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島津亜矢さんとのデュエット 至福のとき(井上芳雄)

第90回

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NIKKEI STYLE

井上芳雄です。僕はもともと誰かと一緒に歌うのが好きなのですが、年々その気持ちが強くなっています。最近は自分のラジオ番組などでデュエットする機会が続いていて、うれしい限りです。ほかの人と声をあわせると、理屈抜きで幸せな気分になれます。2人の声が溶けあったとき、1人で歌うのとはまた違った次元にいける喜びを味わえるからです。

僕のラジオ番組『井上芳雄 by MYSELF』(TBSラジオ)では、今までゲストに来ていただいた方と一緒に歌ってきたのですが、この1年くらいは新型コロナウイルスの感染対策でそれができませんでした。ようやくゲストを呼べるようになって、その最初(3月14日放送)が演歌歌手の島津亜矢さんでした。久しぶりにラジオのブースの中で一緒に歌えるだけでもうれしいのに、そのお相手が島津さんとは光栄なことです。

島津さんは演歌歌手ですが、ポップスや洋楽も歌われます。カバーアルバムのシリーズも出されていて、その最新作『SINGER7』ではミュージカル映画『グレイテスト・ショーマン』の主題歌『ディス・イズ・ミー』も歌われています。黒人の女性シンガーが地声を高いところまで張り上げて歌う曲で、そこまで高いキーで強い音を出せる日本人の女性はあまりいないと思うのですが、島津さんはそれができるのがすごい。

ご自身でも演歌とポップスをそれほど区別してないとおっしゃっていて、どんな曲でもジャンルレスに歌える、本物の歌手です。ミュージカル俳優はお芝居をしながら歌いますが、歌手は歌だけでその世界を伝えるので、歌の説得力や存在感が違います。なかでも演歌の方は、みなさん声が個性的。島津さんにはその歌声の強さや魅力があって、やっぱり日本でトップクラスの歌手だと思いました。

番組では、僕が出演していたミュージカル『ルドルフ ザ・ラストキス』からオーストリア皇太子ルドルフと男爵令嬢マリーが歌う『サムシング・モア』をデュエットしました。島津さんは、曲を聴いて覚える耳コピーのスタイルなので、まず僕のパートを歌ったものを録音して島津さんにお送りして、それにあわせて練習してくださいました。完璧に覚えてらしたのはさすがです。心情の表現力も素晴らしいし、ラジオのブースの中でも全力で歌ってくださった様子にも感動しました。

デュエットの喜びは理屈じゃなくて、声を重ねあうことですごく幸せな気持ちになれます。声の響きはみんな違うのですが、一緒に歌うときは、お互いが歩み寄るというのかな。ビブラートの幅が小さな人もいれば、大きな人もいるし、ノンビブラートの人もいる。ピッチも人によって高めにとったり、低めにとったりで、リズムもそう。僕もそうですけど、歌声にはいろんな個性や癖があって、それをお互いにあわせながら一緒に歌うのが楽しいのです。歌いながら会話している感じでしょうか。

うまい人と歌うと、どれが自分の声か分からないというか、本当に溶けあって、1人で歌うよりもうまく歌えて、違う次元に引っ張ってもらえるような感覚になります。きっとお芝居をするのも、楽器を演奏するのもそうなのでしょうけど、1人ではいけないところにいけるんですね。島津さんとのデュエットも、島津さんの声に自分の声をあわせているのが至福のときでした。

翌週の3月21日の放送回には、ミュージカル俳優の浦井健治君がゲストに来てくれて、Kiroroの『Best Friend』をデュエットしました。浦井君がニューアルバム『Piece』でカバーしている曲なので、デュエットは彼がメインで、僕はサビでハモりました。ラブソングを男女で歌うのとはまた違う雰囲気で、自分たちがベストフレンドだと言っているような気持ちにもなったから、照れくささも。逆に言えば、普段の会話では言えないことも歌なら言える。そんな音楽の力もあるんだなと。もっとも、僕と浦井君がベストフレンドかどうかは分かりませんけど(笑)。

男性同士のデュエットで困るのは、曲が少ないこと。ミュージカルでもすぐに思い浮かぶのは何曲かしかなくて、『エリザベート』で黄泉の帝王トートと皇太子ルドルフが歌う『闇が広がる』が定番でしょうか。魔法のような曲で、どんなコンサートでも、歌えば必ず盛り上がります。男性同士のデュエットは、同じ人を愛してしまって、その人への思いを2人で歌うとか、お互いがケンカをしているという設定が多いのですが、『闇が広がる』は男性が男性を誘惑するシチュエーションが独特です。怪しいラブソングみたいなところもあるし、唯一無二の曲だと思います。

 僕は、どちらの役も長年演じて身体に染みついているので、歌うときは歌詞を間違えないように気をつけています。コンサートでも、相手との関係性で僕がトートをやったりルドルフをやったりするし、途中で入れ替わるときもありますから。この曲の魅力は、メインのメロディーで上のパートを歌う人のキーがすごく高いこと。男性にはけっこう高くて、しかも何回も出てくるから、余裕では歌えない。全力で歌う感じになるのですが、きっとそれが、追い込まれたルドルフの状況を表すのにいいんですよね。トートとルドルフのどっちが上でどっちが下かは、国やバージョンによって違うし、2回目のサビを交換するときもあります。上のパートは精いっぱい歌わないといけないし、下のパートは相手を支えるというか、ずっとハモっているので、どちらを歌うかで役割が全然違います。

