500作を一気に追加、BTSも毎月投入 dTV配信戦略
連載 「動画配信」最前線
さまざまなサービスがしのぎを削る定額制動画配信(SVOD)の世界。それぞれのサービスはどのような戦略で激戦区に挑むのか。各サービスのキーパーソンに話を聞く。
第1回は、NTTドコモが提供し、エイベックス通信放送が運営するサービス、dTV。SVODの利用率が年々伸長するなか、月額550円(税込み)という低価格で、人気の作品を取りそろえ人気を集めるが、近年はさらなるユーザー獲得に打って出ている。競争が激しいSVODでdTVはどう戦うのか。エイベックス通信放送執行役員の佃田淳氏に話を聞いた。
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競合がひしめく中、dTVの強みは何か。「オールジャンルの人気作を取りそろえていること」「550円という低価格」「音楽コンテンツの豊富さ」の3つだと佃田氏は語る。「海外の配信サービスと単純にコンテンツだけで勝負するのは難しい。価格を抑えてワンコインで話題作が楽しめる、初めての動画配信サービスとして選ばれる存在を目指しています」
コンテンツに関しては年末年始に大攻勢をかけた。2020年12月に洋画と海外ドラマ300タイトル、21年1月には邦画200タイトルを配信。500タイトルを一気に追加したことになる。新型コロナウイルスの感染拡大による需要の高まりや、家で過ごす時間が増える年末年始にぶつけたことから反響は大きく、該当月の新規入会者は20年7月から12月の平均と比べて1.8倍となったという。
既存の人気作の配信に加えて、オリジナル作品の配信や独占配信も手がける。特徴的なのは劇場で公開される映画との連携だ。21年1月にはアニメ映画『銀魂 THE FINAL』と連動した『銀魂 THE SEMI-FINAL』の独占配信、映画『名も無き世界のエンドロール』のその後を描いた『Re:名も無き世界のエンドロール ~Half a year later~』を配信。『名も無き世界のエンドロール』では自社配給の強みを生かし、連携を強めた取り組みを行った。
「dTVでの製作にあわせて、作品の演出として、映画本編の最後にドラマ本編のワンカットを加えました。また、一部の公開劇場では本編終了後にdTVの広告を上映しています。本編後に広告を流すのは、これまででも類を見ないもの。こうした取り組みができたのは、自社配給による強固な連携と劇場の皆様のご協力とご理解があってこそです」
国内サービスで一番を目指す
強みの音楽コンテンツも強化する。もともとライブ映像1000タイトル、ミュージックビデオ1万タイトル以上という豊富さは他と比較しても群を抜いていたが、3月にはさらに強力な企画を投入した。BTSの映像作品の独占配信だ。
BTSのライブ映像や映画、ドキュメンタリーなど全19タイトルを毎月順次配信していくもので、発表時はYahoo!のトレンドで1位を獲得するなど話題を集めた。
佃田氏はdTVの今後について「まずはユーザーの選択肢にしっかり入ることが重要。国内サービスの中での一番を目指し、存在感を示したい」と意気込む。550円という低価格を維持しながらサービスを充実させるには会員数の増加が欠かせず、プロモーションにも力を入れる。
「2月からはdTVの月額利用料の支払いにdポイントを充当できるようになりました。NTTドコモ提供のサービスとして、今後もdポイントとの連携を強めていきたいです。また、新型コロナウイルスが落ち着いたら、ライブ会場や映画館を併設したショッピングモールなどにブース出展する、体験型プロモーションも考えています。お客様がエンタメモードになっている時が一番興味を持っていただけると思うので」
映画館との連動や体験型プロモーションなど、リアルからSVODへの誘導は、多数の配信がしのぎを削る今だけに興味深い挑戦だと言えるだろう。
(日経エンタテインメント! 平島綾子、かみゆ編集部 小沼理)
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