イチゴはフルーツではない? 専用スプーンは昔懐かし

そのまま食べてもスイーツにしてもおいしいイチゴ=PIXTA
そのまま食べてもスイーツにしてもおいしいイチゴ=PIXTA

イチゴは11月ごろから出回り始め、4~5月にシーズンを迎える。まさに今が旬。農林水産省によれば、イチゴの生食での消費量は日本が世界一と言われているそうだ。そんな「イチゴ大好き国民」の我々だが、実はイチゴについて意外と知らない。

たとえば、イチゴは「果物」ではないことをご存じだろうか。そして、我々が食べているあの赤い部分は「実」ではないのだ。今回は、そんなイチゴの意外な側面と、ある年代以上にはなつかしい「イチゴスプーン」が消えたナゾについて迫る。

イチゴはバラ科のオランダイチゴ属の多年草の植物である。北半球では紀元前から野生イチゴの採集が行われ、古代ローマでは栽培がすでに行われていたという。日本には江戸時代にオランダ人により持ち込まれ、明治時代には本格的な栽培が始まった。

今では日本のイチゴの品種は約300種、世界の品種の半分以上が日本のものといわれている。イチゴ栽培は日本の「お家芸」なのである。

さて、農林水産省の分類によると、イチゴは果物ではないという。では一体何なのか。

「イチゴは『野菜』です。果物は『果樹』、つまり木になったもののことを指します。イチゴはご存じの通り木に実っていませんので、『野菜』です。ただ、果物として食べられていることから『果実的野菜』とも呼ばれています」というのは一般社団法人FRUIT LOVERS LIFEの西田桂さん。

同法人は旬や品種などフルーツを熟知したエキスパート集団で、今年2月にはイチゴの産地と消費者をつなぎ、ブランドイチゴの食べ比べなどができるオンラインイベント「苺(いちご)サミット2021」を開催した。

野菜か果物かの分類は「木になるものか草になるものか」が基準ということらしい。この考え方でいくとメロンやスイカも野菜ということになる。逆に我々が野菜として認識しているアボカドは果物に分類される。もっともこの分類は農林水産省によるもので、総務省の家計調査や文部科学省が作る食品成分表では、イチゴやメロンは「果物」にカテゴライズされている。

このツブツブ1つ1つが実で、その中に種子が入っている=PIXTA

また、我々が食べておいしいと感じている、あの赤くて甘い部分は「実」ではないという。

「イチゴの周りについているツブツブが『実』です。私たちが食べている赤い部分はイチゴの花の中心になる『花托(かたく)』が大きくなったもの。表面のツブツブを守るクッションのような役割を果たす部分で、そのツブツブの一つひとつが果実です。本当の果実に対して花托部分は『偽果』と呼ばれることもあります」(西田さん)

花托は「花床」ともいい、花をつける枝の先端で,花びらやおしべ、めしべ、ガクが着生する部分である。ちなみにイチジクもイチゴ同様、花托が特に発達して大きくなったものだとか。