船を勢いよく後押ししてくれるが、逆方向に進もうとすると、数週間から、時には数カ月かかってしまうこともある。また、この強い風が南アフリカの喜望峰や南米最南端のホーン岬で陸塊にぶつかると、その動きが乱れ、船はあっという間に航路を外れてしまうことがある。

現代のコンテナ船

現代になって、喜望峰近海での船舶事故は大きく減少した。

1869年にスエズ運河が完成すると、喜望峰よりも安全で早く、安いルートとなった。また、GPS(全地球測位システム)ナビゲーションや気象予報などの技術が発展したおかげで、危険な海でも安全な航行が可能になった。船の位置や方向を安全に保つ、自動船位保持システムを取り入れている船もある。

だが、事故が完全になくなったわけではない。人的ミスや予想外の天候による事故は、今でも発生する。2003年、33個のコンテナを積んだ貨物船シーランド・エクスプレス号が、ケープタウンに近い砂州で座礁した。1万個以上のコンテナを積載できる大型船に比べると、33個はわずかな量だが、それが強風にあおられていかりを引きずったまま流された。事故の原因は、船員の対応が遅れたためと指摘された。事故が発生したのは、特に風が強い南半球の冬が終わろうとしていた8月だった。ここでは、強風の季節は3月に始まる。

次ページでも、「吠える40度」の呼び名がついた喜望峰航路の危険性を象徴する絵画や写真をご覧いただきたい。

(文 DANIEL STONE、訳 ルーバー荒井ハンナ、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2021年4月1日付の記事を再構成]

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