浅島 セレンディピティを得るためには、やっぱり自分で考えて、自分で手を動かさないとダメだと思っているんです。

玉尾 その通りですね。

浅島 ただどうしても、その機会が少なくなっている気がしてね。

何か自分がやろうとしても、ネットで検索すると、だいたいだれかがやっているんですね。そうするとヤル気が起こらなくなる。でも、そうじゃなくて、本当はやりながら、まったく別のことが見つかるはずなんですよ。プロセスの中でね。だいたい思った通りになんかいかない。それが科学で、楽しみはそこにあるんですよ。与えられた情報だけで、結論を出してしまう、今はそういう傾向がありますね。

玉尾 いろんなことをやって、うまくいかないことが出てくる。それじゃあ、こうしようと考えて、今度は発見が出てくるわけですね。AIにデータを聞くことはいいですが、もう(先行研究が)あるんだからいい、わかってますよみたいになってしまったら、完全にAIに征服されてしまいますね。

ヒストリーをもった「NI」

浅島 僕はAIとの対比で使うんだけど、NIという言葉が好きなんです。ナチュラルインテリジェンス。何が違うかというと、NIはヒストリー(歴史)を持っているんですよ。生物の中にある、生命が歩んできた道の記録。これが重要なんです。

ナチュラルインテリジェンス(NI)の大切さを説く浅島さん(21年3月27日、東京・大手町)

データだけみていると、それでわかったような気になってしまう。だけどちゃんとヒストリーに向き合えば、我々にわかっているのは一部だけで、実は全然わかってないことがわかるんだ。

地球上には生物が1000万種いるんだけども、ヒトはそのうちのたったの1種。研究に利用される(マウス、ショウジョウバエなど)モデル生物は300種。つまり99%以上の種のことはよくわかっていない。だからもっと自然を知らなければいけないし、多様な生物から学ぶことで、人のことを知ることができる。そして、それが最終的に(同じ種のヒストリーを宿した)人を信頼したり、愛したりすることにつながるんじゃないかな。

僕の好きなイモリは、切れた尻尾がまた生えてくるだけじゃなく、冬眠しながら自分のガンを治しちゃう。ホモ・サピエンス(現生人類)は誕生からたかだか20万年。イモリは3億年ですよ。高い適応能力で生き延びてきたイモリから学ぶことは多いですね。

玉尾 コンピューターは情報を0と1に変換して処理するけど、人間の脳はそんな単純な変換だけでやっているわけじゃないですからね。もうちょっと高度な変換の機構が入っているのがポイントじゃないですかね。

――国連の持続可能な開発目標(SDGs)が注目され、社会課題を意識する学生も増えています。大きなテーマの1つであるエネルギー問題についてはどう思われますか。

浅島 解はひとつじゃなくて、太陽光も水力も水素もあり、いろんな道があることを考えることが重要。それから発電だけじゃなく、送電、蓄電を含めてトータルで考えていくこと。今の送電システムは、かなりエネルギーをロスしている。

玉尾 送電は(電気抵抗ゼロの)超電導が究極の理想で、研究もされていますが、なかなか実現しない。科学技術が挑戦すべきところじゃないかな。

話が少しそれますが「脱炭素」という言葉が一人歩きしているのは困ったことだなと。「カーボンニュートラル(二酸化炭素の排出・吸収が均衡すること)」はいいんだけど、脱炭素なんてあり得ない。(イメージが悪くなる炭素の研究から)子どもたちが離れますよ。

浅島 だいたい生物そのものが炭素からできているんだから。脱炭素もそうだけど、僕が最近気になったのは「ソーシャルディスタンス(社会的な距離)」。コロナの感染拡大を防ぐのに必要なのは「フィジカルディスタンス(物理的な距離)」で、社会を分断しちゃダメなんですよ。言葉は使い方によって、ものごとを危うくするところがある。

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