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PM2.5は農業から? 年700万人の死を早める大気汚染

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NIKKEI STYLE

ナショナルジオグラフィック日本版

世界中で毎年700万人を早すぎる死に追いやると言われる大気汚染。軽微でも健康に害を及ぼす深刻な問題だ。ナショナル ジオグラフィック4月号では、世界の現状とその解決策を探っている。

◇    ◇    ◇

新型コロナウイルス感染症が世界で猛威を振るい始めたとき、米ハーバード大学の生物統計学教授、フランチェスカ・ドミニチ氏は「大気汚染が新型コロナウイルスによる死者数を押し上げるのではないか?」と考えた。大気汚染が深刻な場所に多い慢性疾患の患者は、新型コロナウイルス感染症が重症化しやすいのだ。さらに、大気汚染で抵抗力も落ちて気道に炎症が起きやすく、呼吸器症状をもたらすウイルスを撃退しにくくなる。

彼女を中心とする研究グループは、何千万人もの米国人の健康情報と、大気状態の日々の推移を2000年までさかのぼって比較できる膨大なデータプラットフォームを構築してきた。ドミニチ氏は、米国の高齢者およそ6000万人の匿名化された詳細情報を毎年入手している。ドミニチ氏とハーバード大学の疫学者ジョエル・シュウォーツ氏が率いる数十人の科学者が米国を1平方キロメートルのマス目に分割し、機械学習プログラムを駆使して、汚染物質の日々の濃度を17年間にわたって算出している。

ドミニチ氏の研究チームはこれら2種類のデータを武器に、全米で大気汚染の影響を探っているが、これまでの分析結果はかなり厳しいものだ。PM2.5(直径2.5マイクロメートル以下の微小粒子状物質)の危険性を示す証拠も数多く示された。ばい煙など、人間の毛髪の太さよりはるかに小さいこうした微小粒子は血流に混ざって体内を移動し、さらに細かい「超微小粒子」も含めて心臓や脳、胎盤で見つかっている。

新型コロナウイルスが広がり始めると、ドミニチ氏らは行動を起こした。米ジョンズ・ホプキンズ大学が発表する郡単位での死者数と、大気汚染のデータを突き合わせることにしたのだ。その結果、PM2.5の濃度が高い場所ほど、新型コロナウイルスによる死亡率も高いことが判明した。研究チームは20年12月、新型コロナウイルス感染症による世界全体の死者の15%は粒子状物質による汚染が関係していると発表した。特に汚染が深刻な東アジアでは、その割合は27%にもなる。

世界保健機関(WHO)によると、大気汚染は世界で年間約700万人を早すぎる死に追いやっているという(WHOの値より推定死者数が多い調査もある)。屋外の大気汚染が原因であることが多いが、屋内の調理用こんろの煙も無視できない原因だ。死者の大半は発展途上国の住民で、中国とインドだけで約半数を占めるものの、先進国でも大気汚染は重大な死因となっている。世界銀行の試算では、大気汚染がもたらす経済損失は年間5兆ドル(約530兆円)を超えるという。

 20年に実施された都市封鎖で、研究者たちは図らずも汚染源の一部が停止したときの変化を知ることとなった。イタリアのミラノにあるRFF-CMCC欧州経済環境研究所で、ともに経済学を専門とする夫妻、バレンティーナ・ボセッティ氏とマッシモ・タボーニ氏もそうだった。2人は新型コロナウイルスが同国北部を襲った春、3人の息子とともに自宅で過ごすことになった。

家に籠もる生活を送るうち、2人は大気汚染の変化に関するデータに目をとめた。

交通と産業活動がほぼ完全に停止したにもかかわらず、大気汚染はさほど改善していなかったのだ。「青空が見えてすべてが申し分ないと新聞は書いていましたが、実はそうではありませんでした」。道路や工場から離れた場所でも、PM2.5の濃度は16%、二酸化窒素は36%しか低下していなかった。人々が家に籠もっていた間も、汚染が止まらない産業分野があったのだ。農業である。

現代の工業型農業は大きな汚染源だ。欧州、米国東部、東アジアにおけるPM2.5の最大の発生源は、農業だと指摘する研究もある。大量の堆肥や化学肥料から発生するアンモニアが、大気中でほかの汚染物質と反応して微小粒子を生成する。科学者の間では以前から知られていた事実ではあるが、実際にこの現象が起きているのを目の当たりにすることで、政治が動くかもしれないとボセッティ氏は期待する。

深刻な問題を抱えるインド

大気汚染による死者が最も多いのは今も中国だが、近年はきれいな空を取り戻す動きが成果を上げつつある。反応が鈍いのはインドだ。WHOのデータベースによると、PM2.5濃度が世界で最も高い上位10都市のうち、9都市までをインドが独占している。人的損失も深刻で、早期死亡者は年間170万人近い。

インドの大気汚染の原因はめまいがしそうなほど多い。ごみは収集されず、路上でそのまま燃やされる。停電が頻繁なのでディーゼル発電機は必須だ。村の住民や都市のホームレスが調理や暖房で木材や家畜のふん、ときにプラスチックまで燃やす。農家は毎年秋になると、収穫が済んだ畑を焼く。

大気汚染は多くの生命を奪っているのに、あまりに関心が低い。個々の死亡例と関連づけることが難しく、犠牲者の顔も名前も見えてこないからではないかと、ハーバード大学のドミニチ氏は推測する。

(文 ベス・ガーディナー、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2021年4月号の記事を再構成]

[参考]ここでダイジェストで紹介た記事「寿命を縮める大気汚染」は、ナショナル ジオグラフィック日本版2021年4月号の特集の一つです。4月号では、絶滅の危機にあるフロリダパンサー、歌姫アレサ・フランクリンの生涯、アマゾンの新種昆虫、飯舘村の野生などをお届けします。Twitter/Instagram @natgeomagjp

ナショナル ジオグラフィック日本版 2021年4月号[雑誌]

出版 : 日経ナショナルジオグラフィック社
価格 : 1,210円 (税込み)

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