日経ナショナル ジオグラフィック社

2021/4/19

6590万年前に2種のプルガトリウスがいたという事実は、プレシアダピス目の系統が白亜紀まで遡れることを示している。そうだとすると、私たちの祖先は大量絶滅をどうやって生き延びたのかという疑問が生じる。

科学者たちは以前から、初期の霊長類がほかの哺乳類と違っていた点の1つは、果物を好んで食べることではないかと考えていた。研究者たちは今回、初期の霊長類の食べ物を、彼らと共存していたほかの動物の食べ物と比較した。

当時の小型哺乳類の多くが昆虫の外骨格をかみ砕くための長くとがった歯をもっていたのに対し、プルガトリウスは、果物などの植物性の食べ物をすりつぶすのに適した、比較的短く、丸みを帯びた歯をもっていた。チェスター氏の2015年の研究も、これらの初期の霊長類が、地上の捕食者を避けながら樹上の好物に手を伸ばすことができた可能性を示唆していた。

ウィルソン・マンティラ氏によると、この時代の果実は比較的小さく、木の枝の先端に固まって実っていたという。白亜紀末の大量絶滅の後、果実が大きくなったのと同時期にプルガトリウスの近縁種が爆発的に増加した。プレシアダピス目は、白亜紀の終わりから約32万8000年後~84万7000年後の間に、現在の北米にあたる地域に広がって多様化し、ヘルクリークの全動物相の約25%を占めていた。

「これは共進化の物語です。植物は、果肉が多く、大きな種子が入ったおいしい果実を霊長類に提供し、木の上を移動する霊長類は(排せつによって)植物の種子を散布したのです」とチェスター氏は話す。

樹上生活は、跳躍能力や、枝から枝への距離の推定に役立つ前方を向いた目など、現在のサルに近い形質をもつ霊長類の進化を促した可能性がある。「これらは第2の段階です」とチェスター氏は言う。「その前にまずは木に登り、枝先になっている果物を食べられるようにならなければなりません」

プレシアダピス目とそれより後の霊長類との間には、まだミッシングリンク(2つのグループをつなぐ未知の動物)がある。チェスター氏は、「運がよければ、私が生きている間に見つかるでしょう」と言う。「あるいは、私たちが完全に間違っていることを示す化石が見つかるかもしれません」

霊長類の原型

霊長類の進化については、まだ多くの謎が残されている。例えば、このリスに似た木登りをする霊長類の系譜はどこで始まり、どのようにして現在の大型類人猿へと進化していったのだろうか?

その答えのいくつかは、もうすぐ見つかるかもしれない。プルガトリウスの化石はまだ100点ほどしか記載されていないが、クレメンス氏がヘルクリークでの調査で見つけた歯や顎骨の破片は、まだ調べられていないものが1500点もあるからだ。

クレメンス氏は2020年11月17日、今回の論文の発表を待たず、がんのために88歳で死去した。米リーキー財団からの助成金を得たチェスター氏とウィルソン・マンティラ氏は、クレメンス氏が見つけた化石を調べるほか、古生物学博物館の化石コレクションからプルガトリウスの骨格のほかの部位を探すことを計画している。

(文 AMY MCKEEVER、訳 三枝小夜子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年3月29日付]

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