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瀧内公美 家飲みのお供グラスに仕事精度上げるカップ

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NIKKEI STYLE

2020年、映画『火口のふたり』でキネマ旬報ベスト・テンの主演女優賞を受賞。今年は主演映画2本が公開されるなど、30代に入り "大人売れ"が加速している瀧内公美さん。「身の回りのものを大切にしたい」という彼女のお気に入りは、陶芸品のコーヒーカップと、琉球ガラスのグラスだった。

"おうち時間"を豊かにしたコーヒーカップとグラス

「20年の自粛期間に、家で過ごすことが増えて、どうしてもなんだか窮屈な感じがしてしまって。今できることの中でどうしたら豊かに暮らせるかなと考えていたとき、友人がくれたのが、このコーヒーカップでした。すごくキレイな色遣いですよね。サイズ感もちょうど良くて、手触りも少しざらざらとした質感で一癖あっていいんです。工房で一つひとつ手作りされたものらしく、同じものでも多少は違うのでオリジナリティーがあるところもいいですね。使うたびにふとその人を思い返すんですよね。

このいただきものをきっかけに、食器を集めるようになったんです。その1つが琉球ガラスのグラス。これも1点1点違うし、細かい泡がたくさん入ってるんです。見るたびに色が違って見えるんですよ。『こんなに深い色だったっけ』みたいな。日の当たり方で変わってくるのかもしれませんね」

グラスはお酒を入れて、"家飲み"で活躍。コーヒーカップは朝のお供になっているという。

「私、毎朝コーヒーを飲むんですよ。ミルで豆を挽(ひ)いて、ペーパーを使ってハンドドリップで淹(い)れてます。時間的には10~15分くらいあればできるんですけど、少し早起きしなきゃいけない。そこから、朝、時間に余裕を持つようになりました。コーヒーを飲みながら、今日やることを確認したり、台本を見直したり。私は忙しくなると大ざっぱになりがちなので、なるべく余裕を持って、一つひとつのことに対して準備だけは大切にやっていきたいタイプ。仕事の精度を上げるためにも、朝のコーヒータイムが役に立っています」

役作りのために「裏アカ」を作成

公開中の主演映画は、新人クリエイターの登竜門「TSUTAYA CREATORS' PROGRAM FILM 2015」で準グランプリに輝いた企画を映画化した『裏アカ』。木村大作、原田眞人といった名監督たちを助監督として支えた加藤卓哉監督の長編デビュー作となる。瀧内さんは、SNS(交流サイト)に匿名の裏アカウントを作って人生が激変していくアパレルショップ店長・伊藤真知子を演じている。

「SNSを題材にした、今の時代を切り取った映画です。私自身は普段SNSをあまり活用していないので、真知子とは程遠い生活なのですが、だからこそやりがいがあるかもって思いまして。あと、これからの新しい作家の方とお仕事をしてみたいと思っていたんです。今まで私がお世話になってきたのは、廣木隆一監督や荒井晴彦監督といった、映画界で名をはせた方々でした。作品のなかでは闘ってきましたけど、甘えてきた部分も大いにあると思うので、新しい才能と一緒に試行錯誤しながら作品を生み出してみたいと思っていたんです。

撮影は、大変でした。監督がこちらの意見を聞いてくださるからこそ、『このままでいいのかな?』と思う瞬間が何回もあって……。いつも、そういう葛藤の積み重ねなんですけどね。でも今回は自分でハッキリと決めなきゃいけない瞬間が多々あったので、よりしっかり考えて臨まないといけない。私にとっては、そこが大変でした」

役作りとして行ったのは、ショップ店員への取材やパーティーへの参加。また、SNSについても"体験"した。

「私はSNSとかけ離れた生活をしていて、ツイッターもインスタグラムもやっていないんです。だからまずアカウントを作って、『みんな、どんなことを書いてるんだろう?』と投稿記事やコメントを見たり、『裏アカって、本当にあるのかな』と調べたりしました。そのアカウントですか? オフィシャルでやったわけではないので……それこそ"裏アカ"です(笑)。これが不思議で、何の投稿もしなくても、フォローする人がいるんですよ。おかしいと思いません?『何を見て?』と思う。それで私は、怖くなりました。

この作品を経験して思ったのは、SNSはやっぱり難しい存在だということ。私は価値があるようで、ないものだと思ってるんです。だけど今はフォロワーの数などで自分の価値まで測られてしまうこともある。でも、それは虚像というか、自分であって、自分じゃないところがある……。そんななかで評価されながら生きるのは大変だろうなと思いました」

今欲しいのは、旅行できるひみつ道具

大学で教員免許を取得後、女優の道へ進んだ瀧内さん。『彼女の人生は間違いじゃない』(17年/廣木隆一監督)、『火口のふたり』(19年/荒井晴彦監督)など体当たり演技が必要な役柄にも果敢に挑み、評価を高めてきた。そんな日々の癒やしになっているのが、夜のお酒と、食器集めだ。

「夜のお酒? いや、朝かもしれませんよ(笑)。お酒って余裕がないと飲めないので、飲めるときは、ゆっくり飲んで癒やされています。ワインでも日本酒でも、何でもいただきますね。それこそ琉球グラスに入れて飲むと、キレイで本当に癒やされます

食器は、琉球グラスをきっかけに、イランやイスラエル、モロッコなどの民芸品を扱うお店でも買うようになりました。それがまたお手ごろで、1個300円くらいで買えたりするんです。ちょっとずつ食器棚に増えていく様がうれしいですね」

最近、買って良かったモノは、ヨガマットだという。

「20年に撮影でヨガをする機会をいただいて、先生に教えていただいたんです。それからヨガマットを買って、音楽を流しながら体をほぐすようになりました。簡易的なヨガなんですが、それでも精神を整えられて、集中力が高まった気もしています。

今、欲しいものですか? 海外に行きたい……と言いそうになったんですけど、モノの話ですものね。それなら……どこでもドア(笑)。身近なモノで生活を豊かに、とか言っておいて申し訳ないんですけど、どこでもドアで自由に旅へ出たいです」

瀧内公美
1989年生まれ、富山県出身。2012年から本格的に女優活動を開始し、14年の『グレイトフルデッド』で映画初主演。17年に『彼女の人生は間違いじゃない』に主演し、日本映画プロフェッショナル大賞新人女優賞や全国映連賞女優賞などに輝いた。20年には、『火口のふたり』(19年)でキネマ旬報ベスト・テン主演女優賞やヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞。主な出演ドラマに『恋はつづくよどこまでも』(20年)、『共演NG』(20年)、『大豆田とわ子と三人の元夫』(21年)など。主演映画『由宇子の天秤』が9月公開予定。

『裏アカ』

アパレルショップの店長として働きながらも、仕事もプライベートも満たされない毎日を送っていた伊藤真知子。あるときSNSに裏アカウントを作り、胸元を写した写真を投稿すると、フォロワーが急増して快感を覚える。やがて「ゆーと」と名乗るフォロワーと会った真知子は、彼に身も心も引かれるが……。監督・加藤卓哉 脚本・高田亮、加藤卓哉 出演・瀧内公美、神尾楓珠、市川知宏、SUMIRE、神戸浩、松浦祐也、仁科貴、ふせえり、田中要次 全国ロードショー中

(文 泊貴洋、写真 藤本和史)

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