足の爪トラブル早めのケアで予防 体支える親指に多く
足の爪が痛くて靴が履きにくい、歩きにくいと悩んでいる人は意外に多い。トラブルの代表は、体重を支える親指に起こることが多い「巻き爪」と「陥入爪(かんにゅうそう)」だ。仕組みと正しい対処法を知り、早めにケアしたい。
爪は小さな部位だが、実は指先の力を補強するという重要な役割を担っている。東京医科歯科大学皮膚科の高山かおる臨床准教授によると「爪があるから足の指は体重を支え、地面からの衝撃を受け止めることができる」。それだけに足の爪はトラブルに見舞われやすい。なかでも最も負荷がかかる親指の爪に起こることが多いのが特徴だ。
巻き爪とは爪が変形し内側に巻き込んだ状態のこと。アルファベットのCのようにくるっと丸まったり、ホチキスの針のように直角に折れ曲がったりなど形状は様々。普段は痛みがなくても、運動や長時間の歩行で爪が圧迫されると痛みを覚えることがある。
なぜ爪は巻いてしまうのか。「そもそも爪は巻き気味に生える性質がある。通常は歩くときに加わる地面からの圧力が対抗力となり、爪が巻こうとする力を抑えている。しかし両者のバランスが崩れると巻き爪になりやい」。こう解説するのは、埼玉医科大学形成外科の簗(やな)由一郎医師。治療のかたわら、ウェブサイト「専門医と学ぶ巻き爪・陥入爪治療の相談室」を立ち上げ、啓発活動を行っている。
バランスを崩す原因は「先の細いハイヒールなど爪を圧迫する靴を履いていることや、指でしっかりと地面を踏みしめる歩き方をしていないなどが挙げられる」(簗医師)。爪先に余裕があり甲やかかと部分で足を固定できる靴を選び、正しい歩き方を心がけるのが予防・改善策になる。
陥入爪は、爪が周囲の皮膚に食い込んで痛みや炎症を伴う状態だ。炎症がひどくなると細菌感染を併発して皮膚が化膿(かのう)し、激痛で歩けなくなることもある。巻き爪が進行して発症することが多いが、巻いていない爪にも起こる。
陥入爪の一番の原因は、爪を短く切りすぎる深爪だ。高山臨床准教授は「深爪をしていると、地面からの圧で指の先端の皮膚が盛り上がってくる。そこへ伸びてきた爪がぶつかって傷をつくり、陥入爪になる」と話す。盛り上がった皮膚は、爪がまっすぐ伸びるのを妨げ、巻き爪になってしまうことにもなる。
痛みから逃れようと、伸びてきた爪を切ってしまう人が多い。だが深爪を繰り返すのは悪循環だ。高山臨床准教授は正しい足の爪の切り方として、両角を残し中央を水平にカットする方法を指導している。「長さは指の先端と同じかやや長め。両角はヤスリで少し丸く整えてほしい」。両角を斜めに切るのは巻きやすくなるので避けよう。
爪切りは刃先が直線の形状をしたものを選ぶとよい。カーブしていると、爪が丸く切れて深爪になりやすい。「正しく爪を切るだけで、大部分の巻き爪・陥入爪は防げる」(高山臨床准教授)
発症した場合、軽度ならまずは自分で対処する。米粒大に丸めたコットンを爪と皮膚の間にはさむ方法や、テーピングのけん引力で爪と皮膚の間を広げる方法が有効だ。
簗医師は形状記憶合金でできたクリップタイプの巻き爪矯正器具「ネイル・エイド」を開発し市販している。自分で簡単に取り外しでき、繰り返し使える点が好評という。
医療機関で受けられる治療には、巻き爪に弾性ワイヤを通して平らに近づけていく弾性ワイヤ法、陥入爪となった爪の端を切除して爪幅を狭くする手術療法などがある。爪のトラブルに詳しい医師がいる皮膚科や形成外科を受診しよう。
痛みを感じたら放置せず、早めのケアを始めたい。
(ライター 松田亜希子)
[NIKKEI プラス1 2021年3月20日付]
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