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ご当地缶詰がずらりカンダフル コロナ下で売上高3倍

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日経クロストレンド

えっ、こんな缶詰があるの? ときっと思うに違いない。

牛タンのデミグラスソース煮込み、焼きサバのアヒージョ、イワシのカレー、タイのそうめん、たくあん、きゅうり漬け──。

東京・秋葉原の高架下にある「日本百貨店しょくひんかん」には、ご飯や晩酌のお供になるご当地缶詰が、ぎっしりと並んでいる。その数、約350種類。1都3県に直営8店舗を構える日本百貨店(東京・港)が2020年9月、「日本一の缶詰売り場」として開設した、その名も「カンダフル」だ。初月から月商100万円を上回った。同店における缶詰の売上高はこれまで月30万円程度で、一気に3倍以上伸びた計算だ。

販促に大きく力を割いたわけではない。もともと扱っていた缶詰を1カ所に集めて専用コーナー化し、「カンダフル」というキャッチーな名前をつけた。それだけで来店客の目に留まり、飛ぶように売れ始めたのだ。

仕掛け人でありながら、「すぐに結果が出て、本当にびっくりした」と振り返るのは、日本百貨店取締役ファウンダーの鈴木正晴氏。カンダフルとは、缶詰とワンダフルを掛け合わせた造語だ。缶詰に着目したのは、劇的な進化を感じ取ったからである。日本全国の食材を集める中で、鈴木氏は確信した。日本の缶詰はもはや保存食の域を超えている。味も本格的で、バリエーションも年々、豊かになっている。

「例えば、おすしの缶詰まであるんですよ。奇抜だなあと思ったが、食べてみると本当においしくて。調べたら、大阪のおすし屋さんが作っていた。缶詰は非常食にもなるし、缶だからリサイクルも簡単。環境に優しく、SDGs(持続可能な開発目標)の流れにも乗っている。日持ちがするので、商売的にもロス管理をあまり気にしなくて済む」(鈴木氏)

来る日も来る日も缶詰を開けては食し、自分なりのアレンジレシピを試すうちに、鈴木氏自身が缶詰にどんどんのめり込んでいった。売り場を作るなら、中途半端では意味がない。「300種類、400種類の缶詰を集めて、ここに行けば何でもある。缶詰コンシェルジュがいて『こんなときは、この缶詰がいいよ』と薦めてくれる。そこまでやらないと消費者には伝わらないと思った」(鈴木氏)。かくして世にも珍しい、尖った缶詰売り場は誕生した。

一方、不要不急の外出自粛が求められるコロナ禍では、いくら売れ行きがよくても、かつてのような集客は望めない。そこで間髪を入れず、缶詰の移動販売に乗り出した。

「お客さんが来ないなら、こちらから売りに行けばいい」(鈴木氏)と考え、軽トラックの荷台を改修し、120種類の缶詰を積み込める「カンダフルカー」に仕立てた。三井不動産の協力を得て、東京の豊洲、晴海、板橋、千葉市にある同社グループ管理マンションを回ったところ、やはり多い日で1日約15万円を売り上げる盛況ぶりだった。

「『缶詰を買うならカンダフル』というぐらいブランドが認知されたら、EC(電子商取引)サイトもぐっと伸びる」と鈴木氏は読む。缶詰という古くて新しい食材が、実店舗とオンラインをつなぐ懸け橋に化けようとしている。

和歌山から「リモート販売」

缶詰だけではない。日本百貨店は新型コロナウイルスの感染拡大を機に、新しい売り方に挑んできた。中でも、確かな手応えをつかんだのが「リモート実演販売」だ。生産者と店舗をインターネットで結び、モニター越しに商品を提案するというアイデアである。

「ただいま和歌山県からリモート中」「はじめまして!生産者の有本です」

声の主は、和歌山県みなべ町で有本農園を営む有本陽平氏。梅農家でありながら梅酒づくりにも取り組んでおり、手持ちのiPadを使って東京・秋葉原の「しょくひんかん」の客に向けて積極的に声を掛けた。

日本百貨店は全国から生産者を招き、店頭で年間400回以上もの実演販売やワークショップを企画してきた。しかし、コロナ禍ではそれもままならない。であれば、ライブ配信をやってみたらどうか。いざ試してみると、リモートでも意外と話は弾んだ。

「お客さんにも喜んでもらえるし、彼が話すと、3000円も4000円もする720ミリリットルの梅酒が7本も8本も売れる。うちの店に来る人は、作り手さんとの触れ合いを求めている。オンラインとはいえ生産者と話ができて、すごく楽しいんだと思う」(鈴木氏)

