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1500mの深海もあった 火星の水はどこに消えた?

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ナショナルジオグラフィック日本版

現在の火星は極寒の砂漠だが、干上がった三角州や川岸などの地形を見れば、かつて水が地表を流れていたことは明らかだ。隣の地球には水が豊富にあり、生物の楽園となっているのに、火星の水はいったいどこへ行ってしまったのだろうか?

これまでの研究は、火星の大気が太陽放射によってはぎ取られ、宇宙空間に水がほとんど流出したと示唆してきた。しかし、2021年3月16日付で学術誌「Science」に掲載され、同日に月惑星科学会議でも発表された最新の研究は、大量にあった火星の水は宇宙空間へ逃げたとともに、地質内にも閉じ込められたのだろうと結論づけた。

今回、地質学者と大気科学者から成るチームは、火星の観測データを新しいモデルに組み入れ、火星の過去の姿を新たに描き出した。この新説によれば、もともと存在した水の量にもよるが、30~99%の水が地殻内の鉱物に取り込まれ、残りが宇宙空間に流れ出たと推定している。

30%と99%には大きな幅があり、かつ、水の消失には鉱物に取り込まれたことと宇宙空間に流れ出たことの両方が関係している可能性が高いため、「この数値の間のどこかに事実があるのだと思います」と米パデュー大学の惑星科学者ブライオニー・ホーガン氏は述べている。なお、氏は今回の研究には参加していない。

いずれにしろ、もし新しいモデルが正しければ、火星の「青春時代」の物語は書き直しを迫られる。過去のモデルで推定されていたよりはるかに多くの地表水が、初期の火星に存在し、そして、初期の火星はこれまで考えられていた以上に微生物に適していたかもしれない。

「この論文は、たとえ短期間でも、かつて火星が青い惑星だった可能性を認めています」と、米ノースカロライナ州立大学の惑星科学者ポール・バーン氏は述べている。氏も今回の研究には参加していない。

干上がった川床、三角州、湖盆、内海がいくつもあることから、火星の地表にかつて大量の水が存在していたことは明白だ。いまだ激しい議論が交わされているものの、火星の北半球には一つ、あるいはいくつかの海が存在していた可能性さえある。だが、地下にあるかもしれない塩湖や帯水層は別として、現在、火星には極冠の氷床か地表のすぐ下に埋まっている氷ぐらいしか水はない。

そのため、各年代の隕石(いんせき)の化学組成を調べたり、米航空宇宙局(NASA)の火星探査車キュリオシティで古代の岩石を調査したり、現在の大気を測定したりして、科学者たちは火星の地表に過去どれくらいの水が存在したかを推定してきた。その結果、もしすべての水が液体だったとしたら、火星の最初期に水深約45~245メートルの浅い海が惑星全体を覆っていたと考えられていた。

火星にはかつて相当な量の大気があり、その圧力によって地表に液体の水が存在できた。しかし、NASAの探査機MAVENを使った調査で、おそらく火星が形成されてわずか5億年後、ほとんどの大気が太陽風によってはぎ取られたと判明した。その理由は明らかになっていないが、惑星を保護する磁場が早期に失われたことが重要な役割を果たしたと思われる。

従来説の欠陥

いずれにせよ大気が消えたことで、地表水の約90%が蒸発した。水蒸気は紫外線によって分解され、その結果、火星は乾燥した荒れ地となった。

以上がこれまで語られてきた「物語」だ。しかし、この筋書きにはいくつかの欠陥がある。

従来の研究では、古代の火星に存在した水の運命は、現在の火星の大気に含まれる水素の種類に基づいて推定されていた。空気中の水蒸気が太陽から放射された紫外線を浴びると、水分子の酸素から水素がはぎ取られる。自由になった水素は軽い気体で、宇宙空間に容易に逃げ出してしまう。しかし、なかには重水素という重い種類の水素があり、こちらは大気中にとどまりやすい。

火星における水素と重水素の本来の比率は判明しているため、大気中に残された重水素の量から、かつて軽い水素がどれくらい存在したかを推測できる。そのため、重水素は過去に宇宙空間に流出した水の量を示す「見えない指紋」の役割を果たす。

