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明るい話題、今は素直に喜べる 浜・中・会津は面白い

震災10年・離れて今(9)福島県 菅野智香さん

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NIKKEI STYLE

 東日本大震災と東京電力福島第1原子力発電所の事故から10年。少年少女時代に被災し、現在は進学・就職などで地元を離れている若者たちは今、故郷にどんな思いを抱いているのか。「震災10年・離れて今」第9回は、福島県郡山市の出身で2015年創刊の「高校生が伝えるふくしま食べる通信(こうふく通信)」初代編集長だった菅野智香(かんの・ともか)さん(23)に聞いた。

中1のとき震災を体験し、県立安積高校(郡山市)時代に教育支援の一般社団法人あすびと福島(南相馬市)の活動に参加。原発事故後の「風評被害」にあえぐ福島の食に目を向け、今は植物を生かした環境づくりを仕事にしている。理想は「森みたいなオフィス」だ。

2011年春も桜はきれいだった

――桜満開の「故郷の1枚」。どんな思い出がある場所ですか。

「高校の通学路にある開成山公園の桜です。大学時代の19年4月に運転免許の更新で帰省した際に撮影しました。なかなか気に留めて見たこともなかったのですが、地元を離れ、たまたま戻ったときが満開で、空も本当にきれいでした。自分の日常にはこんなにすてきな時間や空間があったんだなあと。この桜の下を自転車通学していたんですから」

「震災直後の2011年春も、地元の桜はすごくきれいに咲いていました。(原発事故の影響で)体育の授業や部活動が屋外でできなくなったり、時間が制限されたりしていましたが、そういう人間の生活と関係なく、桜は自然に花開いて、5月になれば青い葉をしげらせる。植物の強さを感じた記憶があります」

――地震の瞬間はどちらにいましたか。

「市立明健中学校の音楽室です。翌日に吹奏楽部の卒業生の送別会が予定されていて、室内の飾り付けなどをしていました。震度4くらいの地震が続いていたこともあり、揺れの最初は『また地震だね』くらいの感じで、すぐ終わるかなと思っていたら、急に強くなって、これは普通じゃないと。みんな机の下に隠れたんですが、その最中に停電が起きたり、閉めていたガラス窓が震動で開いたり、地面からあがってくるようなゴーッていう音が聞こえたり。建物が崩れて私は死ぬのかなと、ふっと頭をよぎりました」

「いったん揺れがおさまって校庭に出たときに、雪がちらつき始めたんです。上着も荷物も校内に置いたままで、すごく寒くて、不安で泣いている生徒もいました。近所同士が集団になって帰宅しましたが、2年生の先輩がずっと私と手をつないでいてくれました。私は気が動転していて、おびえていたんだと思います」

――「こうふく通信」の発行には、どんな経緯がありましたか。

「須賀川市の農家の方が(原発事故の影響で)出荷制限を受けた直後に(自ら命を絶って)亡くなったというニュースが私にはすごく衝撃的で、ずっと心に残りました。その後、検査によって安全が証明されるようになってからも、福島県産の食品は敬遠されたままで、福島に住み、福島の野菜を食べている私たちまで否定されているような気持ちになったんです。高校時代にあすびと福島の活動に参加し、そのときの悔しい思いなどを友達と掘り下げて形になったのが『こうふく通信』でした」

――「こうふく通信」は、高校生が1次産業の現場について取材・執筆した季刊誌を、記事で取り上げた食品と一緒に読者に届けるスタイルです。直近は23号。初代編集長はどんな経験でしたか。

「ずっと郡山で育ち、親戚に農家がいるわけでもなかった私が、あちこちの生産者と直接つながり、現場をみたり、思いを聞かせてもらえたりしたことは、とても財産になりました。(原発事故の影響が大きかった)南相馬などの沿岸部も歩き、同じ福島なのに、こんなにも状況が違うんだと感じられたのも、経験として大きかったと思います。今も発行を続けてくれている後輩たちには感謝しかないです」

――20年春に卒業した明治大学文学部心理社会学科ではどんな研究を。

「最終的に情報社会学のゼミに入り、卒論は福島県産農産物の風評被害について書きました。風評というと根も葉もない噂というイメージがありますが、もともと原発事故による『実害』があって、その対応から教訓を得て検査を行い、実害が風評被害に変わっていったプロセスを追いました。その克服には、著名人によるPR活動だけでなく、生産者一人ひとりが消費者と直接つながって、ほかとは違う特徴を伝えていく取り組みが必要ではないか、そんな投げかけもしました」

外で得たことを福島に

――就職先はどのように選びましたか。

「実は1年間休学して、フィールドワークしていた(原発被災地の)浪江町でまちづくり会社のインターンをしようと考えていました。しかし、ぎりぎりになって覚悟が足りず、びびってしまったんですね。住んだことのない町に入り、スキルのない自分が1年で何ができるだろうかと。それで一般企業への就活にシフトし、滑り込みで内定をいただいたのが、オフィスや商業施設に植物を生かした環境づくりを提案するグリーンディスプレイ(東京・世田谷)でした」

「私は福島への強いこだわりに縛られていたようなところがありました。もっといろんな世界を知って、そこで得たことを将来の福島に生かせるようになるほうがいいのではないかと、ようやく考えられるようになってきたかなという感じです」

――福島を見る目は変わりましたか。

「(早く福島に貢献しなければという)肩の荷がふっと下りたからか、明るい前向きなニュースを素直に喜べるようになったなとは思います。群馬県の会社が浪江町の耕作放棄地でネギ栽培に取り組むといった話などを聞くと、名産品になってくれたらいいなあ、と。以前は原発汚染水など重い課題ばかりが気になっていたんです。今は大学時代のようには現地に入っていないので、課題が見えなくなっているのかもしれませんが」

――どんな環境づくりが理想ですか。

「何か催しがあるからではなく、自然と人が集まってくるような場をつくれたらいいなと。部屋の隅に観葉植物が置いてあるのではなく、(植物の)緑で壁やパーテーションができている、森みたいなオフィスってかっこいいなと思っています。いろんな植物がいろんなかたちで人間と共存できる環境が理想的ですし、そんな環境で働きたいなと思いますね」

――ふるさと自慢を。

「福島県には浜・中・会津(浜通り・中通り・会津地方と東から西へ大きく分けたエリア)があり、海山の景色、とれる食べ物、方言もそれぞれ違っていて、県内を移動するだけでも面白い。あちこちの桜もおすすめしたい。旅すればするほど、もっと知りたいと思うような不思議なところです」

「やっぱりいずれ福島に戻りたい気持ちは、すごくあります。なんでこんなに好きなんでしょうね」

(聞き手は天野豊文)

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