ペン先ぶれないゼブラ「ブレン」 シャーペン内蔵登場

日経クロストレンド

ゼブラの新商品「ブレン2+S」。軸は5色展開。税込み550円
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ノック式のボールペンは、その構造上、筆記時にペン先が微妙にブレてしまう。ゼブラが2018年に発売した「ブレン」は、そのブレをなくすことで筆記時のストレスを劇的に軽減。発売後1年で累計販売本数500万本を突破したヒット商品だ。さらに同社は、複数の芯を選んで出す多色ボールペンでのブレを解決した3色ボールペン「ブレン3C」(以下、3C)を20年3月に発売。これも好評を得た。

そして21年2月、黒と赤のボールペンにシャープペンシルも内蔵した多機能タイプの新商品「ブレン2+S」(以下、2+S)が登場した。

特徴的なのは、ブレンシリーズは単色タイプも3Cも2+Sも、ペンとしてのシルエットやデザインが、ほとんど同じということ。「単色タイプの開発当初から、多色ペンや多機能ペンを見越してデザインしている」と、ゼブラでブレンシリーズの開発を担当する研究開発本部の樺島夕紀子氏は話す。2+Sは3Cと同じ機構を踏襲しているが、そのままではシャープペンシルのペン先が先端の穴を通らなかったので、シャープペンユニットから作り直したという。

単色タイプ(左)、3C(中)、2+S(右)のデザインの違い。同じように見えて、きちんと違いが付いているのが面白い
ブレン2+Sに仕込まれている技術とアイデアを図解したもの

シャーボで培った技術も継承し、「常識」を覆す

ブレンシリーズは筆記のブレを防ぐため、重心をペン先に寄せた「低重心設計」が特徴だ。単色タイプでは軸の中に重りを入れて低重心を実現しているが、3Cや2+Sではそれぞれの芯の出し入れができなくなってしまうため難しい。

そこで先金(ペン先端の金具)を重くすることで低重心を実現しようとしたが、金具の薄さや重さの調整に苦労したという。「何度も試作を繰り返し、社内に十数人いる『筆記具のエキスパート』にも協力してもらい、最終的なバランスを決めた」(樺島氏)。ブレを防ぐために、芯を切り替えるための複雑なパーツも試作とテスト、微調整を繰り返したという。

ノックボタンの形状や内部の機構をテストするための試作品。貴重な透明軸のブレンでもある

一般的なシャープペンシルはノック式ボールペンと異なり、ペン先がブレることはない。漫画家や設計士が使うのもブレずに安定した線が引けるからだ。しかし、多機能のシャープペンシルは、ペン先と穴のサイズの差や芯を斜めにしてペン先へ送る必要があるなど、どうしてもペン先にブレが生じる構造になるのが当たり前だった。そうした「常識」を覆すブレン2+Sの登場は、実は文房具の歴史の中でも画期的な出来事と言える。

精密な設計や製作技術は、世界に先駆けた多機能ペンである「シャーボ」を世に出したゼブラならでは。単色タイプのブレンの機構を踏襲しながら細部を調整。「小さなシャープペンユニットを作ることができるシャーボ由来の技術も継承し、2+Sが実現した」(樺島氏)

2+Sの背面にあるシャープペンシルのノック部分も形状を一新。開発中はクリップでノックする方法なども検討したが「筆記時にクリップが手に当たるほか、デザイン性が損なわれるため採用には至らなかった」(樺島氏)。結果的に、ラバー調で指の掛かりがよく、押しやすい背面ノックになった。

このように2+Sは、精密な機構やアイデアが内部にギッシリと詰まった製品だが、「そういう部分は見せないというのもブレンのコンセプト。だから透明軸モデルは出さない」と樺島氏。一本の棒のように見えるこのシンプルさの中に、ゼブラの美学がある。

シャープペンシル、ボールペンの芯を出したときの先端の拡大写真。このようにしっかり支えてブレを防いでいる
クリップでノックをするとクリップ部分が下がるので、手に当たって書きにくいことを示したスケッチ。背面ノックだと、デザインも崩れず、筆記の邪魔にもならない

(ライター 納富廉邦、写真提供 ゼブラ)

[日経クロストレンド 2021年3月24日の記事を再構成]

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