自分で単語の意味を深く探る

その方法とは、まずは無意識に日本語スキーマを使って英語を使おうとしていると認識すること、次に英語母語話者のスキーマを自分で探していくことが重要だと本書は説く。英語スキーマを探る具体的な方法が本書が提案する独習法で、ひと言で言ってしまえば「単語の意味の探求」だ。これをオンラインなどで簡単にアクセスできるコーパスを使って行う。コーパスとはさまざまなジャンルのテキストを集めたもので、一つの単語から多くの文例を見ることができる。そこから単語が使われる構文、一緒に使われることが多い単語、使われる頻度、文脈、意味の広がり、さらにその単語が属する意味のネットワークまで自ら探っていくのだ。そうすることで英語スキーマが徐々に体得されていく。

たいへんだと感じるか、面白そうと感じるかは読者それぞれだろう。しかし認知科学の知見から説かれているだけに納得感は強い。「先週は一段と売れゆきが良かったが、発売以来よく売れている一冊」と同店でビジネス書を担当する西山崇之さんは話す。

西川・三井住友銀行元頭取『仕事と人生』が1位

それでは先週のランキングを見ていこう。前回に続いて新書のベスト5を取り上げる。

(1)仕事と人生西川善文著(講談社現代新書)
(2)ルワンダ中央銀行総裁日記 増補版服部正也著(中公新書)
(3)人新世の「資本論」斎藤幸平著(集英社新書)
(4)ケーキの切れない非行少年たち宮口幸治著(新潮新書)
(5)英語独習法今井むつみ著(岩波新書)

(紀伊国屋書店大手町ビル店、2021年3月22~28日)

1位は前回紹介した西川善文・三井住友銀行元頭取の一冊。金融街でもある大手町では断トツの売れゆきだ。2位は原著刊行が1972年、増補版の刊行も2009年という古い本だが、SNS(交流サイト)などで話題になり、売れているという。NHKの朝のニュースが若者の共感を集めているロングセラーとして取り上げたことで、さらに売れゆきが伸びた。3位は、気候変動問題の解決策をマルクスの新解釈を提示しながら論じた20年9月刊の新書。4位は人口の十数%いるとされる認知力の弱い人々に焦点を当てた児童精神科医の本。19年7月刊だが、20年のベストセラーとして再び注目されている。今回紹介した『英語独習法』は5位だった。

(水柿武志)

英語独習法 (岩波新書 新赤版 1860)

著者 : 今井 むつみ
出版 : 岩波書店
価格 : 968 円(税込み)

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