行動変容の事情に詳しいコンサルティング大手、アクセンチュア(東京・港)の藤井篤之マネジング・ディレクターは「人々に個別最適なメッセージを配信できるなど、デジタル技術が行動変容のあり方を大きく変えつつある」と話しています。

藤井篤之アクセンチュア・マネジング・ディレクター「活用広がる行動変容、理解の深化も必要」

 デジタル技術の発達に伴って、行動変容の手法や活用分野がどう変わろうとしているのか。行動変容の内外のケースに詳しいコンサルティング大手、アクセンチュアの藤井篤之マネジング・ディレクターに聞きました。

――行動変容というと、人々の自主性に働きかけて「良い行動」をとってもらうこと、という印象が強いのですが、そもそも行動変容の定義は何でしょうか。

藤井 篤之アクセンチュア・マネジング・ディレクター

「コロナ下での望ましい行動とか、健康的な生活習慣を促すとか、いわゆる良い行動をさせることを指して行動変容という言葉を使うことが多いのは確かです。しかし実際には行動変容は、良い方向にせよ悪い方向にせよ人の行動を変えることを指します。例えば振り込め詐欺のような犯罪は、高齢者の行動を巧妙に変容させているわけです。また、企業は自社の商品を買ってもらうため消費者心理に働きかけますが、こうした広告・マーケティングもまさに行動変容の例です。人の心に働きかけて、意識的または無意識的な心の変化によって行動を変えさせる試みはすべて行動変容といえます」

――行動変容へのデジタル活用例として、どのような試みに注目していますか。

「シンガポールや中国などで導入された新型コロナ感染症の対策アプリのような試みは、今後大きな流れになると思います。人の行動を追跡したり、行動内容をスコア化したりするやり方は、中国のような政治体制の国ならではのものと思われていましたが、パンデミックを機に様々な国が注目しているというのはやはり大きな変化だと思います」

「国内では、子宮頸(けい)がんの原因となるヒトパピローマ(HPV)ウイルス向けワクチンの啓発活動を進めている『みんパピ!みんなで知ろうHPVプロジェクト』に、行動変容をもたらすコミュニケーション戦略の面で注目しています。このプロジェクトは、日本でHPVワクチンの接種率が低いことに危機感を持った医師らが始めた活動です。行動科学の専門家の協力を得て、医師からのメッセージや著名人の対談動画など、関心を呼びそうなコンテンツの形式や流すメディアを戦略的に選択して、効果的に伝える工夫をしていると聞いています」

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