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科学五輪はコロナに負けず 浅島誠さん×玉尾皓平さん

生物学・化学五輪 組織委トップ対談(上)

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NIKKEI STYLE

 地球温暖化、感染症のパンデミック(世界的な大流行)、エネルギー問題、再生医療、民間宇宙開発、そして人工知能(AI)……。人類の未来を左右する大きなテーマは、どれも科学の知見が欠かせないものばかりだ。そんな時代を生き、よりよい社会を築くにはどうしたらいいのか。科学の学びを生かし、それぞれの目標をめざす「サイエンスアスリート」から、そのヒントを学ぶ。

新型コロナウイルスのパンデミックは、高校生らによる国際科学オリンピック(数学、物理など7分野それぞれの大会の総称)にも影響した。2020年の生物学、21年の化学の大会は、いずれも日本がホスト国。それぞれの組織委員会を率いる浅島誠さん(76、東大名誉教授)と玉尾皓平さん(78、京大名誉教授)にリモート開催となった五輪の意義や現代におけるサイエンスの役割などを語り合ってもらった(進行役は安田亜紀代U22編集長)。

◇   ◇   ◇

浅島さんは細胞分化を促す誘導物質「アクチビン」の発見で再生医療などに大きく貢献。玉尾さんは炭素と炭素を触媒を使って効率よく結合させる世界初の「クロスカップリング反応」を開発した化学界の権威だ。それぞれ生物学、化学の五輪でホスト国となった日本の組織委員長を務めている。

忘れてはならない敬意

――コロナ禍は世の中に多くの変化をもたらしました。とくに着目している変化はありますか。

浅島誠さん(以下、敬称略) 研究の現場も教育の方法も大きく変えたと思いますね。大学ではオンライン講義が広がり、教材の作り方も変わった。慣れない当初はトラブルもありましたが、今はほとんど問題ない。日本が遅れていると言われていたデジタル化が一気に進みましたね。

玉尾皓平さん(同) 居ながらにして世界中の人とコミュニケーションをとれるようになったのは、非常に良い変化ですね。もうひとつメリットと思うのは、出張などが減った先生が大学の教授室にいられるようになった。学生も教えを受けやすいし、先生も研究の時間が増えたんじゃないかな。時間をどう使うかが問われますね。

デメリットは当然ですけど、直接会う機会が減ったこと。やっぱり研究者が集まって、じかにコミュニケーションをとることは、めちゃくちゃ大事だと思うんですよ。雑談しながら、意気投合し、チームをつくってプロジェクトを始め、新しい分野を切り開いていく。そういう可能性が失われてしまってはいけない。

浅島 時間の使い方で言えば、かえってホンモノをみる時間が少なくなったんじゃないかと気になりますね。時間は増えても、有効に使っているとは限らない。ホンモノに自分の手で触れ、じっくり眺めていると、目の前で起きる様々なことに自分で気づく。そうすると自分の中から新しい発想が出てくるんですよね。つくられた映像だとスッと頭を通り過ぎちゃう。

ずっとパソコンの前でキーボードをたたくような、汗をかかない研究もどうでしょうね。他人のデータをいかに混ぜ合わせて自分のものにするか、そういうことが研究の中心になっていってはいけないですよ。

玉尾 やっぱりハイブリッドで、(アナログとデジタルの)それぞれいいところをとりながら、やっていくのがいいんだろうなあ。

コロナをきっかけに再認識したことで、忘れてはいけないこともあると思うんです。みんな当たり前のように使っているパソコンやスマホといったデバイスがあったからこそ、人類がこのパンデミックに対応できていること。これがなかったら、どうなっていたか。こうしたデジタル機器には、吉野彰さんの発明でノーベル化学賞の授賞理由になったリチウムイオン電池をはじめ、日本人が貢献している技術がたくさん詰まっている。そういう開発者や研究者への敬意は、みんなで共有したいですね。

――20年夏の生物学五輪は長崎県での予定が変更され、初のリモート開催となりました。21年化学五輪もコロナ下が想定されています。生物学五輪の開催までの経緯は。

浅島 1年前、本当にできるのか、かなり迷いましたよね。国・地域によって事情も異なるし、各国に聞いたら、最初は「ノー」が多くて。ただ、我々としては今の通信事情ならリモートでやれると考えたんです。

この大会をめざしてきた生徒のために開催すべきことや、困難な状況で国際交流を継続することに意味があることを訴えました。世界に優れた同世代がいることを、経験を通じて生徒たちに理解してもらいたいということもありますしね。

不正をしない誓約書を提出してもらうことや、時差による不公平が出ないよう現地時間で試験することなどを記した仕様書も用意し、理解を求めました。我々は成功の条件として、参加国・地域が前回ハンガリー大会の半数である36を超えることと考えましたが、最終的に53にまで増えて、これなら行けるぞ、と。

異なる国の生徒がリモートで共同研究

――リモート開催で、どのように国際交流したのでしょうか。

リモートで試験しただけでは国際交流になりません。それで大会後、「感染症」「ゲノム編集」「生物多様性」「進化」のテーマ別に、出身地の異なる選手が4人1組のチームをつくり、リモートで議論した研究成果をポスターにまとめるプロジェクトを実施しました。各チームの世話をするファシリテーター役を募ったところ、世界で大学の教員になっている五輪経験者ら約50人が一斉に手をあげてくれました。

