安部芳絵・工学院大学准教授「学童はおまけではない」
家庭と学校の間で子どもたちを守る放課後児童クラブ(学童)のニーズが高まっています。児童の発達や福祉を研究する工学院大の安部芳絵准教授に、学童の可能性や課題について聞きました。
――コロナ禍での学童の役割をどう見ていますか。
「これまで学童は保育園や学校に比べると注目を集めてこなかった。しかし昨年の一斉休校の間、公民館や図書館が閉まる中で学童だけが児童の居場所となった。学童なしに親は働けないという役割がようやく理解されたと思う。現場の頑張りに尽きる」
――これまで学童への関心が低かったのはなぜでしょうか。
「学校と家庭の間で児童が滞在する『おまけ』のように位置づけられ、国も重要視してこなかった。しかし学童の指導員の専門性は高い。学校より狭い場所で、学年をまたいだ児童に目を配らねばならず、障がいのある子をあずかる施設も多い」
「学童は確かに遊ぶ場所だが、教育より遊びを下に見る風潮も大きい。しかし遊びを通して培う交渉力などの非認知スキルは、子どもたちの将来にとって大切だ。学童を卒業しても指導員を頼りにする中高生もいる。親や教師と違い、評価や決めつけをせずに話を聞いてくれる指導員は貴重な存在だ」
――施設や人員の不足も問題になっています。
「学童は各自治体が条例で定めて運営しており、各施設にどれだけ指導員を配置するかは自治体の判断となる。その街がどれだけ子どもを大事に思っているかは、学童が一つの指標になり得る。ただし子どもの遊び場をつくるという課題は学童だけでは解決できず、児童館などの施設と合わせて考えていかなければならない」
「人手不足の問題に対しては国も指導員の待遇を改善した自治体へ補助を出すなどしているが、利用が限定的だ。保育園に比べて予算も小さい学童に自治体が事務コストを割けないでいる面もあるだろう」
――どうしたら状況を改善できるでしょうか。
「学童が重要な存在となっていることに住民が目を向ける時だろう。津波や豪雨で大人が生活再建をしなければならないとき、子どもを見ていてくれる学童の存在がありがたかったという声も聞く」
「運営に子どもの意見もとりいれたい。新型コロナの最中も、子どもたちに自ら感染予防策を考えさせた学童もある。どれだけ子どもの権利を重視して運営できているかを第三者が評価する仕組みも重要になる」
(高橋元気)