白河 井上社長もワーケーションは体験済みですか?

井上 はい。私もLACを利用してワーケーションを楽しんでいます。廃校施設のLACで仕事をした時は、音楽室に朝から12時間こもってオンラインで会議をしました。とても集中できたのですが、時々窓の外から「これから釣りに行こう」と楽しそうな声が聞こえてきて。「悔しいなぁ。絶対に金曜の午前までに仕事を終わらせて釣りに行くぞ!」と気合が入りました。遊びたい一心で、いつも以上に集中して仕事ができましたよ(笑)。

白河 なるほど。ワーケーションだと、仕事を終えてすぐにリフレッシュができますよね。私も白浜町の海辺でワーケーションを体験した時に、「仕事からバケーションまで0分」を実感して驚きました。

井上 2月の会津磐梯(福島県磐梯町)では、氷の張った湖でワカサギの穴釣りを体験しました。湖まで移動する車中の90分、秘書とのブリーフィングをこなし、ちょうど終わった瞬間に目の前に真っ白な湖が広がっていて、爽快な気分になりました。仕事とリフレッシュのメリハリをつけられて、生産性は高まると実感できました。

白河 「ワーケーションをすると、遊んでばかりでサボるんじゃないか」と誤解されがちですが、私自身も体験してみて、「濃密に働いて、濃密に遊ぶ」というメリハリを利かせられる良さがあるのだと理解できました。

井上 客観的に生産性を測れる仕組みもセットで導入するのがおすすめです。我々はコロナ前から「日時採算制」という取り組みを始めていまして、1日に取り組んだ業務の記録から「1時間あたり、何をどれだけ達成したか」という成果を見える化しているんです。それが最終的にどんなアウトプットにつながったかも測定します。ハイパフォーマーとローパフォーマーの時間の使い方を分析することで、「チーム全体のパフォーマンスを上げるには何をするべきか」と工夫するための材料として活用しています。個人の評価を目的にしていない点がポイントです。

白河 客観的な生産性の把握はいいですね。ローパフォーマーをあぶり出すことが目的ではなく、あくまでチーム全体の問題としてとらえる姿勢なのですね。

井上 そうです。この日時採算制は3年ほど前から導入して社内に浸透しているので、ワーケーションで遊びほうけてパフォーマンスが下がったとしたら、それも見える化されてしまうわけです。

白河 予防措置があるから、安心して踏み切れたというわけですね。

井上 ワーケーションを促進するのは、経営上のメリットも感じているからです。魅力ある地域で働くことは、それだけで楽しく幸福感を高めてくれます。当然、クリエイティビティー(創造性)も発揮されるでしょうし、社員のウェルビーイング(主観的幸福)向上につながると期待しています。学術的にも「働いている人の幸福度が上がれば、生産性が25%上がる」という裏付けもあるのですが、体験してみると違いは明らかです。

以下、来週公開の後編ではワーケーションの効用、社員の利用状況、地域との交流などについて、引き続き井上社長に聞く。

白河桃子
昭和女子大学客員教授、相模女子大学大学院特任教授。東京生まれ、慶応義塾大学文学部卒業。商社、証券会社勤務などを経て2000年ごろから執筆生活に入る。内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員、内閣府男女局「男女共同参画会議専門調査会」専門委員などを務める。著書に「御社の働き方改革、ここが間違ってます!残業削減で伸びるすごい会社」(PHP新書)、「ハラスメントの境界線」(中公新書ラクレ)など。

(文:宮本恵理子、写真:吉村永)