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霊長類は恐竜を見ていた 最古の化石発見で説を裏付け

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ナショナルジオグラフィック日本版

これまでで最古の霊長類の化石が発見された。2021年2月24日付で学術誌「Royal Society Open Science」に掲載された論文によると、調査した歯のいくつかは新種と判明、「プルガトリウス・マッキーベリ(Purgatorius mckeeveri)」と名付けられた。

この動物は、現在の霊長類の先駆者となる小型の哺乳類で、今から6590万年前に生息していた。小惑星の衝突により、恐竜など地球上の生物の約4分の3が死滅した大量絶滅から、わずか10万年後のことだ。こうした初期の霊長類の仲間が、ゴリラ、チンパンジーなどの大型類人猿や、最終的にはヒトへとつながる最初のサルの系譜を生み出した。

「私たちの進化に対する見方を再編する発見です」と、論文の筆頭著者で初期の哺乳類を研究している米ワシントン大学の生物学教授グレゴリー・ウィルソン・マンティラ氏は語る。

この発見は、霊長類の祖先が恐竜と共存し、大量絶滅を生き延びたとする説を補強する。今回、既知の別種の霊長類「プルガトリウス・ジャニサエ(Purgatorius janisae)」の歯も見つかっており、同じく6590万年前に生息していたことがわかった。この時代に2種の霊長類が存在していたとすれば、それらの祖先となる未知の動物がもっと前の時代に存在していたはずだ。

博物館の引き出しに眠っていた手がかり

2003年、当時大学院生だったウィルソン・マンティラ氏は、米カリフォルニア大学古生物学博物館の収蔵品を調べていたとき、小瓶に入った歯の化石を取り出し、顕微鏡で観察してみた。歯は短く、先端がわずかに丸くなっており、氏が学位論文のために調べていたどの哺乳類のものでもなかった。

「まだ記載されていない新種に違いないと思いました」と、氏は振り返る。だが、ほかの論文や就職活動に追われ、本格的な研究ができないままになってしまった。

今回の論文の共著者である古生物学者の故ウィリアム・クレメンス氏は、新たに報告されたプルガトリウスの歯を含む5万点の化石を発掘した人物だ。氏は小型哺乳類の進化を専門とする化石ハンターで、1970年代からずっと米国モンタナ州北東部のヘルクリーク累層を調べていた。ウィルソン・マンティラ氏は、2002年に引退したクレメンス氏の最後の学生だった。

ヘルクリーク累層は、非鳥類型恐竜が絶滅した原因や、その後の生物の進化を理解するための重要な手がかりを与えてくれる。この場所の岩石には、大量絶滅の200万年前から約100万年後までの生命の歴史が刻まれているからだ。大量絶滅の前後両方の化石が見つかる場所は、世界でも数少ない。

クレメンス氏は、小惑星の衝突が恐竜以外の動物にどのような影響を及ぼしたかを調べることで、6600万年前の出来事を解き明かしたいと考えていた。ウィルソン・マンティラ氏はクレメンス氏について、「彼は、この生命史のターニングポイントを調べるために、膨大な化石ライブラリーを構築したのです」と語る。そして、そのライブラリーの中に、人類へとつながる進化をひもとく重要な手がかりがあった。

霊長類の系譜をたどる

霊長類の起源については2つの考え方がある。1つは、霊長類の系譜は5600万年前ごろに始まったとする考え方だ。現在の霊長類と同じ特徴をもつ動物が化石記録に現れるのがその頃だからだ。

もう1つは、もっと古いプレシアダピス目まで遡れるとする考え方だ。プレシアダピス目は140種以上の古代種からなる哺乳類で、現在の霊長類と同様、果物をすりつぶすのに適した歯と、木の枝から枝へ移動するのに適した骨格をもつ。しかしプレシアダピス目は、現在の霊長類のような前方を向いた目や大きな脳をもたないため、真の霊長類であるかどうかについては論争がある。

今回の論文の共著者である米ニューヨーク市立大学ブルックリン校の生物人類学者スティーブン・チェスター氏は、「私が解明したいのは霊長類の起源です」と語る。「霊長類であることがはっきりしているものを研究することにはあまり興味がありません」

1965年、プレシアダピス目の最古の属、プルガトリウスの化石が発見された。それは6300万年前の歯の化石だったが、のちに発見された化石により、プルガトリウスの存在は6500万年前にまで遡れることがわかった。

だがこれまで長らく科学者たちは、プルガトリウスはさらに古い時代まで遡れるのではないかと考えてきた。現在の霊長類の進化モデルや遺伝子研究から、霊長類の最初の仲間は約8150万年前の白亜紀に登場したと示唆されている。だが、この時代の化石証拠が少ないため、古生物学者はこの説の正しさを確認できずにいる。

