新年度がスタートし、一人暮らしを始めた人もいるだろう。実家なら、すべてがそろっているだろうが、新生活でイチからそろえ始めるのは楽しくも、大変な作業に違いない。だが、見方を変えれば、自分好みの選択が可能になる。その際こだわってほしいのが、調味料。コロナ禍で自炊や、買ってきたモノを家で食べる機会が増加傾向にある昨今、調味料次第で毎日の食生活の充実度は、がぜん変わってくるから侮れない。
こんな逸話をご存じだろうか。徳川家康が側室に「世の中で一番うまいものは何か」と聞いたところ、「塩」という答えが返ってきた。「では、世の中で一番まずいものは何か」と聞くと、それもまた「塩」だった。この逸話は塩次第で料理はおいしくも、まずくもなることを端的に示したものといっていい。
どんなによい食材で調理しても、塩の使い方次第で、途端にまずくなってしまう。料理において、塩はそれほど重要なものなのである。
日本では専売制度の影響で、ほぼナトリウムだけで構成された塩が長らく使われてきた。だから「塩はしょっぱいだけ」というイメージの方も多いはずだ。だが、塩にはナトリウム以外にも様々なミネラルが含まれている。しょっぱさ以外にも苦味や甘味、うま味や酸味など本来、複雑な味わいを持つものなのである。
専売制度が廃止され、今では日本各地で多種多様な塩が生産されている。その数は優に600種類を超え、海外からも特色ある塩が数多く輸入されている。どの塩を選ぶかは、あなた次第であるわけだ。
こだわりの調味料というと、とかく値段が高いイメージをもたれがち。だが、塩に限っていえば、1回の食事に使用する量はせいぜい1~2g程度。仮に100gで1000円する塩だとしても、1皿あたりに換算すると、20円程度である。その程度のコストで、料理の味がぐんとおいしくなるなら、なかなかのコストパフォーマンスといえるのではないだろうか。
では、どんな塩をそろえれば良いか。調理技術や頻度に応じたオススメを次にご紹介していこう。