僕がお薦めしたいデュエットソングは、まず『ミス・サイゴン』の『世界が終わる夜のように』。ベトナム戦争の最中、アメリカ兵クリスとベトナム人キムが歌う、すてきなナンバーです。クリスを演じていたとき、けいこ中によく言われたのは、2人は崖っぷちにいて、落ちる寸前だけど、抱き合って支えあいながら歌ってるんだと。日常ではないシチュエーションだからこその激しく熱く燃え上がる愛なので、歌うのにもすごくテンションが必要なのですが、音楽がそこまで持っていってくれる曲です。

名作だと『ウエスト・サイド・ストーリー』の『トゥナイト』ですね。対立する非行グループに属するトニーとマリアがお互いの気持ちを確かめあうラブソング。レナード・バーンスタイン作曲なのでクラシカルな要素があって、曲も素晴らしいのですが、そこに至るまでの劇中の流れが、もう歌い出すしかないだろうという自然な展開です。気持ちが自然に高ぶっていって歌になるというお手本のような曲なので、ミュージカルナンバーを代表するデュエットソングではないでしょうか。

ラブソングはたいてい盛り上がって終わるのですが、『トゥナイト』は途中で静かになったりもします。気持ちが高ぶった後に、「今日は帰らなくちゃいけないから、もうお別れ」というので1回静かになり、その中でも熱い気持ちを歌う。その構成が曲として素晴らしい。周りに気づかれないように、声を重ね合うデュエットの美しさを堪能できます。

カラオケでデュエットすることもあると思いますが、歌うときのポイントは相手の声をよく聴くこと。どうしても自分の声が気になると思うのですが、そうじゃなくて相手に集中する。そこがデュエットの面白さで、そのときに相手の人間性みたいなことまで分かる気がします。お芝居をするときも、相手が言っているセリフに集中しろと言われますし、ピアノの伴奏も、いい伴奏者は自分の手元を見てなくて、歌手の方を見ています。デュエットも、そんな気持ちで歌うといいのではないでしょうか。

逆に、テレビの歌番組でデュエットソングを見るときは、2人が歌の世界の人物にどれだけなりきっているかに注目すると面白いと思います。歌っている瞬間は、歌い手はお芝居をしているので。4月3日に放送される『映画音楽はすばらしい!II』(NHK BSプレミアム/BS4K、午後9時~)という歌番組では、ダイアナ・ロスとライオネル・リッチーが歌った『エンドレス・ラブ』を平原綾香さんとデュエットしました。ブルック・シールズ主演の映画『エンドレス・ラブ』の主題歌です。そのときも、終わることのない愛にひたっている男女を平原さんと一緒に演じている感覚で、運命共同体になったような一体感に包まれながら歌っていました。

デュエットのアルバムやコンサートへの夢

フランク・シナトラやバーブラ・ストライサンド、トニー・ベネットといった海外の大物歌手は、いろんな相手とデュエットしたアルバムを出しています。僕はそういうアルバムが大好きです。坂本真綾さんも、3月に『Duets』という7人のアーティストとデュエットしたアルバムを出しました。僕も『星と星のあいだ』という、真綾さんが作詞作曲してくれた新曲でデュエットさせていただきました。僕と真綾さんが男女で歌っているというよりは、眠れない夜に一緒に寄り添うよと歌う、今までにない形のデュエットソングです。ラブソングだけじゃなくて、いろんなパターンの曲が聴けるアルバムということなので、すてきだなと思いました。真綾さんは4月4日にラジオ番組『井上芳雄 by MYSELF』にゲストで来てくれて、その曲を生で一緒に歌ってくれます。

僕もこれだけデュエットが大好きなので、デュエットアルバムを出したり、デュエットだけのコンサートをしてみたいですね。実際にやるとなると、相手を探したり、曲を選ぶのが大変かもしれませんが、一緒に歌うことで仲良くなったり、コミュニケーションがとれたりすることもあるでしょう。ぜひ実現させたいものです。

『夢をかける』 井上芳雄・著
 ミュージカルを中心に様々な舞台で活躍する一方、歌手やドラマなど多岐にわたるジャンルで活動する井上芳雄のデビュー20周年記念出版。NIKKEI STYLEエンタメ!チャンネルで月2回連載中の「井上芳雄 エンタメ通信」を初めて単行本化。2017年7月から2020年11月まで約3年半のコラムを「ショー・マスト・ゴー・オン」「ミュージカル」「ストレートプレイ」「歌手」「新ジャンル」「レジェンド」というテーマ別に再構成して、書き下ろしを加えました。特に2020年は、コロナ禍で演劇界は大きな打撃を受けました。その逆境のなかでデビュー20周年イヤーを迎えた井上が、何を思い、どんな日々を送り、未来に何を残そうとしているのか。明日への希望や勇気が詰まった1冊です。
(日経BP/2970円・税込み)
井上芳雄
 1979年7月6日生まれ。福岡県出身。東京藝術大学音楽学部声楽科卒業。大学在学中の2000年に、ミュージカル『エリザベート』の皇太子ルドルフ役でデビュー。以降、ミュージカル、ストレートプレイの舞台を中心に活躍。CD制作、コンサートなどの音楽活動にも取り組む一方、テレビ、映画など映像にも活動の幅を広げている。著書に『ミュージカル俳優という仕事』(日経BP)、『夢をかける』(日経BP)。

「井上芳雄 エンタメ通信」は毎月第1、第3土曜に掲載。第91回は4月17日(土)の予定です。

夢をかける

著者 : 井上芳雄
出版 : 日経BP
価格 : 2,970 円(税込み)

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