「エピソードを一つ紹介しましょう。ある地方都市に拠点をつくるかどうかを検討したとき、当初はその拠点に異動希望者がいませんでした。希望者がいないので結局、その拠点をつくらないことにしました。当社ではやりたいと思う人がいなければ部署を新設しないのです。その後、希望者が出たときに改めて拠点を設置することにしました」

――希望者がいなければ拠点も設置できないし、本人が希望しなければ人事異動も発令できないというのでは、会社運営が非効率になりませんか。

青野氏(中)は多様な人材から生まれるアイデアを生かす

「嫌々ながら異動させられた社員が最大のパフォーマンスを発揮するとは思えません。本人の希望に沿うことが結果として効率的になるはずです。ただ、社内の情報共有ができているからこそ、こうしたやり方が可能になっていることも事実です。当社では誰がどの会社で商談し、開発部門が何をしていて、顧客サポート部門にどんなクレームが上がってきているのかなどの情報をシステムで共有しています。社員が会社の状況を検索することが可能なのです。会社の上層部だけが重要な情報を握っている訳ではありません」

「もし、上層部のみが情報を得ている会社であれば、トップダウンで意思決定しなければならないでしょう。しかし、当社では一般社員でも『こんな組織が必要だ』という判断ができるのです。合理的に考えて何らかの組織が必要になったときは、誰かがやりたいと申し出るでしょう。その流れに任せている状況です」

社員の質問責任と上司の説明責任

「当社には質問責任という言葉があります。仕事をしていて疑問が生じたり、納得いかないことがあったりした場合には、先輩や上司、経営者などに質問しなければならないというルールです。聞かれた方には説明責任が発生します。こうして、理不尽に感じながらも会社のいうままに従う社員をなくすようにしています」

――受け身体質の社員は御社に向かないように思えます。

「そうかもしれません。たまに『何時までに会社に出社すればよいですか』と聞いてくる人がいますが、『それくらい自分で考えなさい』と返しますね。もちろん、単に突き放すだけではありません。迷っていることや悩みも社内で共有する『分報(ふんほう)』というシステムがあります」

「日々の出来事を報告するのが日報なら、分刻みで起きていることを随時書き込むという意味を込めて分報と名付けました。仕事もプライベートも含めて様々な内容をこのシステムに雑談のように書き込み合っています。これらの仕組みを通じ、分からないことを社員同士で教え合ったり、キャリア形成についてアドバイスをもらったりできます」

――働き方宣言や分報は他社にはない取り組みです。

「前例がないことを始めるのに私はあまり抵抗を感じません。これは学生時代から変わらない性格です。先生からやれと言われても自分が納得しないことについてはやりませんでした」

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