NIKKEIプラス1

縄文人気の理由 譽田亜紀子さんに聞く

「はじめての土偶」(2014年、世界文化社)を著し、縄文人気のきっかけを作った譽田亜紀子さんに話を聞いた。

――縄文はブームになっているのでしょうか?

「(古代史では)古墳や埴輪の人気が先行していました。それが18年の縄文展(東京国立博物館で開かれた特別展「縄文―1万年の美の鼓動」)で大きく盛り上がりました。ものすごいブームというより、縄文って面白いねという人が徐々に増え、草の根のように広がったという感じです」

――縄文人気にはどんな特徴がありますか?

「以前の展覧会は中高年の男性ばかりでしたが、女性が目立って増えています。縄文展でも感覚的には半分以上が女性でした。そもそも縄文は女性の方が親和性高いと思っています」

――土偶のほとんどは女性をかたどっていて、妊婦も多い。

「女性は土偶をかわいいと感じる人が多い。特に出産経験があるお母さんは、縄文人も同じように子供を産んだのねと、土偶に共感するみたいです。時代を飛び越えるというのかな。ビジュアル的なかわいさもあるけど、それ以上の何かを捉えている気がします」

「男性は縄文の女神や遮光器土偶のようなフォルムをかっこいいと感じます。『ガンダム感』もありますし。女性は縄文のビーナスのように母性が感じられる土偶にひかれます」

――縄文にはまった理由、土偶の魅力は何でしょうか?

「実は歴史には興味がないんです。別の仕事で奈良県に行ったとき偶然『観音寺本馬遺跡』の土偶を見て調べたら、面白いのがたくさん見つかりました」

「国宝の土偶の造形は別格で、手作り感満載なものが大半。粘土なのだから気に入らなければやり直せばいいのに、(作るために)焼いちゃう。見栄えはどうでもよくて、形を作ることが大事。びっくりするくらい下手なものがあるけれど、それは現代人から見たら下手に見えるだけで、彼らは最高だと思っているのかも。そういう朗らかさも好きです。土偶は誰かに褒められたいと思って作られた感じがしません。とても自由で無垢(むく)です」

――楽しみ方のアドバイスを。

「知識より実物を見ることです。難しく考えずに、どんな人が作ったかを自由に感じてくれたらいい。可能なら360度見てほしい。縄文人が作るときも全方向から見たはずだから。博物館の学芸員に声を掛けて教えてもらうのもお薦めです」

――コロナ禍で縄文人の暮らしはヒントになりますか。

「『今こそ縄文じゃないの?』とよく言われます。縄文時代は仲間がいたから、厳しい自然環境を生き抜けました。(ものの分布を見ると)あちらこちらの集落に足を運んでいたようです。他の集落と交流を深めて、いざというときに助けてもらえる関係を築いていたのではないでしょうか。現代人はコロナのせいで人と会えず、孤独で心がつぶれそうになっています。縄文時代のように人とつながり、ともにいることで、精神的な密を作ることが大事だと思います」

(三浦秀行)

[NIKKEIプラス1 2021年3月27日付]