東京・日本橋の「日本百貨店 にほんばし總本店」では、福井県鯖江市の眼鏡職人によるリモート販売を開催した。「新型コロナウイルスワクチンができたと言っても、しばらくは以前のように自由に移動はできない。であれば、この先もリモート販売会は続けていきたい」と鈴木氏は前を向く。

「作り手の顔が見える」オリジナルPBに挑戦

20年4月に1回目の緊急事態宣言が出されてすぐ、日本百貨店は新商品の開発に着手した。卵黄をぜいたくに使う五三焼き製法で焼き上げた「五三焼カステラ」(1本税込み2592円)や、雪室で60日以上寝かせた雪下にんじんを使ったジュース「飲むにんじん」(1本同378円)、新潟県燕市の新光金属が手掛けた純銅製の「鎚目(つちめ)タンブラー」(ペアで同1万1000円~)──。

20年12月1日、日本百貨店オリジナルのプライベートブランド(PB)として販売を始めた。全国約1000社と取引してきた経験を生かし、自らも作り手側に回ったのだ。実は、ここに至るまでには葛藤があった。「もう何年も前からPBをやろうかという話はあったが、ずっと流れてきた」と鈴木氏は明かす。

日本百貨店はその名の通り、日本全国の優れ物を掘り起こすことに力を入れてきた。「作り手さんの発表の場としてお店を運営してきたのに、僕らの名前でPBを出すのは、絶対に嫌だった」(鈴木氏)。

背中を押したのは、コロナ禍である。「今まで通り、いいものを地域から探して売るだけでいいのかという危機感があった。僕らがこれから小売りとして生きていくには、僕ららしさを出していかないといけない。そう立ち止まって考えたとき、『PBをやるのであれば』という話し合いが初めてできた。とはいえ、単純に売れている商品のシールを付け替えるPBは出したくない」(鈴木氏)。

日本百貨店にしか作り得ないPBとは何か。社員全員で考えて出した答えが、「作り手の顔が見えるギフト」というコンセプトだった。パッケージ1つをとっても、メーカーや産地の名前、商品の特徴を明記するなど、生産者の思いが透けて見えるよう工夫を施した。

これまでの蓄積があるからこそ、複数の産地を組み合わせて売り出すこともできる。例えば、有田みかんのドライフルーツにチョコレートをかけたスイーツ「早和果樹園のみかんジェット」(2枚同518円)は、和歌山のみかん農家と、長崎のチョコレート工場のコラボレーションで生まれた。

「本来なら出会うことがない作り手同士が、日本百貨店という場所を通じてつながる。『一緒にやろうぜ』『ああ、そうだね』という流れで開発できるのが僕らの強みであり、うちらしいものづくりの形だと思う」(鈴木氏)。PBの売上高は既に日本百貨店全体の10%に達し、今後はさらに品数を増やして全体の30%にまで高めたいという。

コロナという制約が生んだ創意工夫

10年12月、東京・御徒町に1号店を送り出して10年。節目の年は未知なる感染症によって、暗転した。「しんどかった。客足が鈍り、日々どうしたものかと思っていた」(鈴木氏)。商業施設の八王子オーパ(東京都八王子市)、たまプラーザ テラス(横浜市)に構えていた直営店は、閉じるという決断を下した。

その一方で、「落ち込んでいてもしょうがない」とある意味で開き直れたことが、創意工夫につながった。カンダフルも、リモート実演販売も、PBも「やってみよう」と始めた結果、次なる成長の柱として期待が持てるスタートを切った。

社長として日本百貨店を率いてきた鈴木氏は20年3月に会長、そして21年3月には取締役の1人になった。「コロナ禍の厳しい状況だからこそ、日本百貨店という枠を超え、より広い視野で人や情報をつなげる役割を全うしたい。PBもそうだが、これからはもう一段深く地域に入り込んでシーズ(種)を見つけ、一緒に大きく育てていきたい」(鈴木氏)。

創業してしばらくは、鈴木氏が一手に商品の買い付けを担っていたが、今は違う。社員一人ひとりが「この商品を扱いたい」「こんなPBを出したらどうか」と提案するようになった。「今まさに地域食材を使って、旅行に行った気分になれる缶詰を作ろうかという話をしている」(鈴木氏)という。次の10年へ種をまき、新しいアイデアの芽を育てていくフェーズに入った。

(日経クロストレンド 酒井大輔)

[日経クロストレンド 2021年03月18日の記事を再構成]

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