コロナと地球温暖化や人種の関係など、我々が考えていた以上のことを考察している発表もありました。五輪が若い人に新しいチャンスを与えていることを再認識しましたね。

玉尾 すごいなあ。各国との信頼関係が大きいですね。

化学五輪は3月にリモート開催を決めたばかりですが、生物学のような国際交流はやりたいですね。今のところ(仮想空間に)出場選手のアバター(分身)をつくってもらい、理化学研究所の大型放射光施設「SPring-8」(スプリング8、兵庫県佐用町)をバーチャル訪問してもらうことを計画していますが。

化学五輪は20年のトルコ大会がリモート開催でしたが、コロナ下でもきちんとこうした大会が開かれることを各国の生徒たちが実感する効果が大きいと思いますね。やめてしまうのではなく、やっぱりやるんだと。

――おふたりの子ども時代のことをお聞かせください。科学との接点になったのはどんなことでしょうか。

玉尾 僕は香川県の西の端で昆虫少年をしていました。

浅島 昆虫少年? 僕もですよ。新潟県の佐渡島でチョウチョやトンボ、甲虫の標本をつくっていましたから。

玉尾 僕はチョウチョばっかりでした。四国のチョウチョはほとんど採集したかな。国蝶(こくちょう)のオオムラサキを見つけられなかったことが一番悔しい思い出。あとイシガキチョウをとり逃がしたことも。

浅島 僕はルリタテハがとりたかったけど、なかなか難しくてね。飛び方が独特なんだよね。

玉尾 四国にはいましたよ。るりのような青色をしたタテハチョウ。きれいですよねえ。

浅島 僕はトキ(学名ニッポニア・ニッポン)の生息地が佐渡だけになってしまったとき、どうしても野生のトキを見たくて、おじさんと野宿したことがあったんです。松原の近くで明け方に見た姿は、本当に朱鷺色(ときいろ)でね。きれいでしたよ。当時すでに絶滅すると言われていましたが、どうしてもこの美しいトキを残したいと思ったんです。それをきっかけに生物種が個体を残し続けるためには、どのくらいの数が必要なのか考えるようになりました。研究に関心を持ち始めたという意味では、非常に大きな体験でした。

恩師は人生の宝

玉尾 僕に科学の魅力を教えてくれたのは、地元の三豊(みとよ)中学校の理科担当で、3年間担任もしてくれた岡武雄先生でした。植物採集をしていた先生で、元気はつらつ、全力で我々を導いてくれた。しかも、かっこいいんですよ。週末になると、岡先生とクラスみんなで自転車旅行にでかけ、自然に親しみました。先日、99歳になられましたけど、岡先生を囲む同窓会は今でも続いているんです。

浅島 玉尾先生の話を聞いて、僕も地元の金沢中学校(現・金井中学校)で理科を教えくれた本間イツ子先生を思い出しました。僕らが本間先生に「どうして」って聞くと、いつも「自分で考えてごらん」と言われて。もう90歳になられますが、やっぱり本間先生を囲むために、みんな集まるんですよ。僕は本間先生みたいな先生になりたくて、東京教育大(現・筑波大)に入ったんです。

玉尾 どの時点で、研究者の道に?

浅島 教育実習でしょうね。東京都内の高校で、僕は自分が面白いと思うことを一生懸命教えようとしたんだけど、あまり興味をもたれなくてね。ある生徒なんか「ちゃんと授業をやってください」って。

玉尾 大学受験のための授業をやってほしいという感じだったんですか。

浅島 そういう感じです。僕が求めているものと、生徒が求めているものが違ったんです。それはともかく、恩師というのはありがたいものですね。みんな影響を受けて(勉強を教えられただけでなく)育てられたんだ。そういう先生に会えたことは人生の宝ですね。

玉尾 本当に。六十数年たっても、色あせない宝ですね。

(つづく)

(構成 天野豊文 撮影 瀬口蔵弘)

◇  ◇  ◇

情報五輪は金2銀2、数学は銀5銅1

毎年7分野で開かれてきた「国際科学オリンピック」だが、2020年度はコロナ禍のため地学・地理・物理の実施が見送られ、化学・生物学・情報・数学がリモート開催となった。

【2020年化学・生物学・ヨーロッパ物理五輪の日本代表成績はこちらの記事から】

20年9月の情報五輪(ホスト国シンガポール)では日本代表4人のうち2人が金メダル、2人が銀メダルを獲得。金は松尾凜太朗(まつお・りんたろう)さん(麻布高2年)、米田優峻(よねだ・まさたか)さん(筑波大駒場高3年)、銀は星井智仁(ほしい・ともひと)さん(筑波大駒場高3年)、米田寛峻(よねだ・ひろたか)さん(開成高)が受賞した。

同月の数学五輪(同ロシア)には日本代表6人が参加。銀メダルは5人で、渡辺直希(わたなべ・なおき)さん(広島大付属高3年)、神尾悠陽(かみお・ゆうひ)さん(開成高2年)、石田温也(いしだ・あつや)さん(洛南高3年)、馬杉和貴(ますぎ・かずき)さん(洛南高3年)、宿田彩斗(しゅくた・あやと)さん(開成高3年)が受賞。平山楓馬(ひらやま・ふうま)さん(灘高3年)が銅を獲得した。

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