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声優・林原めぐみ 演じた多くの役からもらったもの

連載 吉田尚記の声優核心バイオグラフィーN

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NIKKEI STYLE

日経エンタテインメント!

ニッポン放送の吉田尚記アナウンサーが声優に話を聞く日経エンタテインメント!の人気連載をNIKKEI STYLEで紹介します。今回のゲストは、『スレイヤーズ』のリナ=インバース役や『エヴァンゲリオン』シリーズの綾波レイ役など多くの代表作を持つ林原めぐみさんです。

◇  ◇  ◇

声優アーティストの第一人者としても知られる林原めぐみさんが、自身の誕生日でもある3月30日にはアーティストデビュー30周年を記念したベストアルバム『VINTAGE DENIM』を発売しました。

今回お話を伺うにあたり、林原さんの演じてきたキャラクターを振り返ると、自分の主張をしっかり持っているキャラクターが多いなと感じました。ジェンダーの話といいますか、男性と女性では生きていくなかで気づくことが違うと思うのですが、1つの共通した哲学みたいなものが、役の面でも林原さんご自身もあるように感じられます。

「失礼を承知で、『哲学は頭の固い暇な男のもの、女があれこれ論じていたらその間に赤子が死ぬ。』という昔の女性の言葉があるんですけど、哲学をどう捉えるかにもよりますが、考察や裏付けと同時に、より本能的なものが演じる上では必要な気もします。

リナやレイちゃん、みよ吉(『昭和元禄落語心中』)だったり、たくさんのキャラクターを演じていくなかで、役の男女にかかわらず、私自身すごく恩恵をもらっているのは事実です。もうひと頑張りすることや、生きていく上で。

それを言葉にしてみんなに伝えたくなって、『スレイヤーズ』をきっかけに、より多く詞を書くようになりました。アニメを離れても、その歌そのものから『元気をもらった』『受験を乗り越えられた』という反応を見て、"頑張る"という作業は自分から湧いてきたものだけじゃなくて、他者からの背中押しが自分を鼓舞する材料として、この時代には必要なのかもしれないなと思ったんですよね。

また、アニメの世界から私がもらったありがたい力や思考回路、基点は、親子、兄弟、恋人、友達などいろいろな関係性など、現実で生かせる場面がたくさんあるとも感じていて。吉田さんに言っていただいたジェンダーというか性別も年齢も関係なく、『今、自分がやりたいと思うことをどうやったらやれるようになるか』、そんな道をどうしたら考えられるようになるかなといったことを伝えたいな、という気持ちは非常にありますね」

そうじゃないよ、きっと、という余白が私の仕事

僕もアニメからもらったものがすごく多いんですが、林原さんは声優としての「正解」を持っていらっしゃる気がします。

「正解としてしまうとそういうものになってしまうから、そうじゃないよ、きっと、という余白が私の仕事な気がします。10人が10人感動するような自分の人生に刻むようなものですら、小指1つで覆してしまうようなことが、私の仕事なのかな。言ってみればいつも白という感じで、裏は黒。両方ないと思考が偏るというか。

絶対的な答えはないと思うんですよ、数学以外。答えは十人十色でいい。常に正解を求める人になってしまったら、もうそれはエンタテインメントではないと思うので、『そういう考えもあるよね』というところにいないとね。ヒットしたから正解ではないし、今、全く話題にならなくてもすごくいい作品はありますし。

だから世の中のマーケティングという線は他の方に任せて、そこに自分はいない感じです。いつでもドロドロで、サラサラで、いつでも何にでもなれる存在であるべきだと思っています」

3枚組記念アルバムを発売

3月にはベストアルバム『VINTAGE DENIM』を発売されて、4月からは完全新作アニメ化される『SHAMAN KING』で20年ぶりにアンナを演じるんですね。

「デビュー当時はキャラソンだったり声優が歌うことが爆発的に増えた時代で、その爆風から逃れるために、キングレコードさんと契約したんですけど(笑)。懐かしいですね。

今回のベストアルバムは3枚組になっているんですけど、ディスク1の"do your best"はアニメと共に生きたからこそできた、アニメ主題歌を集めた1枚。ディスク2の"everyday life"はラジオを長くやってきたからこそ作れた、日常的な楽曲を集めました。

そしてディスク3の"good sleep"はもうそのまま寝る前に聴いてほしくて。コロナの自粛期間中にYouTubeをたくさん見たんですけど、世の中の人たちが、モニターに日々直結しながら、なんだか疲れているのかな…って感じてしまって。寝るというのは、心にも体にも大切な時間。だからこそ今この時代に必要な1枚かなと。聴きながら寝ていただいて正解です(笑)。

『SHAMAN KING』は私もまさか!という感じですが、続投のお話をいただけて。前回のアニメ化同様OPとエンディングも担当しているので(4月14日にシングル『Soul salvation』としてリリース)、そちらも聴いていただければうれしいです」

VINTAGE DENIM
記念ベストアルバム『VINTAGE DENIM』を発売中。「私らしさはアップデートしていくもの。1番の歌詞は10代の人に、2番の歌詞は20代以上の方に聴いてもらいたい」(林原)という『DENIM』など新曲2曲も収録。ブックレットには林原が好きだという私服のデニム姿が。3300円(税込み)/キングレコード
お会いしてみて[吉田尚記]
お話を伺って、とてもまっとうな方だなと思いました。声優界の代表という立場を背負い続けて真人間を30年やること自体がすごいと感じますし、だからこそ同時に、ある種の怪物感もあると言いますか。「時代を築いて引っ張る方」なんだと思います。

1975年生まれ、東京都出身。ニッポン放送アナウンサー。4月から新番組『ミューコミVR』がスタート。『辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!』の水曜代打パーソナリティーへ(写真 中村嘉昭)

(ライター 山内涼子)

[日経エンタテインメント!2021年5月号の記事を再構成]

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