大豆ミート調理のコツ 水分飛ばし、プリプリの食感に
大豆を主原料とした肉の代替品「大豆ミート」を、スーパーなどで見かけることが増えた。興味はあるが扱い方が分からない、という人もいるだろう。おいしく食べるコツをプロに聞いた。
大手スーパーを訪れると、さまざまな大豆ミートが販売されている。湯戻しして使う乾燥タイプ、ナゲットや肉団子などの総菜類、カレーやボロネーゼといったレトルト食品――。高タンパクで低カロリー、食物繊維もとれる食材として話題を集める。
一方で、「大豆特有の臭いが苦手」「うまく調理できない」という声も聞く。筆者もひき肉タイプの乾燥大豆ミートを購入し、ミートソースを作ってみたところ、べちゃべちゃとした水っぽい食感になってしまった。
どうすれば家庭でもおいしく料理できるのだろうか。「下ごしらえのポイントを押さえれば、肉と変わらない仕上がりになる」。12年前からビーガン(完全菜食主義者)向けレストランを営む、「ティーズレストラン」(東京・目黒)取締役の下川万貴子さんはそう話す。
同店でもひき肉、スライス、ブロックなど、さまざまな大豆ミートをメニューに使っている。
大豆特有の臭い 振り洗いでとる
価格の手ごろな乾燥大豆ミートの扱い方を教わった。まず大豆特有の臭いについて。下川さんは「ゆすぐ」ことがポイントだという。大豆ミートをゆでたらザルにあげ、ボウルにためた水にひたしてゆすぐ。「3回ほど水を替えながら振り洗いする。これで臭いが気にならなくなる」
次に大事なのは「よく絞ること」と下川さん。店では両手でおにぎりを握るように、ゆすいだ大豆ミートをギュッと絞っていた。「水分が残っていると料理が水っぽくなる」。筆者のミートソースがべちゃっとしたのは、この工程が足りなかったためだろう。よく絞った大豆ミートはふっくらとしており、乾燥時の2~3倍の大きさになる。
戻した大豆ミートでミートソースを作ってもらった。大豆ミートをトマトソースに入れて40~50分煮込む。煮込み時間もポイントだという。長く煮込むと歯ごたえがなくなるのでは?と思ったが、むしろ「大豆ミートの水分をさらに蒸発させ、食感が際立つ」(下川さん)。
確かにできあがったミートソースは、プリプリとした食感で、大豆の臭いもまったく気にならない。ひき肉タイプの大豆ミートはそぼろやドライカレーなどに応用でき、初心者でも使いやすいという。
温度高めの油で カリッと唐揚げ
親指大のブロックタイプの大豆ミートを使った唐揚げの作り方も教えてもらった。基本の下ごしらえはひき肉タイプと同じ。ショウガやしょうゆで下味をつけ、片栗粉をまぶしながら数片の大豆ミートをまとめる。コツは揚げ油の温度だ。一般的な鶏の唐揚げは約170度の油で揚げるが「それでは温度が低くて大豆ミートがバラバラになってしまう。180度くらいの高めの温度がいい」と下川さん。
水分が蒸発し、カリッと色よく揚がったらできあがり。大豆ミートで作った唐揚げは、鶏肉ほど中まで火が通っているかを心配しなくても良いほか、油の汚れも少ないのがメリットだ。
食べてみると大豆の香ばしさが口の中に広がり、鶏肉とはまた違うおいしさだ。しょうゆ、酢、砂糖、タカの爪を混ぜたタレにくぐらせると中華料理の油淋鶏(ユーリンチー)風に。これは鶏肉で作ったものとほぼ変わらない味わいだった。
60年以上前から企業向けに大豆ミートを手がけてきた不二製油(大阪府泉佐野市)開発部の中谷伸さんも「油を使った調理法が大豆ミートには合う」と話す。味にコクを出すコツは「戻した大豆ミートを、調理する前に油通しすること」。油通しが面倒なら、多めの油で炒めるのも良いという。また「にんにくやショウガ、香辛料、赤ワインなどで、しっかりと下味をつけるとよりおいしく調理できる」。
ティーズレストランの下川さんによると「非常食としても大豆ミートは注目されている」そうだ。乾燥やレトルトタイプの大豆ミートは保存がきき、肉などが手に入りにくい時にたんぱく源になる。普段から身近な食材として、ぜひ慣れ親しんでおきたい。
(ライター 松野 玲子)
[NIKKEIプラス1 2021年3月27日付]
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