2009年の古脊椎動物学会でチェスター氏がクレメンス氏と初めて会ったとき、プルガトリウスの化石は歯と顎骨の破片しか見つかっていなかった。チェスター氏がプルガトリウスに興味をもっていることを知ったクレメンス氏は、博物館のコレクションの中から標本を探してみるように誘った。

2012年、チェスター氏はコレクションの中の小さな化石の破片を顕微鏡で観察し、それがプルガトリウスの足首の骨であることを突き止めた。氏が2015年にクレメンス氏らとともに学術誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に発表した研究は、この関節の可動性を分析し、プルガトリウスが木々の間を効率よく移動できた可能性があることを明らかにした。そこから霊長類の初期の祖先の姿が浮かび上がってきた。

大量絶滅を乗り越えて

2018年、すでにウィルソン・マンティラ氏は後悔していた。自身も2003年にプルガトリウスについての重要な発見をしたはずなのに、さまざまな事情で放っておいたからだ。だが、ついにその歯の化石の研究を再開し、チェスター氏に分析の協力を依頼した。

放射年代測定の結果、この標本は6600万年前に白亜紀が終わってから10万5000年~13万9000年以内のものである可能性が高いことがわかった。霊長類の化石としては知られている限り最古だ。

研究チームは、ヘルクリークで見つかったプルガトリウスの顎骨の破片を何十点も調べた結果、既知のプルガトリウス・ジャニサエのほかに新種も発見したと確信した。新種の学名は、クレメンス氏らに所有地での作業を許可してくれたモンタナ州の牧場主にちなんでプルガトリウス・マッキーベリとした。

6590万年前に2種のプルガトリウスがいたという事実は、プレシアダピス目の系統が白亜紀まで遡れることを示している。そうだとすると、私たちの祖先は大量絶滅をどうやって生き延びたのかという疑問が生じる。

科学者たちは以前から、初期の霊長類がほかの哺乳類と違っていた点の1つは、果物を好んで食べることではないかと考えていた。研究者たちは今回、初期の霊長類の食べ物を、彼らと共存していたほかの動物の食べ物と比較した。

当時の小型哺乳類の多くが昆虫の外骨格をかみ砕くための長くとがった歯をもっていたのに対し、プルガトリウスは、果物などの植物性の食べ物をすりつぶすのに適した、比較的短く、丸みを帯びた歯をもっていた。チェスター氏の2015年の研究も、これらの初期の霊長類が、地上の捕食者を避けながら樹上の好物に手を伸ばすことができた可能性を示唆していた。

ウィルソン・マンティラ氏によると、この時代の果実は比較的小さく、木の枝の先端に固まって実っていたという。白亜紀末の大量絶滅の後、果実が大きくなったのと同時期にプルガトリウスの近縁種が爆発的に増加した。プレシアダピス目は、白亜紀の終わりから約32万8000年後~84万7000年後の間に、現在の北米にあたる地域に広がって多様化し、ヘルクリークの全動物相の約25%を占めていた。

「これは共進化の物語です。植物は、果肉が多く、大きな種子が入ったおいしい果実を霊長類に提供し、木の上を移動する霊長類は(排せつによって)植物の種子を散布したのです」とチェスター氏は話す。

樹上生活は、跳躍能力や、枝から枝への距離の推定に役立つ前方を向いた目など、現在のサルに近い形質をもつ霊長類の進化を促した可能性がある。「これらは第2の段階です」とチェスター氏は言う。「その前にまずは木に登り、枝先になっている果物を食べられるようにならなければなりません」

プレシアダピス目とそれより後の霊長類との間には、まだミッシングリンク(2つのグループをつなぐ未知の動物)がある。チェスター氏は、「運がよければ、私が生きている間に見つかるでしょう」と言う。「あるいは、私たちが完全に間違っていることを示す化石が見つかるかもしれません」

霊長類の原型

霊長類の進化については、まだ多くの謎が残されている。例えば、このリスに似た木登りをする霊長類の系譜はどこで始まり、どのようにして現在の大型類人猿へと進化していったのだろうか?

その答えのいくつかは、もうすぐ見つかるかもしれない。プルガトリウスの化石はまだ100点ほどしか記載されていないが、クレメンス氏がヘルクリークでの調査で見つけた歯や顎骨の破片は、まだ調べられていないものが1500点もあるからだ。

クレメンス氏は2020年11月17日、今回の論文の発表を待たず、がんのために88歳で死去した。米リーキー財団からの助成金を得たチェスター氏とウィルソン・マンティラ氏は、クレメンス氏が見つけた化石を調べるほか、古生物学博物館の化石コレクションからプルガトリウスの骨格のほかの部位を探すことを計画している。

(文 AMY MCKEEVER、訳 三枝小夜子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年3月29日付]

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