河原に腰を下ろして、ボサノヴァを聞いている。
近くの桜の下では、小さな女の子と母親らしき人、その友人らしき女性が、広げたシートの上でお弁当を食べていた。
風が吹いて花びらが舞った。みんな、そろそろ今年の桜も見納めだなと、枝を見上げた。
桜の上の空は明るく、ちょうどイヤホンから流れてくる曲、「サー・マリーナ」の陽気な雰囲気がよく合っていた。軽快なリズムのボサノヴァの名曲で、一言でいうと、元気にしてくれる曲。
実はボサノヴァにハマったのは最近の事。家カフェの時にかける曲を探していて、小野リサさんのアルバムを持っていたことを思い出した。特に自然に体が揺れてしまう独特のリズムが魅力的だと思う。かと思えば哀愁たっぷりにギターとピアノが奏であったり。歌い方が優しいところも好きだ。
面白いことに、以前聞いた時よりも音が自分の中に入ってくる気がする。たしかに、時間の経過とは人を変えるものなのだな。自由にも不自由にも。だから心と体のバランスはとれるのだろうけどね。できれば自由の方の割合を多めに残していただけるとうれしいです。
長く座り過ぎたか。少し冷えてきた。そろそろ家に帰ろう。
いつもは一人で散歩する道に、今日は相棒が加わっていた。買ったばかりの自転車だ。
数時間前、いつもの道を歩いていた私は気が変わって、いつもより一つ先の橋を渡ることにした。すると橋の袂(たもと)に自転車屋さんがあったのだった。
行動範囲が広がるなあ、自転車があれば。
と思いながら店内に入り並べられている自転車を見ていくうちに、一台のママチャリに目が留まった。とてもきれいなペパーミントグリーンの車体で、買い物かごには手書きのポップが刺してあった。
大人気アシスト付き 最新2021モデル!
2021モデル!なのか…。
その文字を見ていたら、さっきまではあったらいいなあ、くらいだった自転車がものすごーく欲しくなってきた。もう絶対無くてはならない物なのだ、自転車は!になってきた。
ク、クレジットカードが使えるかどうか店員さんに聞いてみよう。けして安い買い物ではない。ワンクッション置いて少し冷静になろう。
「すみません。使えないのですが、隣のコンビニはATMがあります」
立地が、良すぎる…。