串ものは、酒のつまみの定番。古くは焼き鳥、続いて焼きトン、最近は串揚げが全盛だが、ジワジワ来ているのが、「うな串」だ。さばいた身を丸ごと焼くのではなく、焼き上がりを小さく切って、串に刺す。ウナギ料理でも丼や重、ひつまぶしは、つまみにしにくいが、うな串は焼き鳥感覚で注文できる。
うれしいのは、うな串をウリにする店は、メインのタレ焼きや白焼きだけでなく、普通はメニューに乗らないような希少部位をそろえていることが多いことだ。頭を指す「かぶと」くらいは知っているが、「くりから」「ヒレ」「きも」とか言われると、未知の世界。焼鳥店で、希少部位の「ふりそで」や「ソリレス」などの希少部位を試してみたくなる気持ちとよく似ている。

ウナギといえば、夏のイメージ。だが、別に春に食べてもいけないわけではない。土用は実は、四季を通じてあり、2021年の「土用の丑(うし)の日」は残りが4月23日、7月28日、10月20日、11月1日の4回だ。春の土用に向けて、うな串でエナジーチャージに行こう。
今回、紹介するのが、東京・代々木にある「うな串 焼鳥 う福(以下、う福)」代々木店。JR代々木駅を予備校が立ち並ぶ西口ではなく、NTTドコモ側の東口に出て、2分ほどのところだ。「ほぼ新宿のれん街」という横丁のような小さな商業集積の一角にある。
外観は格好いい。一戸建てで老舗感満載。店頭の看板が効いている。最初、休憩時間なしの通し営業をしている土曜の午後3時くらいにフラリと行ったが、予約でいっぱいといわれた。最近、このパターンが多い。実はこの店、都内や大阪など、屋号違いを含めて10店ほどあり、ほかの店もそこそこ入っているとは聞いていたのだが、アイドルタイム(ランチタイムとディナータイムの間の客の少ない時間帯)だったら大丈夫と油断してしまった。土日は予約したほうが良い。

平日、営業開始してすぐの午後5時に入って、人気の理由がよく分かった。
店内の雰囲気が、ウナギ店ではない。酒場なのだ。普通のウナギ店にあるハードルの高さを感じない。メニューブックを見ても、ほとんどの料理が500円以下。予算を気にせず、注文できる。