「買収で規模を拡大すること自体は経営戦略として悪いことだとは思いませんが、私にはそのスキルが足りませんでした。結果的に一連のM&Aは失敗。子会社の業績悪化を読み切れず、1年間に2回も業績を下方修正したこともあります」

M&A失敗で業績悪化、社内の雰囲気も悪く

「業績だけではなく、社内の雰囲気もどんどん悪くなっていきました。最も悪いときは離職率が28%になりました。毎月どこかの部署で誰かが辞めていくようなイメージです。マネジャークラスはそれぞれが別の方向を向いて仕事しており、お互いの部門を非難することが多くなっていきました」

「会社の雰囲気が悪くなる中で、私は社長を辞めたいと思いました。それどころか死んでしまいたいと思うようになっていました。そんなとき、コンビニエンスストアの本棚にあった本がふと目に留まりました。松下幸之助氏の名言を集めた書籍でした。手に取って読んでみると、そこに書いてあった『本気になって真剣に志を立てよう。強い志があれば事は半ば達せられたといってもよい』という言葉が胸に刺さりました」

松下電工(現パナソニック)を退社して創業した(後列右が青野氏)

「私は今、命を懸けて真剣に仕事しているだろうかと考えました。確かに頑張って状況を打開しようとしていましたが、命を懸けているとは言えませんでした。自分に足りなかったのは真剣さだと気付きました」

「思い返せば、私はそれまでほとんど苦労せずに生きてきました。松下電工(現パナソニック)に入社して3年目で社内ベンチャーを立ち上げ、その活動の中でネットの可能性を感じ、1997年に退社してグループウエアのソフト会社として独立しました。予想以上にソフトは売れ、起業後3年の2000年に東証マザーズ、02年に東証2部、06年に東証1部に上場しました。自分はやれば何とかなると思っていたのです」

「しかし、M&Aの失敗で今までの甘い考えでは通用しないのだと思い知りました。では、自分は何に対して真剣になるべきか。当社を創業したときのことを思い出しました。私が真剣になるのであれば、最初のプロダクトであるグループウエアしかないと思いました。絶対に成功させてやる。死ぬ気でやり抜くと、このとき覚悟を決めました」

「と言っても、この時点では頭で理解しただけでした。行動に落とし込むために『真剣』と書をしたためてホワイトボードに掲示し、毎日この仕事に命を懸けることを誓うようにしたのです」

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