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元乃木坂46の若月佑美 ヒット作に関われたのは貴重

若月佑美インタビュー(上)

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NIKKEI STYLE

日経エンタテインメント!

多くのアイドルグループ出身のタレントがいるなかで、特に方向転換に成功した1人に若月佑美がいる。「乃木坂46」時代から、舞台やドラマには出演していたが、18年11月のグループ卒業前後から女優活動を本格化。同年10月期に放送された、福田雄一脚本・演出の連ドラ『今日から俺は!!』では、ドラマオリジナルキャラクターのスケバン・川崎明美役を好演して、お茶の間にも存在が知られるようになった。

20年は、最終回視聴率で19.6%を記録した『私の家政夫ナギサさん』のほか、興行収入53億円超の『今日から俺は!!劇場版』、ドラマ好きが高く評価した『共演NG』と、ヒット作・話題作に立て続けに出演。女優として飛躍の年となった。

ソロで活動するにあたり、どんなことを考えて行動してきたのかを語ってもらったインタビューを2回に分けて紹介する。

まずは、20年の振り返りから。

「結果論になりますが、ヒット作に関わることができたのは貴重でした。家族や友人からだけでなく、『共演NG』の現場で、『ナギサさん』見てたよ、と声を掛けていただけたり。12月に舞台『おっかちゃん劇場』で田中麗奈さんとご一緒したんですが、稽古の期間にちょうど『共演NG』が放送中で、『私、大好きで毎回見てる! 出演者の佑美ちゃんと共演できてうれしい。先(の展開)は言わないでね』って(笑)。大先輩の田中さんからそんなふうに言っていただけるなんて、本当に励みになりました。

『ナギサさん』では、製薬会社のMR(※)の役でしたが、私自身が正直、この職業についてあまり知らなくて。クランクインの前にMRの方をお呼びして、講習会があったんですが、以前は高校生役とかが多かったので、こんなふうに事前準備をするのは初めての経験でした。しかも、(眞栄田)郷敦さん演じる遙人君という、後輩がいる役っていうのも初めて。職業もので、上司も後輩もいる設定なので、新たな引き出しが必要でしたし、やりがいがありました。

※MR…製薬会社の営業担当者。医師や薬剤師などの医療従事者に、自社の医療用医薬品の情報を提供する

MRの方には、仕事の内容はもちろんですが、なぜMRになろうと思ったのか気持ちの部分や、プライベートについてを重点的に聞きました。キャリアウーマンのイメージなので、カッチリしていそうと想像していましたが、飲み会もするし、恋愛もするし、家でぐうたらお菓子を食べる時間が幸せです、といったエピソードを聞いて、身近に感じて。そこだったら自分も役に落とせるなと(笑)。遙人君との恋愛パートでも生かせたかなと思います」

福田雄一監督と街で遭遇

「『共演NG』では、大根仁監督にコメディの難しさを教えていただきました。福田さんの『今日から俺は!!』とはまた違った種類の笑いで、シリアスななかにたまにボケがあったりするおかしさ。新型コロナの要素を取り入れていたり、芸能人同士のバチバチが描かれたりしたので、ちょっと胸が苦しくなる日もあったんですけど。でも中井貴一さん、鈴木京香さんのようなベテラン俳優さんの演技を目の前で見ることができて、台本を読んだ時点で面白かったのに、それが映像になるとよりすごいものになるんだと驚きました」

18年のドラマに続き、20年は『今日から俺は!!劇場版』の公開もあった。やはり、福田雄一監督との出会いは女優をやるうえで大きく、特別な作品だと語る。

「『今日俺』は、本当に私が楽しくいられる現場だったというか。明美は、橋本環奈ちゃん演じる京子を慕っていつも一緒にいる役だったので、環奈ちゃんとは親友と呼べるほど仲良くなりました。『明美ちゃん好きだったよ』と、最近も声をかけてくださる方がいて、そんな反響に感激しています。

福田さんとは、舞台『16人のプリンシパル trois』(14年)で初めてご一緒して。その後、都内の家電量販店で姿をお見かけしたんですよ。少し迷いながらも、思い切って声をかけたんですけど。そのとき、ケラリーノ・サンドロヴィッチさん脚本・演出の舞台『すべての犬は天国へ行く』(15年)に取り組んでいたときだったので、フライヤーをお渡しして、『あれからもお芝居続けてます』とお話しさせてもらいました。そのときはそれで終わっちゃったんですけど、『乃木坂46で舞台やってるって子がいたな』ということで、舞台『スマートモテリーマン講座』(17年)に呼んでもらえたんです。

安田顕さんが講師役で、戸塚純貴さんが主演の"どコメディ"。私は『真面目すぎる』と言われることが多くて、それって『つまらない』とか『面白みがない』と思われてるのかなと、ずっとコンプレックスだったんです。だけど福田さんに、『何を言ってるんだ、真面目にバカをやるのが1番面白くて、真面目じゃなきゃ絶対に面白いコメディは作れない。オマエの真面目さは必ず武器になるから』って言ってもらえて、すごく心が楽になったのを覚えてます。

役柄は、戸塚さん演じるオタクサラリーマンの卓君の頭の中で、OL役の私が綾波レイとかいろんなキャラクターになっちゃうという設定で。その1つにヤンキーがあって、タバコを片手に『てめぇコラ、卓!』って言うシーンがあったんですけど、それをドスのきいた声でやったら、福田さんがすごい笑ってくださって、『オマエ、スケバンいけんじゃん(笑)』って。これがきっかけで、『今日俺』にも呼んでいただけました。『舞台のときの、あのままでやって』という感じだったんで、明美については特に役作りもなく(笑)。

安田さんから学ぶことも多かったです。長くTEAM NACSをやっていて、テレビでも大活躍なのに、現場に1番に入って、誰よりも早くストレッチして、声を出していらっしゃる。これは絶対に見習わなきゃと思いました」

次回は、女優への熱意、在り方などについて聞く。

(ライター 内藤悦子)

[日経エンタテインメント! 2021年3月号の記事を再構成]

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