一方で、これとは別の手掛かりが、火星の岩石を調査しているすべての探査機、探査車から得られている。この20年間に、粘土などの水分子を閉じ込めた(水和した)鉱物が大量に発見された。「地表に膨大な量の水和鉱物が存在する証拠が見つかっています」とホーガン氏は話す。

それらの極めて古い水和鉱物すべてが、太古の火星の土壌に大量の水が流れていたことを示している。その量は、大気中の重水素の「指紋」が示唆するよりもはるかに多い。

火星の水の研究における重要な一歩

今回の論文の筆頭著者で、米カリフォルニア工科大学の博士課程に所属するエバ・リンハン・シェラー氏は、これまでのモデルの問題点として、地殻が鉱物内に水を閉じ込められることを十分に検討していないと考えた。そこで、シェラー氏らは、45億年におよぶ火星の歴史を通じて、火星の水がどこに行ったかを推定する新しいモデルをつくることにした。

このモデルではいくつかの仮説を立てている。火星にはもともとどれくらい水が存在したのか。水を含む小惑星や氷を含む彗星(すいせい)によってどれくらいの水が運ばれてきたのか。時間とともにどれだけの水が宇宙空間に流出したのか。火山活動によってどれだけの水が地表にもたらされたのか。これらの変数の値によって異なるものの、火星にはかつて惑星全体を深さ約100~1500メートルで覆うほどの水が地表に存在した可能性が高いことも示された。

41億年前から37億年前にかけて、地表水の量は大幅に減少した。地殻の鉱物に取り込まれたものもあれば、宇宙空間に流出したものもある。シェラー氏によれば、これまでに発見された水和鉱物は30億年以上前のものばかりだという。

米メリーランド州グリーンベルトにあるNASAゴダード宇宙飛行センターの惑星科学者ジェロニモ・ビラヌエバ氏は、この研究は重要な一歩であり、「火星の水の歴史に関する多くの調査に間違いなく役立てられるだろう」と評価する。なお、同氏は今回の研究には参加していない。

まず、重水素の測定によって導き出された水の量と、火星の地表にいくつも残された水の痕跡との矛盾を解決するのに役立つ。米ライス大学の惑星科学者カーステン・シーバック氏は、これまでは、どうすればこれほど少ない水から多くの川や湖ができたのか不明だったが、新しいモデルはこうした謎に対する答えを提示していると述べる。同氏も今回の研究には参加していない。

ほかの惑星や衛星でも?

ただし、今回の研究は現在の火星で利用可能と考えられている水の量を覆すものではなく、現時点で水がそれほど多くないことに変わりはない。

「この研究が述べているのは、火星の初期により多くの水が利用できたということです。火星が最も居住に適していたのはそのころでした」とシーバック氏は話す。微生物が存在していたとしたら、あらゆる水域に分布していた可能性はあるが、30億年前、大部分の水が消えた時点で生き延びるのに苦労したはずだ。

大量の水が地殻内に消えてしまうという発想は、ほかの岩石の世界にも関係することだとバーンズ氏は指摘する。

地球でも水は鉱物と結合している。ただし、地球ではプレートテクトニクスによって鉱物が循環し、火山の噴火によって絶えず水が解き放たれているとシーバック氏は説明する。一方、火星の地殻は停滞しているため、結果として、火星が極寒の砂漠になったのかもしれない。金星も同じようなプロセスを経て世界が変わったのだろうか? 遠く離れた太陽系外惑星の地殻にも水が閉じ込められているのだろうか?

米バージニア工科大学の惑星科学者スコット・キング氏は今回の研究には参加していないが、このモデルは、火星をはじめとする岩石の惑星が時代とともにどう変化するかについて、より豊かな理解に向けての道を開いたと述べている。

「これから問うべき新たな質問、考えるべき新たな疑問がいくつも生まれました」

(文 ROBIN GEORGE ANDREWS、訳 米井香織、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年3月19日付]

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